私は、世界242か国目の渡航国として、渡航難関国と言われてきたナウルに、念願叶って訪問することができました。
青と黄色はナウルの国家カラーです。ナウルには1週間滞在しました。そのうち後半5日間はナウル独立50周年の大式典&大イベントの期間に合致し、あちらこちらで伝統料理が振る舞われ、ナウル人と料理の会話もはずみ、いろいろと、それこそいろいろとナウル料理を勉強することができました。
* * *
振る舞いには、メネンホテルという国営ホテルのシェフが作る料理がずらりと並ぶこともありますが、地元ナウル人が作る持ち寄りの料理が集まる機会も多くありました。そこにあったものの1つが、醤油色に黒ずんだ調理済みの小鳥たち。
「何これ?」と聞くと
「ノディバード」(Noddy bird)と言う。
ほとんど「ノリバード」に聞こえます。
「ナウル語で何て言うの?」と聞くと
「ダラール」(Darar)と言う。
綴りもその場で書いてもらいました。
そう、それは、野鳥のバーベキューだったのです。
この日の料理は特に素晴らしかった。お皿には、ダラール(野鳥のバーベキュー)の他にも、ブルジッテイウ(生の魚の切り身を海水に浸けたもの)、レナンキウイダギーガ(タコのココナッツジュース煮)や、デメ(パンノキの実)や、クモ(豚の丸焼き)の取り分けたものなど、ナウルの伝統のごちそうがたくさん乗っています。クモ(豚の丸焼き)とダラール(野鳥のバーベキュー)はお祭りの必須アイテムだそうです。「ここ座っていいですか」と尋ねた席がマーシャル大統領お付きの要人用のお席だったことが後でわかり(すみません💦)、旅行者の分際で素晴らしいテーブルクロスの上で振る舞いの料理をいただきました。
野鳥「ダラール」は、長いくちばしを背中に刺すのが伝統的な習慣だそうです。すなわちどの野鳥も同じ形にして焼かれていて、素晴らしい。食べるところは少ないものの、身は締まっていて、肉が旨い。
ナウル人に「海の鳥ですか?」と聞くと
「海と山を行ったり来たりする鳥だ」と答えてくれた。
「ブラックバード」(黒い鳥)とも言っていました。
* * *
帰国して、この野鳥について調べることにしました。鳥がよく遊びに来る我が家には、野鳥図鑑があるので、まずはそこから見てみました。
そして「Noddy bird」の候補にあがった黒い鳥は2つ。
1)和名:クロアジサシ(学名Anous stolidus、英名Brown Noddy)
2)和名:ヒメクロアジサシ(学名Anous minutus、英名Black Noddy)
2つは外見がよく似た鳥です。1)と2)の両方にクロと名がつき、英名では2)にのみBlackと名がつくくらいだから、似ているだけに混同するのだと思います。
◆Youtube「Nauru Noddy bird catchers」(≫こちら)
ナウル人がこの野鳥を獲る様子をとらえた、貴重な映像です(2012年)
バードキャッチャーの、シモンさん。
夕暮れどきに、ピナクル(※)の森に入る。カセットテープなどで録音された野鳥の声を響かせて、鳥をおびき寄せます。
※尖塔が連なるような地形。ナウル内陸部の場合はリン鉱石を採掘した跡地にピナクルが形成される。
鳥が飛んでくる。それを、網をふりかざしてキャッチします。
捕れた!!
2)のヒメクロアジサシです。
ナウル人が英語で「Black」と言っていたので、英名「Black Noddy」と矛盾しません。1)と2)の鑑別ポイントにくちばしの長さがあり、この長いくちばしはやはり2)のヒメクロアジサシであると見受けられました。
頸椎脱臼させて持ち帰り、羽を抜いて並べます。
あとはバーナーの火で残った毛を焼きます。
この動画の中で、
「(ナウル人の)みんなバーベキューにしたものが好きだ。中にはゆでるのが好きな人もいる。」
と言っていました。
バーベキューにする場合、動画には映っていませんが、あとは腸などの内臓を取り、くちばしを背中に刺すように成形して、タレに浸けます。下ごしらえはここまで。
ナウルに行って、ナウルの家庭を見てみると、バーベキューセットが置いてある家が多いです。バーベキューの味付けの方法について質問をすると、みなさん回答が同じで、醤油とにんにくと生姜。あとは砂糖です。
* * *
これが、焼きあがった野鳥料理「ダラール」です。
最後にレシピを。レシピは簡単です(※)。
※南の島のミクロネシア人の料理です。計量しないこと、時間を計らないことを前提としています。
材料(10人分):
- ヒメクロアジサシ
- 10羽
- 醤油
- 適量
- 水
- 適量
- にんにく
- 少々
- 生姜
- 少々
- 砂糖
- 少々
例えば、漬け汁が800mLで足りそうなら、醤油400mL、水400mL、にんにく1かけ、生姜はにんにくと同量、砂糖大1/2、といった具合。
作業工程:4 時間
- ヒメクロアジサシの腸を取り、羽を抜くなど下ごしらえをする。
- にんにくをみじん切りにし、生姜をすりおろす。
- 鳥のくちばしを背中に刺して成形してタッパに入れて並べる。
- 醤油を鳥が浸かる半量程度入れ、次に水を入れて鳥が浸かるようにする。
- にんにくと生姜と砂糖を入れ、混ぜ、肉に醤油の色がしみこむまで置いておく(例えば3時間くらい)。その間に木の枝やココナッツの殻を燃やして、炭火にしておく。
- 炭に網を乗せて鳥を焼く。
- Enjoy!
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長いくちばしを背中に刺して、どの野鳥も同じ形にして焼かれていて、素晴らしい。
醤油味で、食べるところは少ないが、身は締まっていて、肉が旨い。
ナウルは、今も伝統料理をいーっぱい残していますよ。
しかも、とても手間と時間がかかる採集生活を、今も続けているんです。
何より、この野鳥の料理を私は他国で見たことがなくて、大変に感激を覚えました。