ネパールを旅して現地の料理を食べようとすると、カレー系の料理と餃子やうどんなどの粉モン料理の繰り返しになります。それはまさにネパールがもつアーリア人(Indo-Aryan)とチベタン(Tibetan)の人と文化の二面性によるものです。
カレーの料理は、ステンレスのお皿に、ごはんやカレーや炒め物などがワンプレートになり、肉類以外は基本的におかわり無料という嬉しい料理です♪
料理名は、ダルバット。ダルは豆ポタージュの名前で、バットはごはんを意味します。
私は現地のメモに、毎日食べた料理の現地名を店の人の発音で書いているのですが、メモに書かれている名称はひたすらダルバットです。店を変えても、街を変えても、ダルバット。
なのに、日本にいる今、ネット検索をして出てくる単語はダルバートが圧倒的に多数で、ダルバットやダールバートなどは少数派です。うーん、どうしてもダルバートという言い回しがなじまないのですが。。。
そこで今回、自分自身は今後どのように日本語カタカナ表記していくかを決定するために、ネパール語の文字(デーヴァナーガリー文字、हिंदीみたいな文字)をもとに検証した結果と、実際の現地の発音を動画サイトで幾つか検証した結果を突合しました。
【結論】
ネパールの国民食のごはんとカレーのおかずのワンプレート盛りは、「ダルバット(ダルバート)」のように、ダルバットを優位に表記し、必要ならダルバートを併記しようと思う。その理由は、ダルバートだと2つある長母音のうち1つを残して1つを落とすという妙な点が気になることと、現地の発音は自己の体験も含めて皆ダルバットと言っているように聞こえるためである。
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◆ネパール語表記からの検証
ダルバット/ダルバートは「दालभात」と書きます。これを1つ1つ分解すると、
द - da(ダ)
ा - ā(アー)
ल - la(ラ)
भ - bha(バッ)←有気音。口から空気が出るように。
ा - ā(アー)
त - ta(タ)
これを単につなげるとダーラバッアータ????みたいになりますが実際は発音ルールに基づき、そうはなりません。
発音ルール:語末の子音はもともと付帯する母音が消失する。
「दालभात」(ダルバット)は、「दाल」(ダル)と「भात」(バット)の2単語連結です。
1つめの単語の最後の文字は「ल」(ラ)ですが、語末にあたるので母音が消失して「ल」が「ル」の音になります。2つめの単語の最後の文字は「त」(タ)ですが、同様に母音が消失して「त」が無声無気音になります。
よって、
द - da(ダ)
ा - ā(アー)
ल - l(ル)
भ - bha(バッ)←有気音。口から空気が出るように。
ा - ā(アー)
त - t(無声音だがあえて書けばトゥ)
これをつなげると、ダールバッアートゥのようになります。
ときどき「ダールバート」と表記する人がいるのは、「ा」(長母音アー)をしっかりと表現しているのです。ゆっくりと読み上げれば、現地発音でも「ダールバート」のように長母音が2つ確認できるのではないでしょうか。
しかし、日常会話では、そこまでゆっくり話されませんから、長母音が2つとも短くなって「ダルバット」のように聞こえるのでしょう。先に動画検証の結果をここに書くと、発音が確認できた4つの動画ではすべて「ダルバッ」のように、長母音が手短に話されている印象です。
別の例では、水を意味する「पानी」がいい例だと思います。長母音が2回入っているから(「ा」(アー)と「ी」(イー))、「パーニー」と呼ばれるかと思いきや(もちろんゆっくり読めばパーニーですけど)、日常会話の中では水はたいがいパニと呼ばれるのではないでしょうか。長母音を短くするのは、ごく自然で普通のことなのです。
また日本語カタカナ表記では、例えばcatを「キャット」と書くように、語末のtを「ト」と書くのは通例ですから、要は4つの動画では全部「ダルバット」が近いのではないかと思うのです。
◆Youtubeでの検証
1)TASTY DAL BHAT दालभात | COOKING in a NEPALI HOTEL KITCHEN(≫こちら)
0:02 ダルバッ(ダルバット)
2)Dal Bhat(≫こちら)
3:57 ダルバッ(ダルバット)あるいは語頭に強調をこめてダールバッ(ダールバット)
3)Nepal Food – Eating Dal Bhat in Kathmandu (दालभात – Nepalese Thali Set)(≫こちら)
0:07 ダルバッ(ダルバット)あるいは語頭に強調をこめてダールバッ(ダールバット)
4)Dal Bhat Tarkari | The Ultimate Nepalese Food Recipe | Nepalese Khana Set | Yummy Food World 66(≫こちら)
11:59 ダルバット
2)と3)は語頭に強調をこめて発音されており、語頭のダルがダールになるが、でも、バットがバートには決してなっていないんだよね。。。
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しかも、ダルバートという日本でよく見る表記法には違和感がある。バートで長母音を活かすならダルもダールにすべきだから。
でも、最も思うことは、実際の発音がすべてバットと言っているのだから、やはり料理名はダルバットが最良なのではないかな。
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【結論】
ネパールの国民食のごはんとカレーのおかずのワンプレート盛りは、「ダルバット(ダルバート)」のように、ダルバットを優位に表記し、ダルバートを併記しようと思う。その理由は、ダルバートが適正な音価を踏まえていないと思われること、パニ(水)のように長母音を短く読むのはごく自然で普通であること、現地の発音は自己の体験も含めて皆ダルバットと言っているように聞こえるためである。