この度、ジョージア(グルジア)の国民食である「აჯაფსანდალი」という料理を作り、レシピ化しました。この「აჯაფსანდალი」をカタカナ表記で料理名にするとき、「アジャプサンダリ」か「アジャフサンダリ」か、追求の困難を極めました。特に難しかった「ფ」という文字は日本語にはない発音で、今回この発音とカタカナ化について調査しました。
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1)音価を見ました。
グルジア文字は1つの文字が1つの音(子音か母音)に相当するので、グーグル翻訳(≫こちら)で「აჯაფსანდალი」を1文字ずつ分解して音価を見ました。音価はグルジア文字のわくの下に表示されます。
ა→a、ჯ→j、ა→a、ფ→p’、ს→s、ა→a、ნ→n、დ→d、ა→a、ლ→l、ი→i
「ア・ジャ・p’・サ・ン・ダ・リ」
ფはp’。pじゃなくてp’。これはどう読む文字なのでしょうか。
2)「ფ」の文字を見ました。
Wiki「グルジア文字」(≫こちら)で、「ფ」の文字を見ました。
ここでは「ფ→pʰ」と、そして「პ→pʼ」(もうひとつ外来語に対して「ჶ→f」)が記されています。
「ფがpʰ」ということは、「フ」と発音するのでしょうか?
3)「ფ」と「პ」の発音を見ました。
Wiki「グルジア語」(≫こちら)
「ფは帯気音(有気音)」、「პは放出音」と記されています。帯気音は「調音器官の開放より少し遅れて母音の声帯振動が始まる子音」で放出音は「肺からの呼気を用いない非肺気流機構の子音」だそうです。つまり、「ფ」(帯気音)は「プフ」と空気が抜け、「პ」(放出音)は日本語の「プ」に近いと思いました。ただ、帯気音と放出音の区別は日本語発音には存在しないこともあり、まだ実体がつかめません。
4)「ფ」と「პ」の発音を聞きました。
Youtube「georgian alphabet pronunciation」(≫こちら)
0:31に「პ」の放出音、0:44に「ფ」の帯気音。どっちも「プ」に聞こえ、最初は「わかんにゃーい」とさじを投げそうでしたが、何十回か、その2つの音だけを交互に聞いていると「ფ」のほうがプーと長めに聞こえます。そして、空気を出す分「ფ」が軽い音に聞こえます。
Youtube「HOW TO PRONOUNCIATION GEORGIAN LETTER / ALPHABET」(≫こちら)
0:29に「ფ」の「フー」という唇の震えを伴う音、「f」の文字。0:21の「პ」の音には「プ」の音と「p」文字。
つまり、
「ფをf(フ)」、「პをp(プ)」としています。
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<ここまでのまとめ>
1)より、ფはp’。
2)より、ფはpʰ。
3)より、ფは帯気音(有気音)、吐く息を伴う。
4)より、ფはプーないしフー、吐く息を伴う軽い音。
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では引き続き調査の結果を記します。
5)「აჯაფსანდალი ajafsandali」と検索
「აჯაფსანდალი ajafsandali」と検索した結果、グルジア人の作成するレシピサイトには、画像のサイト(≫こちら)のように、「ajafsandali」と併記しているものも多い。
一方で「აჯაფსანდალი ajapsandali」と検索すると、グルジア人のサイトも多いが、他の国で作られたサイトも目立つ。
「ფ」は完全には「p」でも「f」ではないことはこれまでの調べで分かっています。どちらでもないのだから、グルジア人にも「ფ」を「f」と置くか「p」と置くかが固定されていないのだと思われました。
6)他国の言語を調べました。
英語:Ajapsandali・・・「p」
ロシア語:Аджапсандали・・・「п」が「p」の音
アゼルバイジャン語:Əcəbsəndəl・・・「b」
アルメニア語:Աջափսանդալ・・・「փ」はグルジア語の「ფ」と同じ
これを見ると、「アジャプサンダリ」と表記するほうが無難なのだと思いました。
7)「აჯაფსანდალი」の発音を聞きました。
Youtube「აჯაფსანდალი」(≫こちら)
0:37で「アジャプサンダリ」と言っているのが聞こえます。しかしながら、これが「პ」のプではなく「ფ」の吐く息を伴うプに聞こえるようになった。「პ」と「ფ」の音の違いについては随分と耳が出来てきた!!嬉しい。
<結論>
「აჯაფსანდალი」を「アジャフサンダリ」及び「アジャプサンダリ」とカタカナ表記することは、どちらも妥当ないし許容の範囲内であるが、「アジャプサンダリ」と表記するほうが日本人の耳に聞こえる発音に近く、他言語の表記にも合うように思う。しかし「ფ」の音は、日本語の「プ」とは異なりやや「フ」のような息を吐き出す要素をもつことと、ジョージア(グルジア)現地の人にも「ფ」を「f」と置く人が少なくないことから、「アジャフサンダリ」というカタカナ表記も尊重したい。
よって今後サイト内表記をどちらかに統一するよりも、両方を併記するほうが良いと思われる。そこで当サイトでは、レシピページでは「アジャプサンダリ」と「アジャフサンダリ」の両ページを作成し、各国料理や日記などの記事中の表記は「アジャプサンダリ(アジャフサンダリ)」のように併記することも検討しようと思う。
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「アジャプサンダリ(アジャフサンダリ)」ってどんな料理?
なすやじゃがいもやトマトのような、日本でなら夏に食べるような野菜の、香辛料の風味も良いくたくた煮です。よくネットで「ジョージア(グルジア)版ラタトゥイユ」という表現を見かけるけれど私はそれはちょっと違うと思っていて、なぜならこれは、ジョージア(グルジア)のあるコーカサスのほか、バルカンを含めた東欧やトルコ方面の料理の味わいがするからです。
美味しいので是非作ってみてください♪