タイ料理の茶碗蒸し「カイトゥン」は「卵・燉」。

タイの茶碗蒸し「カイトゥン」(ไข่ตุ๋น)。

カイトゥン

この「トゥン」は中国語の「炖」に似ているなと思ったことから、今回の検証が始まりました。その結果は、予想通りだったのです。

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タイのムクダハンMukdahanはタイ東部のイサン地方にある、ラオス国境に近い町です。イサン地方は、個人的にはタイ美食地方とも呼ぶほど、美食に名声が高い地域です。

この日、私は、カンボジア北部のアンロンベンからムクダハンへ移動しました。カンボジア側チョーム国境を越え、タイ側サーンガム国境を越え。この国境越えは、公共トランスポートなし、タクシーも白タクもなし、バイクや自転車を持たない旅行者が頼る手段はヒッチハイクのみ。しかしかなりの距離をヒッチハイクで移動することができ、両国の最果てを見た旅となりました。

アンロンベンの町。町の中心でさえ、ろくな施設もない辺境だった。

アンロンベン

でも私は、首都や大都市よりも、人々や暮らしが素朴に垣間見れるこういう途上地域の旅が大好きです。
– the last stronghold of the Khmer Rouge –
-そこは、クメールルージュの最後の本拠地-

「Pol Pot’s was sentenced here」(ポルポトはここで実刑判決を下された)の看板があった。

アンロンベン

「ポルポトの墓はこちら」の案内板も見えました。ちなみに彼の最後は、自殺説のほか元部下による毒殺という説があります。残虐なカンボジアの歴史を作った彼の、悲しい最後の物語。

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ムクダハンに夜着いて、夕食を摂ろうと食堂に入ったら、皆さん美味しそうなものを食べています。目立ったのが丼サイズの茶碗蒸し。複数の人が注文していたから、そういうのって絶対美味しいんですよね。そして注文。食べて感激。美味しい!!

料理名は「カイトゥン」(ไข่ตุ๋น)です。

カイトゥン

卵がふるふる♪ 美味しい♪ それだけでなく、この料理にはもうひとつ、「驚き」がありました。味はポークブイヨン、具には豚ひき肉や春雨、味付けにはナンプラー(魚醤)、トッピングはカニカマやパクチー。ところ変われば茶碗蒸しも随分と味わいが変わるものです。そしてそれは私には大変美味しく感じられ、新しい味に、心がわくわくしてきました。いやー、旨いのなんのって。

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さて、タイの茶碗蒸し「カイトゥン」(ไข่ตุ๋น)。
カイは、タイ語では鶏と卵の意味があって、綴りが違うから発音が違うんだけど、日本人の耳にはどっちも「カイ」に聞こえてしまいます。この茶碗蒸しの場合はカイ(ไข่)は卵を指します。鶏のカイは綴りが「ไก่」で、あまり口から空気が出てこないようにカイと発音します。卵のカイ(ไข่)は空気を発しながらカイと発音します。でも日本語ではどっちもカイ。

で、「トゥン」(ตุ๋น)という音からは、どうしても中国の調理法を思い出してしまうんです。中国の料理法は漢字一文字で表されるものが多い。炒(チャオ)は炒める、煎(ジェン)は両面焼きみたく、・・・ということは、「トゥン」は「炖」を指すのかな?と思ったことから、今回の検証が始まりました。

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Google検索「ไข่ตุ๋น 蛋」
「ไข่ตุ๋น」だけで検索してもタイ語の説明ばかりでてきて、中国の漢字との対応が出てこないので、卵を意味する「蛋」の字を加えて検索しました。
ไข่ตุ๋น 燉蛋 Dùn dàn
ไข่ตุ๋น. (kâi-dún) 燉蛋
などの結果を得ました。
つまり、ไข่ตุ๋น=カイドゥン=燉蛋=ドゥンダン。よって、カイドゥンのドゥンは燉

・・・うーん。でも、私は通算100日くらい?中国を旅して、食べた全料理名をメモしてきているのだけど(相当マニアック)、「燉」の文字を書いたことが、多分ない。

國際電腦漢字及異體字知識庫(≫こちら

あった。やっぱり「炖」だ「炖」は「燉」を簡単にした文字だと書いてあります。

カイトゥン

「炖」はとろ火でとろとろと煮込むような調理法です。

茶碗蒸しも、強火でガーっと加熱すると「ス」が入りますから、沸点には近いけれども、沸点よりも温度が低い状態を長く保つことで、卵液がなめらかに凝固していくのです。まさに茶碗ごと「炖」(トゥン)の状態に置くのです。

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以下、私の推測です。
卵はきっとタイに昔からあった。だからタイ語で「カイ」。

だが、「炖」(トゥン)の調理技法は中国人あるいは国内華人がもたらしたもので、タイにとっては新語。だからここは中国語の読みを使って「トゥン」、その音にタイ文字を充てて「ตุ๋น」(トゥン)。

そうして、卵液をとろ火で調理する料理が「カイトゥン」(ไข่ตุ๋น)になったのだろう。

地元の言葉と新語が組み合わさることはよくある。「牡蠣フライ」も「ごぼうサラダ」も「こんにゃくゼリー」も「うなぎパイ」もそうです。これらの単語は、きっと皆、当時は新しい料理として名付けられたと思う。だからタイの「カイトゥン」(ไข่ตุ๋น)も、その名称が作られた当時は、新しい料理だったということなのでしょう。

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タイ料理には中国の料理に通じる料理が多数あります。もともと華僑(中国系移民)が多い国で、タイでよく見るクイッティアオ(米麺料理)は中国潮州の粿條(クェティオ)であるなど、中国から運ばれた料理が定番料理となった例もあります。タイの裕福層は華人が多く、タイの国王に華人が就いた時期もある。タイは、私たちが思う以上に、内側からも文化が中国化してきた国でもあるのです。

ということで、今日の調べもの&学習も、無事に結論に至りました。

タイ料理の茶碗蒸し「カイトゥン」は「卵・燉」、燉を簡体字で「卵・炖」。

「燉」や「炖」は、弱火でじっくり加熱するような調理法(※)。

※その他の意味もあるがここでは割愛。

卵液を容器に入れてじっくりじんわりと火を通す料理だから、日本語に置き換えると「茶碗蒸し」となります。

カイトゥン

茶碗蒸しは、良いレシピに忠実に一度作れば、コツも分かり、簡単に作れるようになります。

ほら♡ 私も自宅でカイトゥン大成功です♡

カイトゥン

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