2016年、素晴らしい洋書(英語)が発行されました。それは「バチカンクックブック」というバチカン料理のレシピ本で、バチカン市国のスイスガード傭兵シェフ、ダビッドガイザー(David Geisser)によりまとめられました。下はその公式ホームページ(≫こちら)です。
兼ねてより私は「バチカン料理とは何か」とずっとずっと考えてきました。「バチカン料理」として語られるべきものは、宗教行事に関連するものか、教皇や聖職者の聖餐の料理か、もうひとつは宿坊というか教会宿舎で出される食事だろうと思いますが、それは多くはシークレットですし、知ったところで、日本人が旅行でバチカンに行っても出会える可能性がまずありません。
しかし、WEBサイト「The Vatican Cookbook」(≫こちら)では、我々にそういったシークレットと接点を持たせてくれます。このことは私にとっては大きな喜びで、そこに書いてあるコンセプトにも感激。ここに私自身に役立つ記述を和訳し、メモしておこうと思います。
* * *
教皇のテーブルからあなたのもとへ。(From the Pope’s Table to Yours)
教皇庁のスイスガード傭兵が、これまでにない本を出しました。(Pontifical Swiss Guard presents … a book like no other.)
何世紀にもわたってバチカンの食卓に登場する古典的料理も、現代の最高のローマ料理もあります。(Here are the classics served at Vatican tables for centuries and the best of modern Roman cuisine.)
教皇(※1)であるフランシスコ、ベネディクト16世、ヨハネパウロ2世(※2)に、故国の料理(アルゼンチン、ドイツバイエルン州、ポーランドの料理)を捧げます。(we pay tribute to Pope Francis, Pope Benedict XVI and Holy Pope John Paul II with their personal favorite dishes from their homelands of Argentina, Bavaria and Poland.)
※1:日本政府は2019年に法王から教皇へと呼称変更している。※2:出版時点の教皇はフランシスコ(第266代)。2025年より第267代レオ14世が教皇(第267代)。
・・・つまり、この本を見れば、数百年にわたってバチカンに登場した料理も、現代イタリア料理も、そして各教皇がバチカン内で食べた母国の料理というように、様々なバチカン料理の一端を見ることができるのです。
* * *
公式サイトには本のプレビュー画面があります。目次の見開きには、「Foreword」(諸言)から「A Note of Thanks」(謝辞)まであり、つまり全コンテンツを俯瞰することができます。
紀伊国屋のサイト(≫こちら)では、このコンテンツ文字を掲載していました。
* * *
さあ、バチカンのシェフが伝えてくれる料理にはどんなものがあるのでしょう。
まずはメニューを日本語にしたい!!!
「あづさ風」の日本語ですが料理名として機能するように日本語化してみました♪
Swearing-in/スイスガード衛兵宣誓式
・Girandole for the Sixth of May
5月6日衛兵宣誓式の燭台
・Filet of Beef Tagliata
牛フィレ肉のイタリア風たたき
・Bavarese Yogurt & Strawberry Coulis
ヨーグルトババロアにストロベリーソース
Swiss Guard in Service to the Popes/スイスガード傭兵から法王へ捧ぐ
Pope Francis/フランシスコ(266代教皇、在位2013~2025、原国籍アルゼンチン)
・Argentine Empanadas on Pepper Salad
アルゼンチン風エンパナーダをパプリカサラダに乗せて
・Colita de Cuadril
コリータデクアドリル(牛臀部肉のアルゼンチン風豪快焼き)
・Dulce de Leche
ドゥルセデレチェ(ミルクキャラメルクリーム)
・Alfajores
アルファホレス(ドゥルセデレチェ挟みビスケット)
・Pizza a Caballo
ピッサアカバーショ(ヒヨコマメクラッカー乗せアルゼンチン風ピザ)
Pope Benedict XVI/ベネディクト16世(265代教皇、在位2005~2013、原国籍ドイツ)
・Regensburg Sausage Salad
レーゲンスブルク(ドイツの一都市)風ソーセージサラダ
・Suckling Pig and Dumplings
乳飲み豚のローストと付け合わせのすいとん風団子
・Kirschmichel
キルシュミヒェル(サクランボプディングケーキ)
Pope John Paul Ⅱ/ヨハネパウロ2世(264代教皇、在位1978~2005、原国籍ポーランド)
・Pierogi
ピエロギ(ポーランド風餃子)
・Polich Fleischvogel — “Birds in Red Nest”
ポーランド風フライシュフォーゲル(サイの目切りの具を薄切り牛肉で巻き焼き)“赤い巣ごもり風”仕立て
・Apple Kuchen
アップルクーヘン(リンゴのタルト)
Personnel of the Vatican/バチカン職員
・Wiener Schnitzel
ウィナーシュニッツェル(ウィーン風薄いカツ)
・Gnocchi al Vaticano
バチカン風ニョッキ(すいとん風パスタ)
・Saltimbocca alla Romana
ローマ風サルティンボッカ(牛肉と生ハムの重ね焼き)
Officers of the Guard/傭兵の役人に
・Cheese Torte Italiana
イタリア風チーズタルト
・Veal in Cream Sauce
仔牛のクリームソース
・Lamb & Mediterranean Vegetables
子羊と地中海の野菜
・Risotto al Vino Rosso
赤ワイン仕立てのリゾット
・Spaghetti Frutti di Mare
海鮮スパゲティー
・Papet Vaudois
パペヴォードワ(ねぎとじゃがいものくたくた煮にキャベツソーセージ乗せ)
・Braised Lentils
レンズ豆煮込み
Life in the Swiss Guard/スイスガード(傭兵)の生活
・Polenta Towers & Chicken
ポレンタ(トウモロコシ粉マッシュ)にチキン乗せ
・Scaloppine di Vitello alla Panna
牛薄切り肉のクリーム仕立て
・Braised Pork Roast
ローストポーク
・Monkfish & Monk’s Beard Greens
アンコウとオカヒジキ風野菜
・Cod Fish Borgo Pio
ボルゴピオ(ローマ市内のバチカン付近の通り名)風タラの料理
Uniform of the Guard/傭兵の制服
・Chocolate Amaretto Cake
チョコレートアマレットケーキ
・Pistachio Torrone
ピスタチオのトゥロン(ヌガー菓子)
・Tiramisu
ティラミス
Patron Saints of the Guard/傭兵の守護聖人
・Martinsgans — St. Martin’s Goose
マルティンスガンス(聖マーティンの日のローストダッグ)
・Veal Piccata Milanese
ミラノ風薄切り仔牛肉のピカタ
・Swiss Omelet with Herbs
ハーブ入りスイス風オムレツ
Holidays at the Vatican/バチカンの祝日/祝事
・Chocolate Gingerbread
チョコレートジンジャーブレッド
・Grittibanze
グリッティベンツ(人形型パン)
・Beefsteak Cafe de Paris
パリのカフェ風ビーフステーキ
・Rabbit & Almond Sauce
ウサギ肉のアーモンドソース
Special Places of the Vaticanバチカンの特別な場所
・Minestrone
ミネストローネ(豆や野菜のスープ)
・Tomato Soup Fiorentina
フィレンツェ風トマトスープ
・Eggplant Mozzarella
ナスとモッツァレラチーズ
Museums of the Vatican/バチカン美術館/博物館
・Lasagna alla Mamma
家庭料理風ラザニア
・Crespelle with Leek & Truffle Filling
リークネギとトリュフ入りクレープ
・Gnocchi alla Romana
ローマ風ニョッキ(すいとん風パスタ)
・Fettuccine Trastevere
トラステベレ(ローマの一地名)風フェットゥチーネ(平打ちパスタ)
・Campanelle & Sun-dried Tomatoes
カンパネッレ(ショートパスタの1つ)と日干しトマトのソース
・Penne Pasta alla Grappa
ペンネパスタ(ショートパスタの1つ)のグラッパ(蒸留酒の1つ)仕立て
・Conchiglioni al Forno
コンキリエ(ショートパスタの1つ)のオーブン焼き
Castel Gandolfo, Frascati & Anguillara/カステルガンドルフォ、フラスカティ、アンギララ(バチカン近郊の地名)
(カステルガンドルフォはバチカンで消費する野菜の農園がある)
・Chicken Arrabbiata
鶏肉のアラビアータ(スパイシートマト煮)
・Farfalle Albano
ファルファッレ(ショートパスタの1つ)のアルバーノ(ローマ近郊の地名)風
・Risotto with Smoked Eel
スモークウナギのリゾット
Favorites of Rome/ローマの美味しいもの
・Spaghetti alla Carbonara
スパゲティーカルボナーラ
・House Ravioli
家庭料理としてのラビオリ
・Suppli — Roman Rice Balls
スップリ(ローマ風ライスコロッケ)
・Insalata Di Gamberi
エビのサラダ
・Fusilli alla Califfa
生ハム仕立てのフジッリ(ショートパスタの1つ)
・Risotto & Artichokes
リゾット&アーティチョーク
Basic Recipes/基本的なレシピ
・Doughs & Dumplings
小麦粉を練って作る生地
・Potatoes & Kluski
じゃがいもとクネーデル(じゃがいも団子)
・Risottos & Spaetzle
リゾット(粥)とシュペッツレ(卵麺)
* * *
- 行事、祝事、組織執行の料理
- 教皇の母国の料理
- イタリア料理
- スイスガードの料理(スイス料理)
- 職員のふるさとの料理(周辺国の料理)
- バチカン国内で観光客に提供される料理
といった料理で構成されます。周辺国の料理を挙げるとキリもまとまりもないから、上4つまでを柱として押さえればよい。
そしてここにもうひとつ、
* * *
この写真は、バチカンを衛るスイスガードです(12月下旬に撮影したため、ミケランジェロデザインの素敵なユニフォームの上にコートを羽織っています)。
・・・ちなみにこの本、バチカンに行ったら絶対買おうと思って、実際にバチカンまで行ってきたんだけど、バチカン市国内の本屋に売っていなかったんですよね。なぜだろう。観光客や参拝者に絶対売れると思うのにな (^^)
※本記事は2017年に初回執筆したものですが、2025年に新ローマ教皇にレオ14世が選出されたことを受けて記事改筆しました。