世界最北の国、「スヴァールバル」。
世界最北の国ゆえ、とても農業国と言えた場所ではないのに、地球の農業を支えることになるであろう「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」(Svalbard Global Seed Vault)という存在を知りました。それは種子の保存庫、いわば「種の銀行」です。です。その素晴らしい活動と存在に感銘を受け、知ったことを記録しておき、スヴァールバルの旅の思い出もあわせておこうと思います。
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アジアからアフリカにかけての地域を対象とした農業研究を行う機関国際乾燥地農業研究センター(ICARDA、≫こちら)は、2012年、シリア内戦を受け、シリアからレバノンに移動することになった。しかし種子の全移行はできず、世界最北の国スヴァールバルの「種の銀行」に預けておいた種を2015年に引き出したというニュースを見ました。それは「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」の初の引き出しだったそうです。
◆Wikipedia「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」(≫こちら)
ここは北緯80°、北極圏の中にある氷河。土壌も凍りつくため氷河の流れが遅いのが特徴なのだと、現地のガイドに教わりました。スヴァールバルは国土の60%が氷に覆われているので、土壌を覆う氷の姿を見ることも、スヴァールバルの旅にふさわしいことだと思いました。
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私のスヴァールバルの旅。
世界最北の国への旅。
飛行機からは、荒々しい大地が見えてきた。
時間は深夜1時すぎで、スヴァールバルで太陽が真北にある頃の時刻です。真北=太陽が最も低い・・・なのに空はぜんぜん赤みがからず、快晴の青空そのものが広がっています。「太陽だー」と、私たちは重いバックパックの重さを感じず、キャンプサイトへと走りました。そこから見る真夜中の太陽は白く白く、まさに昼間と同じ照度で輝いていました。
それは驚くべき「真夜中の太陽」だった。
深夜1時という時間に照らすと、本当に、身震いするほどすごいこと。日本でこんな体験などしたことがなかったから。
首都ロングイヤービエンにはホテルもありますが、泊まるべきところは、この季節のこの国では絶対絶対キャンプサイトです。
なぜならば、ホテルに泊まると夜が出来てしまうから。
沈まぬ太陽、赤くすらならない空を見続けるには、ずっとずっと陽の下にいたらいい。
レインディア。すごい形の角(つの)を持った動物が走っていく。
世界最北の国の最北の街に住む人々。
7月、この国では太陽が沈まないことは知っていましたが、まさか夕陽の赤い空にもならないなんて、夢にも思っていなかった。深夜1時すぎに、青空の中で太陽が輝くなんて、想像もしていなかった・・・。興奮が覚めるわけがありません。確かに気温は寒くても、シュラフをくるんで、真夜中の太陽を見続ける。
だって私たちは、真夜中の太陽を見ることを楽しみに、スヴァールバルに来たんですもの!
10分置きに撮影した太陽を合成した写真です。
昼も夜も昼間。サンセット(日没)もサンライズ(日の出)も同じ方向に見える。
世界最北の国の真夏は、そういう世界でした。
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この国では、氷河トレッキングをして、凍てつく大地や永久凍土の観光をしました。まさかここに今、地中に世界中の種を保管する機関があるだなんて、驚きです。
今、「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」では、多種多様な植物種子が保存されています。永久凍土の中の施設で、種子のみならずジャガイモの種イモも保管されているそうです。それは将来の地球の食糧危機を救う、大事な役割を担っていることは、きっと間違いないように思います。
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スヴァールバル、そこは世界最北の国。
地球のどの場所でさえ代替しようのないほど、素晴らしく素晴らしく、本当に素晴らしいところだった。
私は、この最北の国と、素晴らしいキャンプサイトと、白く輝く真夜中の太陽を、決して忘れない。