中米のパナマは昔、南米のコロンビアと同じ国でした(ヌエバグラナダ副王領)。例えば煮込み料理サンコーチョという料理名が他の中米諸国ではあまり浸透していない一方で、パナマ-コロンビア-エクアドル(かつてのヌエバグラナダ副王領ないしグランコロンビア)においては共通してポピュラーなのは、「パナマが南米だった」史実と密接な関連があると思われます。
しかし、あれほどにコロンビアの国民食であるアレパ(コロンビア名物パン)が、パナマの食堂などではお見かけしないんですよね。そこで、「コロンビアのアレパはパナマにあるか?」という点に興味をもち、いろいろとWEBサイトを見てみました。
ありました!! なんとそれは名前がトルティーヤで実体がアレパだったのです!!!
◆Wikipediaスペイン語版「Tortilla (Panamá)」(≫こちら)
このページでは、スペインによるパナマ支配が始まった後、スペイン人によってパナマ先住民がこのトウモロコシパンを食べていたと記されています(1631年Diego Ruiz de Campos、1640年Juan Requejo Salcedo)。
「Cabe recalcar que no se debe confundir la tortilla panameña con las tortillas mexicanas y centroamericanas, dado que estas últimas se preparan a base de maíz blanco nixtamalizado.」(パナマのトルティーヤは、メキシコを含め中米の他国のトルティーヤと混同されるべきではない。なぜなら後者はアルカリ処理された白トウモロコシが材料になるからである。)
メキシコ料理で有名なトルティーヤの原料となる「マサ」は、トウモロコシをアルカリ処理して皮をなくし、ペラグラ(※)防止など栄養価を高めています。しかしパナマではこれを使わない。ということは、黄色いトウモロコシの色がストレートに出ているに違いない。
※ペラグラ:ナイアシンというビタミンが欠乏することによって発症する。皮膚障害が初発することが多い。
◆Google画像検索「”Tortilla en Panamá”」
(※パナマのトルティーヤ、という一つの意味で検索されるよう、””を使って検索しています。)
これがパナマのトルティーヤ。
黄色くて、高さがある。
◆Google画像検索「”Tortilla en Mexico”」
これがメキシコのトルティーヤ。
白くて、薄い。
◆Google画像検索「”Arepa en Colombia”」
これがコロンビアのアレパ。
高さがある。白いのも黄色いのもあるかな?
◆私の旅写真「コロンビアのアレパ」(撮影地ポパヤン)
黄色くて、高さがある!!
これはパナマのトルティーヤと同じものだ!!
◆結論
上の4つの画像からも、検証することができたように思います。パナマのトルティーヤ(Tortilla en Panamá)は、メキシコのトルティーヤ(Tortilla en Mexico)とは違うもので、むしろコロンビアのアレパ(Arepa en Colombia)と相同性をもつ料理です。
これはスペイン人支配開始後に、先住民の食べ物として観察された記録が残っており、パナマの地で長く続く伝統食であることが示唆されました。
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パナマは中米に区分される国ですが、歴史的に、現在の中米8か国のうち、パナマだけは南米側に属し、コスタリカ以北は中米連邦を形成していたことがあり、パナマには南米の食文化が見られます。
パナマと南米はダリエンギャップという密林地帯に阻まれ、人の行き来がふんだんには行われていないのに、こうやって文化の伝播というか共通点があることが、非常に興味深いと思いました。