この写真は、スリランカの台所です。ホームステイ型のゲストハウスに滞在し、母と娘が、私たちの夕食を作ってくれています。スリランカの料理は香辛料をふんだんに使うので、スリランカのおかずは日本語ではカレーと呼ばれるものになります。
母親が右手に持っているのは、塩水が入っているビンです。岩塩の粒を水に浸けてあり、塩は沈殿しているので、液相は飽和食塩水となっています。岩塩由来のナトリウム以外のミネラルも含まれており、いい味がします。
この塩水は、水を切らさず、塩を切らさず、きちんと継ぎ足ししていくのだと教わりました。
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このヒントは、日本での料理を美味しく変えてくれました。
調理中の鍋に固体の塩をパラパラと加えると味がとがったまま調理が終わります。あるいはなじむのに時間がかかります。でもこういった塩水を使えば、すでに塩すなわち塩化ナトリウムは完全に塩化物イオンとナトリウムイオンに解離して水分を周囲にまとっている、水和という現象が完了しています。結晶状態の塩は、塩化物イオンとナトリウムイオンに解離するだけでも時間を要するのですから、この「飽和食塩水を切らさずキッチンに置いておく」という発想は、調理の塩使いを向上させてくれるのだと、理化学的な根拠を以って納得がいきます。
スリランカを渡航し終え、今日本に住む私は、キッチンには2つの塩を置いています。1つは結晶の塩と、2つめはフタつき&注ぎ口のついたガラス容器に入った塩の水溶液です。
ジブチのお土産でいただいた塩湖の塩を、少しずつ混ぜています(*^ ^*) にがりを1滴混ぜることもあります。
このガラス容器は中国茶の店で買ったモダンな茶器ですが、ほこりっぽくならないようにフタができ、フタをしたままでも注ぐことができ、手のひらサイズで邪魔にならないなど、利点が多くて非常に気に入っています。
さて、2種類の塩の使い分け。
表面だけに味をつけたいときや、長く煮込む予定があるものには結晶の塩を使えば良い。
すでに電解して水分子をまとっているこの塩水は、塩味が食材へ均一にまわるし、使いやすいし、何よりも美味しいのだから、なかなか他の物には替えられません。