エジプト料理

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  • 豆のおかず」の項を新設しました。(今後の投稿は、魚のおかず、ノンアルコール飲料などを予定しています)。

【基礎情報】

国名:エジプト・アラブ共和国Arab Republic of Egypt、首都:カイロ、ISO3166-1国コード:EG/EGY、独立国(1922年英国より)、公用語:アラビア語、通貨:エジプトポンド

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【地図】

エジプトはアフリカ大陸と中東のつなぎめにあります。西にリビア、南に北スーダン、北東にイスラエル(パレスチナ)と接しています。地中海を渡ってギリシャトルコ、キプロス、紅海を渡ってサウジアラビアがあります。

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◆古代文明の時代を継承する、中近東の中心たる食文化

「エジプトはナイルの賜物」。エジプトは豊かな水の恵みから四大文明の1つを形成しました。文明の中心ゆえ、他地方との文化と人の行き来が盛んで、広い目で見れば、イラク方面やモロッコ方面と似た料理も存在します。しかし、国土の大半が砂漠で周辺の国とも砂漠で隔絶されたため、エジプトは、他のどの国とも同一でない、独自に発展した食文化を有しています。

エジプト料理
路上屋台の朝食。フールトルシーアエーシサラタバラディ。(撮影地カイロ)

サウジアラビアの上空を経てエジプトへ向かう飛行機から大地を見下ろすと、サウジは一面の砂である一方で、エジプトは、ナイル河沿いに豊かに緑が茂っていて、その差に驚愕を覚えます。エジプト、メソポタミア(イラク)、インダス(パキスタン)、黄河(中国)の四大文明は、豊かな水の恵みを受け、農耕とともに栄えました。農耕によって定住ができ、生産力が増え、生産物の取引きから格差社会が生まれ、そういうところに文明は興ったのです。これは遊牧民社会との大きな違いです。

エジプトは、メソポタミア文明(今のイラク)と地理的に近いこと、互いが大文明圏であること、7世紀にイスラム教が興り同じ宗教を信仰することなどの要素から、文化と人の行き来が盛んでした。だから、エジプト料理は、イラク周辺国いわば中東料理と共通するものがたくさんあります。しかし「イラク料理とエジプト料理は同じか?」と問われたら当然違う。エジプトは隣国と砂漠で断絶されていて、独自の発展をしてきたためです。

また、エジプトとマグレブ(※)も同じ北アフリカに区分されるものの料理は同じとは言いがたい。広大なリビアが砂漠ゆえエジプト-チュニジア間を隔離しています。例えばマグレブの料理はクスクスに支えられていても、エジプトはそうじゃない。

※マグレブ:狭義にはモロッコ、アルジェリア、チュニジア

このようなことからも、エジプトは、各方面に文化をもたらし、多方面から文化を取り入れながらも、独立した食文化をもつ国になったと言えるのです。そういったことを前提にして、それではエジプト料理の各論を見ていきましょう。
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主食 Staple

アラブの国々のパンといえばたいてい薄焼きのパンでホブズと呼ばれることが多いですね。でもエジプト人はその薄焼きパンを「ホブズと言っても理解できるけれど、僕らの言葉ではアエーシと言う」と言います。エジプトのアエーシの多くは、平たく成形した生地を高温のかまどに入れて瞬時に表面を焼くため、中の蒸気が逃げずに膨らみ、中に空洞ができます。イスラエルのピタ(ピタパン)と似ています。

アエーシは2つの食べ方ができます。1つはちぎってディップやピューレをすくって食べるもの。ディップにはフール(ゆでたソラマメを潰したもの)、タヒーニ(練りごまとレモンとにんにくを混ぜたもの)、ババガヌーシュ(焼きナスのピューレ)があります。

アエーシのもう1つの食べ方は、半分に切ってポケット部分に具を入れるピタパンサンドイッチ風。イスラエルでもよく見られる食べ方です。先述のタヒーニババガヌーシュも具になりますし、トルシー(イラクやイランでも食べられる大根やにんじんの漬物、エジプトではミーハレンとも呼ぶ)やゼイトゥーン(オリーブ)に、コフタ(ひき肉団子)やターメイヤ(ソラマメコロッケ)などのおかずを入れたりもします。

このように、サンドイッチ文化が強いのはエジプトの1つの特徴のようにも思います。またイスラエルはエジプトと接しています。イスラエル人(ユダヤ人)は、イエスキリストよりずっと前の時代にエジプトで使役され、その後その子孫は帰還しました。エジプトから帰還したユダヤ人はエジプトの食生活を送っていたのだから、当然イスラエル料理の一部はエジプト料理ですよね。イスラエルにおいてもピタパンが主体なのは、その一端ではなのではないかと思われます。

またエジプトではオルズ(米)もよく食べられています。細い麺と油を入れて炊いた日本米(ジャポニカ種)がポピュラーです。
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豆のおかず Beans

エジプト料理といえば、やはり、豆です。保存がきくタンパク質源と言えます。エジプトを代表する豆料理はフールです。フール自体が豆という意味ですが、単にフールといえば、主にソラマメを蒸気を封入しながら水煮にし、刻んだ玉ねぎや白チーズを薬味にふりかけ、たっぷりの油をかけて食べるものを指します。この料理は、エジプトや、昔エジプトだったスーダンで高頻度で食べられていますが、イラク・レバント(※)地方のアラブ料理ではあまり登場しません。エジプトの朝食時にはフールアエーシ(薄いパン)をセットで販売する露店が数多く登場します。

※レバント:狭義にはシリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを指す。

エジプトを代表する他の豆料理にはターメイヤがあります。豆を潰してからパン粉なしのコロッケにしたものです。マリやナイジェリアのアカラ、シリアやレバノンのファラフェルと同じ料理ですが、ところ変われば豆が変わり、アカラは黒目豆、ターメイヤはソラマメ、ファラフェルはヒヨコマメで作られることが多いです。街角サンドイッチの定番の具です。
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乳製品 Dairy Products

エジプトは国土のほとんどが砂漠です。通常、砂漠が多くて遊牧民が住む国は乳製品が重要な食材になることが多いのですが、それでもヨーグルトやチーズが主体になる料理が少ないのはエジプトの特徴です。これは古代から農耕型社会が築かれ、エジプト人の大半は遊牧民ではないことがこの特徴に表れています。代表的な乳製品にはラブナ(白い柔らかいチーズ)があります。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食類】
  • アエーシ・・・薄パン
  • オルズ・・・米、ごはん
【肉のおかず】
  • コフタ・・・ひき肉団子
【野菜のおかず】
  • サラダバラディ・・・みじん切りサラダ
  • ゼイトゥーン・・・オリーブ
  • タヒーニ・・・練りごまディップ
  • トルシー・・・漬物
  • ババガヌーシュ・・・焼きナスのピューレ
  • ミーハレン・・・漬物
【豆のおかず】
  • ターメイヤ・・・ソラマメを潰して揚げたもの
  • フール・・・ソラマメの水煮。
【乳製品】
  • ラブナ・・・白チーズ

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