英語書籍の「Vatican Cookbook」が素晴らしい。メニューを日本語に翻訳してみました。

2017/05/29

2016年、素晴らしい洋書(英語)が発行されました。それは「バチカンクックブック」というバチカン料理のレシピ本で、バチカン市国のスイスガード傭兵シェフ、ダビッドガイザー(David Geisser)によりまとめられました。下はその公式ホームページ(≫こちら)です。

バチカンクックブック

兼ねてより私は「バチカン料理とは何か」とずっとずっと考えてきました。「バチカン料理」として語られるべきものは、宗教行事に関連するものか、教皇や聖職者の聖餐の料理か、もうひとつは宿坊というか教会宿舎で出される食事だろうと思いますが、それは多くはシークレットですし、知ったところで、日本人が旅行でバチカンに行っても出会える可能性がまずありません。

しかし、WEBサイト「The Vatican Cookbook」(≫こちら)では、我々にそういったシークレットと接点を持たせてくれます。このことは私にとっては大きな喜びで、そこに書いてあるコンセプトにも感激。ここに私自身に役立つ記述を和訳し、メモしておこうと思います。

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教皇のテーブルからあなたのもとへ。(From the Pope’s Table to Yours)

教皇庁のスイスガード傭兵が、これまでにない本を出しました。(Pontifical Swiss Guard presents … a book like no other.)

何世紀にもわたってバチカンの食卓に登場する古典的料理も、現代の最高のローマ料理もあります。(Here are the classics served at Vatican tables for centuries and the best of modern Roman cuisine.)

教皇(※1)であるフランシスコ、ベネディクト16世、ヨハネパウロ2世(※2)に、故国の料理(アルゼンチンドイツバイエルン州、ポーランドの料理)を捧げます。(we pay tribute to Pope Francis, Pope Benedict XVI and Holy Pope John Paul II with their personal favorite dishes from their homelands of Argentina, Bavaria and Poland.)

※1:日本政府は2019年に法王から教皇へと呼称変更している。※2:出版時点の教皇はフランシスコ(第266代)。2025年より第267代レオ14世が教皇(第267代)。

・・・つまり、この本を見れば、数百年にわたってバチカンに登場した料理も、現代イタリア料理も、そして各教皇がバチカン内で食べた母国の料理というように、様々なバチカン料理の一端を見ることができるのです。

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公式サイトには本のプレビュー画面があります。目次の見開きには、「Foreword」(諸言)から「A Note of Thanks」(謝辞)まであり、つまり全コンテンツを俯瞰することができます

バチカンクックブック

紀伊国屋のサイト(≫こちら)では、このコンテンツ文字を掲載していました。

バチカンクックブック

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さあ、バチカンのシェフが伝えてくれる料理にはどんなものがあるのでしょう。

まずはメニューを日本語にしたい!!!

「あづさ風」の日本語ですが料理名として機能するように日本語化してみました♪

 Swearing-in/スイスガード衛兵宣誓式 
・Girandole for the Sixth of May
 5月6日衛兵宣誓式の燭台
・Filet of Beef Tagliata
 牛フィレ肉のイタリア風たたき
・Bavarese Yogurt & Strawberry Coulis
 ヨーグルトババロアにストロベリーソース

 Swiss Guard in Service to the Popes/スイスガード傭兵から法王へ捧ぐ 
Pope Francis/フランシスコ(266代教皇、在位2013~2025、原国籍アルゼンチン
・Argentine Empanadas on Pepper Salad
 アルゼンチン風エンパナーダをパプリカサラダに乗せて
・Colita de Cuadril
 コリータデクアドリル(牛臀部肉のアルゼンチン風豪快焼き)
・Dulce de Leche
 ドゥルセデレチェ(ミルクキャラメルクリーム)
・Alfajores
 アルファホレス(ドゥルセデレチェ挟みビスケット)
・Pizza a Caballo
 ピッサアカバーショ(ヒヨコマメクラッカー乗せアルゼンチン風ピザ)

Pope Benedict XVI/ベネディクト16世(265代教皇、在位2005~2013、原国籍ドイツ
・Regensburg Sausage Salad
 レーゲンスブルク(ドイツの一都市)風ソーセージサラダ
・Suckling Pig and Dumplings
 乳飲み豚のローストと付け合わせのすいとん風団子
・Kirschmichel
 キルシュミヒェル(サクランボプディングケーキ)

Pope John Paul Ⅱ/ヨハネパウロ2世(264代教皇、在位1978~2005、原国籍ポーランド
・Pierogi
 ピエロギ(ポーランド風餃子)
・Polich Fleischvogel — “Birds in Red Nest”
 ポーランド風フライシュフォーゲル(サイの目切りの具を薄切り牛肉で巻き焼き)“赤い巣ごもり風”仕立て
・Apple Kuchen
 アップルクーヘン(リンゴのタルト)

 Personnel of the Vatican/バチカン職員 
・Wiener Schnitzel
 ウィナーシュニッツェル(ウィーン風薄いカツ)
・Gnocchi al Vaticano
 バチカン風ニョッキ(すいとん風パスタ)
・Saltimbocca alla Romana
 ローマ風サルティンボッカ(牛肉と生ハムの重ね焼き)

 Officers of the Guard/傭兵の役人に 
・Cheese Torte Italiana
 イタリア風チーズタルト
・Veal in Cream Sauce
 仔牛のクリームソース
・Lamb & Mediterranean Vegetables
 子羊と地中海の野菜
・Risotto al Vino Rosso
 赤ワイン仕立てのリゾット
・Spaghetti Frutti di Mare
 海鮮スパゲティー
・Papet Vaudois
 パペヴォードワ(ねぎとじゃがいものくたくた煮にキャベツソーセージ乗せ)
・Braised Lentils
 レンズ豆煮込み

 Life in the Swiss Guard/スイスガード(傭兵)の生活 
・Polenta Towers & Chicken
 ポレンタ(トウモロコシ粉マッシュ)にチキン乗せ
・Scaloppine di Vitello alla Panna
 牛薄切り肉のクリーム仕立て
・Braised Pork Roast
 ローストポーク
・Monkfish & Monk’s Beard Greens
 アンコウとオカヒジキ風野菜
・Cod Fish Borgo Pio
 ボルゴピオ(ローマ市内のバチカン付近の通り名)風タラの料理

 Uniform of the Guard/傭兵の制服 
・Chocolate Amaretto Cake
 チョコレートアマレットケーキ
・Pistachio Torrone
 ピスタチオのトゥロン(ヌガー菓子)
・Tiramisu
 ティラミス

 Patron Saints of the Guard/傭兵の守護聖人 
・Martinsgans — St. Martin’s Goose
 マルティンスガンス(聖マーティンの日のローストダッグ)
・Veal Piccata Milanese
 ミラノ風薄切り仔牛肉のピカタ
・Swiss Omelet with Herbs
 ハーブ入りスイス風オムレツ

 Holidays at the Vatican/バチカンの祝日/祝事 
・Chocolate Gingerbread
 チョコレートジンジャーブレッド
・Grittibanze
 グリッティベンツ(人形型パン)
・Beefsteak Cafe de Paris
 パリのカフェ風ビーフステーキ
・Rabbit & Almond Sauce
 ウサギ肉のアーモンドソース

 Special Places of the Vaticanバチカンの特別な場所 
・Minestrone
 ミネストローネ(豆や野菜のスープ)
・Tomato Soup Fiorentina
 フィレンツェ風トマトスープ
・Eggplant Mozzarella
 ナスとモッツァレラチーズ

 Museums of the Vatican/バチカン美術館/博物館 
・Lasagna alla Mamma
 家庭料理風ラザニア
・Crespelle with Leek & Truffle Filling
 リークネギとトリュフ入りクレープ
・Gnocchi alla Romana
 ローマ風ニョッキ(すいとん風パスタ)
・Fettuccine Trastevere
 トラステベレ(ローマの一地名)風フェットゥチーネ(平打ちパスタ)
・Campanelle & Sun-dried Tomatoes
 カンパネッレ(ショートパスタの1つ)と日干しトマトのソース
・Penne Pasta alla Grappa
 ペンネパスタ(ショートパスタの1つ)のグラッパ(蒸留酒の1つ)仕立て
・Conchiglioni al Forno
 コンキリエ(ショートパスタの1つ)のオーブン焼き

 Castel Gandolfo, Frascati & Anguillara/カステルガンドルフォ、フラスカティ、アンギララ(バチカン近郊の地名) 
(カステルガンドルフォはバチカンで消費する野菜の農園がある)
・Chicken Arrabbiata
 鶏肉のアラビアータ(スパイシートマト煮)
・Farfalle Albano
 ファルファッレ(ショートパスタの1つ)のアルバーノ(ローマ近郊の地名)風
・Risotto with Smoked Eel
 スモークウナギのリゾット

 Favorites of Rome/ローマの美味しいもの 
・Spaghetti alla Carbonara
 スパゲティーカルボナーラ
・House Ravioli
 家庭料理としてのラビオリ
・Suppli — Roman Rice Balls
 スップリ(ローマ風ライスコロッケ)
・Insalata Di Gamberi
 エビのサラダ
・Fusilli alla Califfa
 生ハム仕立てのフジッリ(ショートパスタの1つ)
・Risotto & Artichokes
 リゾット&アーティチョーク

 Basic Recipes/基本的なレシピ 
・Doughs & Dumplings
 小麦粉を練って作る生地
・Potatoes & Kluski
 じゃがいもとクネーデル(じゃがいも団子)
・Risottos & Spaetzle
 リゾット(粥)とシュペッツレ(卵麺)

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ここから見出されたこととして、バチカン料理は、

  1. 行事、祝事、組織執行の料理
  2. 教皇の母国の料理
  3. イタリア料理
  4. スイスガードの料理(スイス料理)
  5. 職員のふるさとの料理(周辺国の料理)
  6. といった料理で構成されます。周辺国の料理を挙げるとキリもまとまりもないから、上4つまでを柱として押さえればよい。

    そしてここにもうひとつ、

  7. バチカン国内で観光客に提供される料理
  8. を追加すると全体像が完成します。
    これなら内外揃ってバチカン料理を包括できるのです。

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この写真は、バチカンを衛るスイスガードです(12月下旬に撮影したため、ミケランジェロデザインの素敵なユニフォームの上にコートを羽織っています)。

スイスガード

・・・ちなみにこの本、バチカンに行ったら絶対買おうと思って、実際にバチカンまで行ってきたんだけど、バチカン市国内の本屋に売っていなかったんですよね。なぜだろう。観光客や参拝者に絶対売れると思うのにな (^^)

※本記事は2017年に初回執筆したものですが、2025年に新ローマ教皇にレオ14世が選出されたことを受けて記事改筆しました。


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本記事、レシピ内容及び写真の著作権はすべて管理人:松本あづさ(プロフィールは≫こちら、連絡方法は≫こちら)にあります。読んでくれた方が実際に作って下されば嬉しいですし、料理の背景やTipsなど、世界の料理情報の共有を目的として、大事に作成しています。
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