やっと見つけた!!「大盘鸡」のウイグル語名ダーペンジ/ターペンジ。

2018/09/27

私はこれまで何回か大盘鸡を作りました。これまでは、どうも日本の火力条件のせいなのか、じゃがいもや調理器具の具合が現地と違うのか、コレだと思う大盘鸡を作ることができなかったんです。でもやっと、3年越しの夢が叶って、美味しいレシピ化に成功しました。

この料理の中国語簡体字表記は、以下の通りです。

大盘鸡(ダーパンチー)

「大盘鸡」と書いて、「ダーパンチー」のように読みます。でも私が中国新疆ウイグル自治区で聞いたときは「ターペンジ」と聞こえました。順番からすると、私は最初に「ターペンジ」という音を知り、後から中国普通話で「ダーパンチー」のように発音することを知りました。「ペン」と「パン」の違いに違和感を感じたものの、それは私の聞き間違いかな(あるいは人によって言い方が違うのかな)と軽く思っただけで、その後ずっとスルーしてきました。

でも今回、折角ウイグルの料理を美味しく作ることができた記念に、ウイグル文字と発音を検証しようと思いました。そして!!!分かったんです!!!やっぱり「ターペンジ」と聞こえた私の体験は正しかったということに!!!

ここでは、その料理名の検証過程を記事にします。

* * *

まず検証に取り掛かったのは、「新疆でターペンジと言っていたのは、ウイグル語なのか、漢語なのか、それとも両方なのか」という点です。

◆中国語Wikipedia「大盘鸡」(≫こちら

大盘鸡

中国語:「大盘鸡」
ウイグル表記「قورۇمىسى توخۇ تەخسە چوڭ」
ウイグル語の読み:「chong texse toxu qorumisi」

なんか、ウイグル語だと長い名前になっていますね。チョンテフセトフコルムシ????

◆英語Wikipedia「Dapanji」(≫こちら

大盘鸡

ウイグル語の読みやすい表記が出てきました。
「чоң тәхсә тоху қорумиси」
これはUSY(ウイグルキリル文字表記)です。ロシア語に似ているというか、発音を示してくれているので読みやすいです。チョンテフセトフコルミシ
ただし、「тәхсә」の「ә」はエとアの中間のあいまい音なので、チョンタフサトフコルミシのようになってもよいかもしれません。

意味もありました。
چوڭ(チョン)=大きな
تەخسە(テフセ)=平皿
توخۇ(トフ)=鶏肉
قورۇمىسى(コルムシ)=炒める

鶏肉炒めを大きな平皿に乗せて提供する料理という意味です。それだけの意味を含めているから長い名前になるんですね。なんか、中国語の「大盘鸡」を直訳したような名前です。

◆You tube「چوڭ تەخسىلىك توخۇ قورۇمىسى | chong texshilik tohu qorumisi」(≫こちら

発音を聞くのに動画は役立つので、その、チョンテフセトフコルミシを用いた動画を探しました。ありました。

大盘鸡

あった!!!
0:11 「チョンタスレキトホコルミセ」と言っています!!

ウイグル表記:「چوڭ تەخسىلىك توخۇ قورۇمىسى」
読み方:「chong texshilik tohu qorumisi」
発音:「チョンタスレキトホコルミセ」

・・・しっかし、まだすっきりしないなー。本当に、直訳して単語を置いてったような「チョンタスレキ~」という名称で現地に定着しているのでしょうか?

◆実際の料理メニュー写真を検証する。

現地の料理メニュー写真を記録から引っ張り出してきました(撮影地:喀什(カシュガル))。

大盘鸡

あら! チョンタスレキ~みたいな長い名前になっていないよ?

もうひとつ。別のお店のメニュー(撮影地:塔什库尔干(タシュクルガン))も同様でした。こちらは拡大して掲載します。

大盘鸡

7文字あります。

◆英語Wikipedia「Uyghur alphabets」(≫こちら

文字が分かれば、1つずつばらして検証することができます。

USY UYY&ULY(※)
د  д  d
ا  а  a
پ  п  p
ه (下参照)
ن  н  n
ج  җ  j(下参照)
ى  и  i

※USY:Uyghur Cyrillic alphabet(ウイグル語キリル文字表記)、UYY:Uyghur New Script(ウイグル表記の新様式)、ULY:Uyghur Latin alphabet(ウイグル語ラテン文字表記)。

ここで、「ه」について
IPA(国際音声記号)では「ɛ」、非円唇前舌半広母音、英語のbedのe。日本語のカタカナ表記なら「エ」。
USYとUYYでは「ә」、ULYでは「e」、IPAのɛやæに相当、IPAのæはエとアの中間。

ということで、「ه」は「エ」~「エとアの中間」あたりの音になる。日本語カタカナ表記では、第一候補として「エ」と置くのがよいだろう。

なお、жとҗの違い。җってロシア語で見ない気がするんだけど、жがzh、җがjの音。IPAだと、жがʒ、җがdʒ。チュとヂュのような。この場合、ディセンダ(下につくチョン)がつくと音が重くなるって覚えておこうっと。

よって、出ました。
元表記:「د ا پ ە ن ج ى」
キリル:「и җ н ә п а д」=(右から読んで)ダーペンジ
ラテン:「i j n e p a d」=(右から読んで)ダーペンジ

そして、「タ」と「ダ」の違いは、中国に行くと、濁音が軽く読まれて清音に近くなることを多々耳にするため疑問はありません。雲南の大理ってピンインは「Dàlĭ」でも日本人の耳には「ターリー」と発音しているようにも聞こえませんか? ダーリーでも良いし。だから私が現地で「ターペンジ」と聞いたのも、それが「ダーペンジ」でも、どっちも間違えてはいないように思います。

* * *

ターペンジ

ヤッター、やっと作れた!!納得味のターペンジ!!

すごいの作ったなw

だってさ、定義が大皿料理だもん

見た感じ醤油の利いた中華だけど、中華っていう感じの味じゃないよね

別にラグマン味とも近いわけじゃないのにね

でもシンチャンの味になってる。

旨い旨い(もりもり食べる)

シメにうどんを入れるのが定番だよ♪ うどん用意してあるからね♪


レシピは≫こちら。日本の調理条件で作る場合、じゃがいもが煮崩れないように、メークインを使うのがポイントです。



* * *

本記事、レシピ内容及び写真の著作権はすべて管理人:松本あづさ(プロフィールは≫こちら、連絡方法は≫こちら)にあります。読んでくれた方が実際に作って下されば嬉しいですし、料理の背景やTipsなど、世界の料理情報の共有を目的として、大事に作成しています。
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