マチェルジョルを、やっぱりサラダ油で作った日の話。

うち、マスタードオイルがあるんですけどね。

マスタードオイル

「ベンガリのカレーを作るならこれじゃなくちゃ♪」(フフンフン♪)と思って買ったんですけどね。

私、バングラデシュが大好き。何回行ったかな、3回は行ったぞ。ダッカだけじゃなくて、ダッカからアガルタラへ抜けたり、ダウキから入ってシレットに滞在したり。ベンガル人の西側部分も見たくて、その次に渡航したときはインドのコルカタにも行きました。なぜならば、ベンガル人は宗教によって東と西に分かれ、東がバングラデシュ、西がインドのコルカタ州です。

バングラデシュは河川網が張り巡らされたような国なので、市場の魚売り場は鮮魚にあふれ、お店でも魚カレーはよく提供されます。ともあれベンガル人の地域に行ったら、やっぱり魚のカレーを食べたいものです。ベンガル語で魚のカレーはマチェルジョルと言います。でも魚食いの地域で「お魚ください」と注文しても、「で、何の魚?」となるわけで、「ローフ」や「イリッシュ」のように、1つ1つに具体的に名がついているのは、流石、魚食いの地域の証拠です。

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お店では、各地で調理するところを見せてもらいました。ホームステイした家のママには、ベンガル人のホームクッキングも教えてもらいました。

もちろんスーパーや市場に行けばマスタードオイルは売っているんですけど、私が見学したところ全部で、料理に使うのはサラダ油でした。「その油は何?」って明るく聞いたら「キャノーラ(※)よ」って明るく答えてくれます。

※ざっと言うとキャノーラ油はナタネ油で、ナタネ油はサラダ油の主要成分の1つ。

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いまだに「ベンガリのカレー」のレシピに堂々とマスタードオイルと書く本やネット記事もあります。私も「ベンガリのカレーを作るならこれじゃなくちゃ♪」(フフンフン♪)と思ってマスタードオイルを買った身ですけど。まあその目的の1つには「マスタードオイルがどれほど辛いのか」を自分の舌で確認したい気持ちがあったので、それは叶えられた(※)ので良かったのだけど。

※マスタードオイルには辛味はありませんでした。

あのまろやかさは結構好みで、なくなってしばらくすると寂しくてまた買ったりしていますが、しかし今思うと、あのとき「ベンガリのカレーを作るならこれじゃなくちゃ♪」(フフンフン♪)と思ったその瞬間にベンガルのカレーを作っていなくて良かったなぁと。

だって、私が旅をして知った「今を生きるベンガリ」の調理風景をもし当時知っていたら、「ベンガルのカレーだからレシピはマスタードオイルですっ(キラッ)」と書く自分が恥ずかしかったと思う。だってそれってステレオタイプに惑わされているだけじゃない?

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もしスイス料理とかアルプス料理を作るとしましょう。そこは海のない山岳地域です。じゃあ、塩は「アルプスの岩塩」を使わなくちゃダメなの? ううん。使ってもいいけど、でも今は、アルプス地方の一般家庭だって海の塩や工業生産の塩を使っているんだもの。今普通にある塩を使うことには疑問はない。

もし日本料理を作るとして、かつおだしをとるとして、じゃあ、鰹節本枯節(かれぶし)をカンナ刃で削らなくちゃダメなの? ううん。そうしたら絶品に美味しいのだろうけど、現代の日本では、工場で削られてパックに入ったかつおぶしか、かつおぶしじゃない偽物(かつお削り節)か、顆粒のほんだしなどを使うあたりが一般家庭の和食の作り方ですよね。和食を作るには枯節を削らなくちゃだめ? ううん。やってもいいけど、パックの削り節でも顆粒のほんだしでも、今普通にあるものを使うことには疑問はない。それが私たちの日常料理なら、今はそれでいい。

もし外国で一般家庭料理の英語レシピ本が、「Japanese cooking は dried bonito shaving シマース!」と堂々と書いてしまっていたら、それを見て私はどう思うだろうか。やはりズレを感じざるを得ない。外国ではパックの削り節や顆粒のほんだしはまだ入手できるけど、鰹節本枯節を取り扱う一般人向けの店は流石に私も見たことがない。その著者の思い入れや論旨はそれでいい。だけど、「AだからBじゃなくちゃ」という内容が現実離れしている場合、それを人に伝えたらウソになるんだよね。

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だから、日本においても、「ベンガルのカレーだからレシピはマスタードオイルで」と紹介するのはやめておこうと思ったんです。それを人に伝えたらウソになるって思って。優しい食堂のおじさんもベンガル人。ホームステイでいっぱいお話ししてくれたベンガル人のママ。今を生きるベンガル人との素敵な思い出がたくさんあって、あの時の料理メモにはキャノーラって書いてあって。「あのときの味で作ろう」と思ったらやっぱりキャノーラ油のほうを使いたくなったのですから。

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この記事のタイトルは、「マチェルジョルを、やっぱりサラダ油で作った日の話」としました。

マチェルジョル

それでいいよね。そしてそのほうが、日本の多くの家庭で作ってもらいやすくなります。なおマチェルジョルでは、魚を素揚げするときと、玉ねぎをあめ色に炒めるときに油を使っています。

うち、マスタードオイルがあるんですけどね。昔、「ベンガリのカレーを作るならこれじゃなくちゃ♪」(フフンフン♪)と思って買ったんですけどね。・・・馬鹿だったのかな(笑)、可愛かったのかな(笑)、頑張っていたのかな(笑)、どーでもいいけど(笑笑)。

でも、これからもステレオタイプに踊らず、現地で学んだことを活かして、世界中で出会った人との思い出を我が家で再現して・・・。まさしく「地に足をつけて」生きていこうと思います。今日はそんな日記でした(*^_^*)



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