レバノン料理

[last update 2015/01/05]

+++新着+++
・地図を新グーグルマップにしました。国境線が分かりやすいので好きです。


基礎情報レバノン共和国Lebanese Republic、首都ベイルート、ISO3166-1国コードLB/LBN、独立国(1943年フランスより独立)、公用語アラビア語。通貨レバノンポンド

◆アラブ人ムスリムとアラブ人クリスチャンの食文化

レバノンは小国ですが、隣は大国のシリア、イスラエル/パレスチナです。

レバノンは中東で最も小さな国の1つで、面積は日本の岐阜県弱くらいです。アラブといえばイスラム教徒が主体となる地域ですが、地中海東岸レバノンは海洋民族フェニキア人がおり、ローマとのつながりから昔からキリスト教徒も多い土地でした。レバノンは、第二次世界大戦の頃、イスラム教徒主体のアラブの土地の中でキリスト教徒が多い地域として、欧州が恣意的に独立へ導いた国です。そうしてできたイスラム教徒とキリスト教徒の混成は、内戦を起こし、歴史を変え、特徴ある食文化を形成し、今のレバノン料理を語る大事な土台です。

中東のアラブ世界には、アラブ=ナショナリズム、汎アラブ主義といった、アラブ諸国を統合した国家を構築しようとする動きがあります。こうした主張の背景の一つには、現在のアラブ世界の国家の枠組みや国境線が、20世紀になって西欧列強によって人為的に形成されたことがあります。

「アラブ人」の定義(の一つ)は「アラビア語を母語とする人々」です。レバノンの北と東に隣接するシリアも、レバノンの南のイスラエル(イスラエルが領土を主張するパレスチナの地)も、ヨルダンもイラクもサウジアラビアも、主にはアラブ人が住んできた土地であり、文化や生活様式を同じくしてきました。

すなわち、レバノン料理の基礎はこれらの近隣国と共通したアラブ料理です。ホブス(薄いパン)が主食で、ホブスをちぎって、美味しいペースト類をすくって食べます。ホムス(ヒヨコマメとゴマのペースト)やババガヌーシュ(焼きナスのディップ、別名ムタバル、シリア方言ではムタバルと呼ばれる傾向が強い)は、普遍的な2大ペーストだと思います。

なお、日常的なアラビア語では「母音を省略して子音で文字を綴る」ため、上の「ホムス」も綴りは「حمص」すなわち「s m h」です。右から読むのですが、地域や人によって「ホムス」「ハモス」「ホモス」「フムス」・・・発音は様々で、カタカナ表記がいっぱいできてしまいます。正当アラビア語での読み方は「ヒミス」だそうですが私はこう発音する人に会ったことがありません。

アラブやトルコって作り置きの料理が多い。いっぱい作るから美味しい。だから小皿料理が多くなる。・・・もともとイラクやシリアなどの中東アラブ地域は国境線で分けられていませんでしたし、「肥沃な三日月地帯」として作物が豊かに実りました。食材が豊富で豊かだから、料理の数が多くなる。それが今のレバノン料理の代名詞として語られる「メゼ」(数々の小皿料理)なのだと思うのです。「メゼ」は日本語で前菜と訳されることが多いようですが、洋風料理のオードブル的な前菜とは感覚が違う。ホカホカが出てくる中国の点心とも違う、メゼとパンで充分食事になるので必ずしも「前菜」ではない、みんなでちぎったパンを持つ手を伸ばして同じ皿のおかずをつっつきあうこの文化は・・・。ということで私は、メゼはメゼということにしています。

その他メジャーなレバノン料理(アラブ料理)としては、キッベ(ひき割り小麦のコロッケ)、ファラフェル(豆コロッケ)、タブレ(クスクスや引き割り小麦で作るパセリたっぷりサラダ)、ファスーリャ(煮豆)、バミヤ(オクラ、トマト煮が多い)などがあります。全体的に食材の数は多く、オリーブやオリーブオイル、レモンやゴマをたっぷり使った、香辛料やハーブを豊かに使う料理の数々という印象です。あとは豆!!豆を甘く炊く日本とは大違い、香辛料やトマトと一緒に豆が素晴らしく美味しい料理になって登場するのが中東アラブ料理です。豆嫌いの日本人も中東に行くときっと豆好きになります。中東の豆料理はベジタリアンの多い欧米でも人気が高まっています。

オスマン帝国が東欧から北アフリカまで広大な版図を広げていた頃、オスマン帝国の中でも文化的・経済的に花開いていたのは、ダマスカス(今のシリアの首都)やベイルート(今のレバノンの首都)でした。第一次世界大戦でオスマン帝国敗戦後、領土は欧州列強により分割、その後、キリスト教徒の多いレバノン部分が更にシリアから分離され、1943年、レバノンは第二次大戦中にフランスから独立を果たしました。ベイルートは中東のパリとも呼ばれる花の都。もともとキリスト教徒が多い地域の独立だったため、ヨーロッパ(特にフランス)との関係の深さを背景に、未曾有の繁栄をみせたそうです。

しかし、アラブ人にはイスラム教徒が多いわけで、そんな中でのキリスト教徒優遇は宗教的緊張であり、レバノン内戦が勃発。シリアはイスラム教勢力を支援し、イスラエルはキリスト教勢力を支援し、1990年代まで約20年間の激しい内戦が続きました。更にレバノンにはイスラエル建国(1948年)以降、おびただしい数のパレスチナ難民が流入しており、レバノン内戦中にイスラエル軍がそのパレスチナ難民大虐殺など・・・、とにかく周辺国にも翻弄されたレバノン国内では戦火が絶えず、血みどろの連続でした。

戦争ばかりしている国では、食文化の発展は遅れるものです。なのに、レバノン料理には世界5大料理や10大料理とも言われる「輝かしい」ステータスさえあります。それはなぜなのでしょうか。私は、それは、近隣のアラブ諸国にはないキリスト教徒の多さにあるのではないかと思っています。分かりやすく言うと「欧米のご贔屓」といいますか。

現在レバノン国民は95%以上がアラブ人です。キリスト教徒は40%、イスラム教徒は55%です。そういう国なのに大統領にはキリスト教徒が就くという決まりがあるそうで・・・。そんなこと決めてるから火種が尽きないのでは?って突っ込みたくなりますが・・・。

ともあれ政治上位にキリスト教徒が立てば、イスラム教ではタブーとされる酒が流通します(だからレバノンにはワイナリーがたくさんあります)。そして欧州との関係が深くなります。だからフランスひいては欧米にとって「ご贔屓」となるレバノン料理は人気ある外国料理となり、世界的地位を確立していったと考えられます。もう1つの理由は、レバノンの人口増加やレバノン内戦により世界中に流出していった無数のレバノン人(レバノン難民含む)です。彼らが世界中でレバノン料理を有名にしたということも、大きな要素ではないでしょうか。


純全たるアラブ料理にワインの組み合わせも、レバノンでは普通。(撮影地ベイルート)

レバノン料理を語るなら、
1)土台はシリア、パレスチナ、イラク、ヨルダンなどと共通するアラブ料理。
2)内戦やイスラエルとの抗争ゆえ伝統的なアラブ料理が今も保存されていること。
3)キリスト教徒の強い影響とそれに基づく欧州とのつながり。
4)世界中に離散したレバノン人やレバノン人難民が世界にレバノン料理を根付かせたこと。
5)更にレバノンの北の北にはトルコがあるのですが、今のレバノンの土地は先述のように昔オスマン帝国領土だったので、トルコ料理との共通点もある(トルコ料理は元がアラブの影響を受けているという点にも拠ります)。

と、こういうことを知っていればよいかと思います(言い続ければ、アルメニア人難民が・・・ギリシャ・キプロスとの海洋的関係・・・、クルド人地域の拡張が・・・、尽きないのですけどね)。

今、レバノンの首都ベイルートはきれいなところを歩くとピカピカです。ちょっと外れると未だ弾痕の残る建物もありますが、ともあれ、20世紀後半の血みどろの内戦が終わって、21世紀になっても廃墟だらけだったベイルートに、やっとピカピカが増えています。ピカピカモスク(イスラム寺院)や教会、新築ショッピングモール、きれいな噴水、などなど。・・・やっとやっと、再建が、形になってきました。

ただ、これを書いている今日(2013年5月)も、レバノンにミサイルが打ち込まれました。隣のシリアも激しい内戦中だし、まだまだ危険で不安定な要素がいっぱいです。

こんな状況ではレバノンを旅することは不安になるかもしれません。でも日本にもレバノン料理屋はたくさんあります。そんなときには、伝統的アラブ諸国料理を楽しみ、レバノンらしさとして「ワインと合わせたアラブ料理」を楽しむのも、レバノンの特徴的な部分を理解する一興ではないかと思います。山あいの小さな大国の平和到来を願いながら。

◆レバノンに行ったら、これ食べよ♪

【主食】
・ホブス・・・薄焼きパン

【豆料理】
・ファスーリャ・・・白インゲン。トマト煮などになって出てくる。
・ファラフェル・・・マッシュした豆のコロッケ。香菜などのハーブや香辛料が絶品。
 ┗ファラフェルサンド・・・ファラフェルと野菜を薄パンで巻いたもの。
・フール・・・ソラマメ。水煮をつぶして油をかけてディップになったりする。
・ホムス・・・ヒヨコマメとゴマのペースト、ディップ。

【野菜料理】
・タブレ・・・ひき割り小麦やクスクスにハーブみじん切りをどっさり混ぜた、お腹にたまるサラダ。
ババガヌーシュ・・・焼きナスのディップ。
・ファトゥーシュ・・・グリーンサラダ。古いホブスをパリッと割ったのが乗る。
・ムタバル・・・ババガヌーシュと同じ。
・メゼ・・・作り置きのおかずを小皿に取り分けて幾つか提供する。
・ワラクイナブ・・・肉や米をブドウの葉で巻いたもの。

【肉料理】
・キッベ・・・小さなラグビーボール型の肉コロッケ。引き割り小麦もよく使う。

【その他】
・ラブネ・・・ヨーグルト。煮豆にかけたりディップにしたり。

【デザート】
・クナファ・・・クリームチーズの甘いデザート。
・ムハラビーヤ・・・ローズウォーター仕立ての米粉プディング。

【飲み物】
・ワイン・・・レバノン産を是非。現地ワイナリーの無料試飲がおすすめ。


[kuwakuwa]

◆Link

レバノン世界のお金

本記事、レシピ内容及び写真の著作権はすべて管理人:松本あづさにあります。読んでくれた方が実際に作って下されば嬉しいですし、料理の背景やTipsなど、世界の料理情報の共有を目的として、大事に作成しています。
出典URL付記リンクを貼れば小規模な範囲でOKなこと】
・ご自身のサイト、ブログ、FacebookやTwitterにおける情報の小規模な引用や紹介。
事前連絡出典明記をお願いします】
・個人、団体、企業等の活動や出版等で、当サイトおよび当管理人のもつ料理レシピや写真を活用・使用したい場合。
事後連絡でもよいのでお寄せ下さい(楽しみにしていますので)】
・小学校や中学校の宿題や課題で当サイトを活用してくれた生徒さん。
ご遠慮ください】
・大々的なコピペや読み込み、出版物への無断転載。
・営利目的や利益が生じる手段での無断使用。
※免責事項:上記の引用に基づいて万が一損失・損害がありましても、対応はユーザーご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。