ベルギー国民食「カルボナードフラマンド」のフラマン側の名称は「ストーフレース」。

2019/05/07

先日、ベルギー国民食として世界的に有名なカルボナードフラマンドを作りました。ちょっと奮発して買った美味しそうなお肉をごろごろっと切って、玉ねぎとにんにくを丁寧にあめ色にして、黒ビールをたっぷり注いでじっくり煮込む。出来上がりは苦くはないのにほろ苦さが隠し味になって美味。大人テーブルで優雅にランチやディナーを楽しむ気分が自宅でも出来上がります。

カルボナードフラマンド

この料理名はカルボナードフラマンドと言います。でもベルギー料理ならもう一つの料理名が存在するのではないでしょうか。

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以前ベルギー料理の美味しいホットサラダを作りました。「リエージュ風サラダ」の現地料理名は、フランス語でサラダリエジョワーズ、オランダ語でラークスサラダと呼ばれることを知ったので、今回もそれと同じ事象があるのではないかと思ったのです。フランス語名称の「カルボナードフラマンド」にもオランダ語名称があるはずじゃないか、と。

それが、今回の調査のきっかけです。いや、なにしろ、カルボナードフラマンドが美味しすぎたもので。それから、何か小さなことでもいいから、調べれて勉強すれば、より一層ベルギー料理に理解を深められるし、ベルギーのことをより知る良い機会にもなると思ったんです。

◆フラマンドとは?
フランス語でflamand、英語でflemish、日本語でフラマン語、すなわち「ベルギーのオランダ語」です。人や地域を指す場合は、フラマン語を母語とする人々や、フラマン話者が多い地域、つまりベルギー北部「フランドル地方」を意味します。

◆ベルギーの連邦制国家
ベルギーが連邦制国家であるということが大事で、日本の四国と同サイズのとても小さな国なのにベルギーは国土が三分割されています。首都付近のごく狭い「ブリュッセル首都圏」、北部「フランドル地方」と、南部「ワロン地方」に分かれているのです。北部のフランドル地方はその北にあるオランダと同様にオランダ語系住民(ゲルマン語系)が住み、南部のワロン地方はその南にあるフランスと同様にフランス語系住民(ラテン系)が主に住みます。

◆ベルギーの公用語
上記背景により、オランダ語もフランス語もベルギーの公用語です(あとドイツ語も)。

◆Wikipedia「Carbonade flamande」(≫こちら
カルボナードフラマンドの名称はフランス語ページで探せました。やはりフランス語とみなしてよいでしょう。ここからオランダ語ページに飛ぶと、・・・びっくり、と言うか「やっぱりね」と正直思ってしまいました。それはまるきり異なる名称が出てきたからです。

◆Wikipedia「Stoofvlees」(≫こちら
カルボナードフラマンドのオランダ語名称は「Stoofvlees」というそうです。どう読むんだろう。ヨーロッパ北方の言語は特に綴りと発音の整合性が低く、私たち日本人がローマ字読みをしても現地の発音にはなかなか届きません。そこで動画を見て検証することにしました。

◆YouTube「Stoofvlees met frieten | De Keuken van Sofie | VTM Koken」(≫こちら

ストーフレース

0:02 ストーフレース

「Stoofvlees」は単語の途中にVの文字が挟まっていますが、オランダ語の発音ルールでは単語の頭のVはFの発音になり、単語の中ではVの発音のままのはず。もしこの単語が本当に「ストーフレース」と発音されるのであればVが単語の頭になる、すなわちこの単語が2単語の連結である可能性があります。それならばVの前で区切ってもそれぞれ意味をなすでしょうか?

◆Google翻訳

ストーフレース

出来ました。やっぱり、「Stoofvlees」は「Stoof」と「Vlees」の2単語縮約のようです。それぞれ「煮込み」と「肉」という意味です。だから「Vlees」はブレースではなく「フレース」という音でよいのです。「fv」の部分は単語が連結して一本化されたんじゃないかな。ともあれ「Stoofvlees」が「ストーフレース」と読まれた事実には、納得しました。

しかし、ストーフレースについて探しているうちに、別の名称と思われる料理名「stoverij」を見つけました。そのまま読むとストベリユ?となると思ってしまうがそうはならないのが北方発音。

◆YouTube「Vlaamse stoverij met bruin bier en mosterd」(≫こちら

ストーフレース

0:09 ストーフレー

へー、感動。その「stoverij」も「ストーフレー」で、「Stoofvlees」とほぼ同じなんですね。言葉が先にあって、表記違いなだけなんでしょうね。

◆ Wikipedia「Karbonade」(≫こちら

また調べているうちにカルボナードという単語そのものを使ったオランダ語を見つけました。綴りはCがKになっていますが、これもカルボナードフラマンドを指すのかな? しかしこの料理はいわゆるポークチョップ(ポークステーキ)で、オランダ語のカルボナードはフランス語のカルボナードには対応しないことが示唆されました。今のところ、あくまでフランス語のカルボナードに対応する単語はストーフレースまたはストーフレーです。

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先日とびっきり美味しいお店の煮込み料理を作ることができました。その料理名は、フランス語風にカルボナードまたはカルボナードフラマンド、オランダ語風にはストーフレースまたはストーフレーと言います。

一つの料理に全く違う2系統の名前がある。これはきっと多くのベルギー料理に見いだされる事象なのではないでしょうか。それならば料理名とはいえ決して軽く見逃すべきことではありません。

私たちは美食の国ベルギーの美味しい料理をいただくとき、この、言語による国内分断問題にも思いを馳せ、ただそれが美味しいというだけでなく、遠い異国のベルギーの国や政治やそこに住まう人々にも関心を寄せていくと良いのではないかと改めて思いました。

カルボナードストーフレース

現地のみなさん、現地の歴史を作ってくれたみなさん、今日も、美味しいレシピをありがとうございました♡



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