このたび夫が素敵なプレゼントを買ってくれました♪
ルクエのチーズメーカー(≫こちら)です♪
3点セットです。
- 電子レンジで牛乳を温める外容器
- 酸(酢やレモン果汁)の計量機能がついたフタ
- 凝固タンパク質を濾し取るメッシュ
到着して早速冷蔵庫に残っていた牛乳で試作しました。とっても美味しいフレッシュチーズに感激しました。
・・・しかし、さて、このチーズ。カッテージチーズというか、マルタやイタリアのリコッタのようなというか。。。そう考えているときに、カッテージチーズとリコッタチーズの違いをよく知らないことを自覚しましたので、そこで今回は、「リコッタとカッテージの違い」について検証し、まとめましたので、記事にします。
リコッタチーズは乳清からタンパク質を凝固させるのに対し、カッテージチーズは生乳からタンパク質を凝固させる。ただし、生乳に酸を加えて凝固させて得るものはカッテージチーズ風食品であり、本来のカッテージチーズの製法は生乳に乳酸菌を加える。
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こういう諸外国の文化についてネット情報から探すときは、少なくとも(日本語ではなく)英語に頼るのが良いです。日本語なら論文ベースのものが良いと思うし、そういう情報の探し方が気に入っています。
1)◆英語Wikipedia「Whey cheese」(≫こちら)
乳清チーズについて。
「乳清チーズはチーズ製造の副産物である乳清から作られる。」(Whey cheese is a dairy product made of whey, the by-product of cheesemaking.)
「たいていのチーズは、製造後、ミルクプロテインの50%が乳清部分に取り残されたままであり、そこにはラクトースやラクトアルブミンが含まれる。」(After the production of most cheeses, about 50% of milk solids remain in the whey, including most of the lactose and lactalbumin.)
「乳清チーズには大きく2つある:」(There are two fundamentally different products made of whey and called whey cheese:)
「1)アルブミンチーズ。熱と酸でラクトアルブミンを凝固させるもの。リコッタ(イタリア、マルタ)やミチトラ(ギリシャ)など。」(Albumin cheese, made by coagulating the albumin in the whey with heat and possibly acid: ricotta, mizithra, and so on.)
「2)ブラウンチーズ(ノルウェー)。乳清を煮詰めてラクトースなど糖分を凝縮させ、カラメル化させたもの。」(Norwegian brown cheeses, made by heating the whey to concentrate the sugar, and consisting primarily of caramelized milk sugar:)
生乳から得られる澄明な部分(チーズ作りの副産物)を乳清と言い、この乳清の主要成分として、ラクトアルブミンやラクトースがある。前者を酸と加熱により得たのがリコッタチーズである。後者を得て作るチーズもある。カッテージチーズはこの乳清チーズに該当していない。
2)◆英語Wikipedia「Ricotta」(≫こちら)
「Ricotta」の英語直訳は「recooked」、日本語で「再調理」あるいは「再加熱」。これがイタリア語の「リコッタ」。
製法:「乳清を追加発酵(12〜24時間室温放置)してより強い酸性にし、次いで酸性化された乳清を沸点近くに加熱する。」(Ricotta protein can be harvested if the whey is first allowed to become more acidic by additional fermentation (by letting it sit for 12–24 hours at room temperature). Then the acidified whey is heated to near boiling. )
「低pHかつ高温の組み合わせでタンパク質を変性させ、微細で良質なチーズの固形分を得る。冷やしてから目の細かい布に通して固形部分を得る。」(The combination of low pH and high temperature denatures the protein and causes it to precipitate, forming a fine curd. Once cooled, it is separated by passing the liquid through a fine cloth, leaving the curd behind.)
リコッタチーズを作る場合は、1)乳清を(そのまま使うのではなく)室温放置で追加発酵させる。(必要なら酸を足して)沸騰直前まで加熱して凝固タンパク質を得て、冷やしてから濾してチーズを得る。
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では一方で、カッテージチーズはどのような製法のものなのでしょうか?
3)◆Cinii論文「添加酸味料の種類がカッテージチーズ様乳凝集物の調製に及ぼす影響」(≫こちら)
緒言より。
- カッテージチーズは、殺菌された牛乳の脱脂乳に、スターターの乳酸菌を添加して、乳酸発酵生成物による酸凝集でカードを形成したものである。
- 市販のカッテージチーズは、脱脂→殺菌→冷却→乳酸発酵(1時間)→凝集→乳清排除→食塩添加、により製造される。
- 市販カッテージチーズを模倣したカッテージチーズ風食品を家庭で調製する方法として、酢やレモンなどの酸を添加する方法がある。
- 酸添加によりpH4.6以下になると凝集する。
- 家庭での調製例として、牛乳500mLにレモン果汁あるいは酢を30mL、あるいは、牛乳400mLにレモン果汁35mLまたは酢40mL。
上述のリコッタチーズは乳清からタンパク質を凝固させるのに対し、カッテージチーズは生乳からタンパク質を凝固させる。
キタ!
これが今日の疑問の回答です!!
更に市販のカッテージチーズは乳酸菌発酵によるタンパク質凝固体だが、家庭で酸を添加して作るものはカッテージチーズではなくカッテージチーズ風食品である、ということも知りました(★)。
ここちょっと大事なので、(★)マークをつけておきます。あとでここにもう一度触れます。
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なお、この論文からは、家庭でカッテージチーズ風食品を作るにあたり、大変に役に立つ条件が書いてありました。
- 使用牛乳:成分無調整、無脂乳固形分8%以上、乳脂肪分6%以上。
- 加熱温度:60℃
- 牛乳100mLあたりの酸添加量:米酢16mL、リンゴ酢16mL、等。
- 塩分の効果:塩を少々含有する酸を使うと酸の使用量が低減した。
ルクエのチーズメーカーの説明書の、酸を添加する製法と比較してみます。
- 使用牛乳:低脂肪乳を避ける。
- 加熱温度:80℃
- 牛乳100mLあたりの酸添加量:酢6mL、レモン果汁7mL。
- 塩分の効果:ND(※)
※ND:no data。記載なし。
上の論文を参考にすることで、原料の牛乳選びや、加熱温度や酸添加量などを意識して調整していけるようになりますね。漠然と作るより、情報をもとにより効率的に作るほうが楽しいので、良い論文を見つけることができて本当に良かったです。
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もうひとつ、今回勉強をして、気づいたことがあります。
上記の(★)です。
「カッテージチーズ」と「カッテージチーズ風食品」の違いです。
ルクエのチーズメーカーの説明書の、ヨーグルトを添加する製法の概要は以下の通りです。
- 牛乳にヨーグルトを混ぜる。
- 加熱する。
- タンパク質が凝固分離してきたら、濾し取る。
これ、上記の(★)の、「カッテージチーズ」(風食品ではないほう)の製法そのものなんですね。
これまで、カッテージチーズは酸を加えて作ると思ってきたから、これは大変良い勉強になりました。
更に今日は、カッテージチーズを得たあとの乳清から更にタンパク質を凝固分離させることで、リコッタチーズが得られることも勉強になりました。つまり、第一弾でカッテージチーズを作り、その乳清の再利用でリコッタチーズを作れるだなんて、本当に楽しそう♪♪ まさにRe-cook、まさにRicotta! ただし、リコッタを作る際は、上の英語版Wikipediaから見つけた「乳清を追加発酵(12〜24時間室温放置)」する工程をちゃんと取り入れる必要があるように思います。
では、今日の疑問「リコッタとカッテージの違い」の結論を最後に書いておきます。
リコッタチーズは乳清からタンパク質を凝固させるのに対し、カッテージチーズは生乳からタンパク質を凝固させる。ただし、生乳に酸を加えて凝固させて得るものはカッテージチーズ風食品であり、本来のカッテージチーズの製法は生乳に乳酸菌を加える。