最高です。素晴らしいチーズフォンデュのコツをすべてここに掲載します。

スイスを中心に、フランスやドイツイタリアやリヒテンシュタインなど、スイス山岳地帯で近いところで一般的に食べられているチーズフォンデュは本当に美味しい料理です。ぴよーんと延びるチーズがバゲットパンに絡まると、もう本当に最高!!

フォンデュ

ぴよーん。
そしてくるくるっと巻く、楽しい~(*^ ^*)

しかしフォンデュは、簡単に見えるのに失敗が多い料理でもあります。
主な障壁は、チーズが水と混ざらない(乳化しない)ことと、混ざったように見えても、食べている途中で分離してチーズ部分がかたまっててしまうことなど。特に後者はカードリング(curdling)と呼ばれる現象で、世界中の各国言語でフォンデュフォーラムを読んでも、必ず問題点として議題に上がっています。

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チーズ専門の研究者の方が見ると語弊を感じるかもしませんが、私が解釈している点として、大前提として、「チーズがとける」という意味には、「固体のチーズがやわらかい流体になる」(軟化または融解)と、「チーズという固相が液相と混ざる」(乳化または溶解)があります。とけるスライスチーズをトーストに乗せて柔らかいチーズを味わうのは「軟化または融解」の現象ですが、チーズフォンデュは乳化または溶解の現象です。

よって、安易に「とけるチーズを使えばチーズフォンデュが作れる」わけではなく、また、とけるチーズを使っても失敗例があるのは、軟化や乳化、融解や溶解の不認識が原因の1つです。温めれば融けるけれど溶けるわけじゃないってところでしょうか。軟化するけれど乳化するわけじゃないと言えるかもしれません。

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チーズフォンデュは美味しいけれど、日本はチーズの価格が高い国なので、本場のレシピを参考にしてチーズを買って作ろうとすると結構な材料費がかかってしまいます。私は、作れるなら、手頃な価格すなわち日本でよく出回っているチーズで作りたいと思いました。そして、作るなら失敗しないものを作りたいと思いました。食べるなら曳糸性(※)が高く、すなわちぴよーんと延びて、楽しいフォンデュの食卓にしたいと思いました。

※曳糸性:えいしせい。糸ひき性の意味。

* * *

そこで私は、以下の7点を調査、学修、研究、検討しました。
1)チーズの選択
2)フォンデュに加えるもの1:乳化剤
3)フォンデュに加えるもの2:懸濁剤
4)水分量の調整
5)作るときの注意
6)食卓の準備
7)食べるときの注意

私の自宅は一般家庭そのもので、大学や企業の研究室ではないから、調査や研究も家庭で出来る範囲の中で行うことになります。でも、大学院薬学研究科に2年間在籍して研究に従事し、大学や企業の研究室の測定レベルも知っているものが少なくないとも思っています。それを知りつつも、一般家庭でここまで成功した例があれば、多くの人のフォンデュづくりにも役立てると思っており、これはこれでひとつの「料理研究家」の仕事が実践できたとも思います。

ということで、見て!!この曳糸(えいし)性!!これが食事の最後まで続きます!!

フォンデュ

最高です。しかもこれ、どのスーパーでも売っているレベルの、安価な「とろけるチーズミックス」を使った成功例です。この記事ではこのような素晴らしいチーズフォンデュのポイントをすべてここに掲載しますので、興味と関心があれば、是非お読みください。

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1)チーズの選択

フォンデュ

本場スイスでのチーズフォンデュで使われるチーズのうち、日本で手に入りやすいのは、グリュイエールチーズです(写真中央)。それでも値段は高いです。ちなみにスイス現地ではフォンデュ用に細切りにされた状態でチーズが売られていますが、写真中央のような塊のチーズの場合、細切りにするという手間が生じます。

写真左は電子レンジ加熱するだけでフォンデュ風に食べられるチーズディップ。でもスイスでフォンデュを食べたときの味と全然違う。

写真右は今回私がフォンデュ材料として成功の目標とした、どのスーパーでも売っているタイプの「とろけるチーズミックス」です。グリュイエールチーズを使って実際に制作したフォンデュと、レンジ加熱だけで食べられるフォンデュの味を確認した上で、「とろけるチーズミックス」での製作が成功することを今回の目標としています。

2)フォンデュに加えるもの1:乳化剤

フォンデュ

最初に述べますが、洗剤化学の場合は乳化剤イコール界面活性剤(例:ドデシル硫酸ナトリウム)ですが、チーズフォンデュの場合は乳化剤イコール溶融塩です。

フォンデュとは、チーズの固形成分と加える白ワインの水分が乳化することによりなめらかになったものです。水と油なら界面活性剤を混ぜると混ざるようになるけれど、チーズの場合は、チーズタンパク質の大部分を占めるカゼインの分子間相互作用を変える必要が生じます。(単に温度を上げて流動性を高くするだけじゃだめってことです)。

「溶融塩」(ようゆうえん)はカルシウムキレート剤すなわち「カルシウムをひきはがす」役割をもちます。酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、クエン酸ナトリウム(主に三ナトリウム)、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどが実用化されています。

フォンデュ

図を解説します。大きな粒はチーズタンパク質の主成分であるカゼインです。よく見るともっと小さなカゼインの粒が、コロイド性リン酸カルシウムによって連結されています。つまりチーズの状態ではチーズタンパク質はばらけず塊になっています。溶融塩はカルシウムをひきはがす作用とナトリウムを付与する作用を併せもちます。つまり、カルシウムをひきはがすことでチーズタンパク質はバラバラになり、しかもナトリウムを付与することでカゼインは沈殿(水と分離すること)をせず、しかも高温にすることでバラバラになったチーズタンパク質はお互いが反発し、いつまでも水になじんだ状態になり、さらにチーズタンパク質の粒が油分や水分をなじませる作用(乳化作用)を有するため、チーズフォンデュが分離しにくくなります。

溶融塩を形成しうる成分のうち、普通の家庭にもありそうなものはクエン酸と重曹だと思います。これを2つ混ぜることでクエン酸ナトリウムを得て、「クエン酸がカルシウムをひきはがし、重曹がナトリウムを与える」という、フォンデュ成功への添加剤としようと思います。

なお、辛口の白ワインには天然の溶融塩として酒石酸塩が含まれています。天然のクエン酸を得るならレモン果汁が手軽です。これが、伝統的なフォンデュづくりにおいてチーズを分離させないために加えられてきた、昔からの知恵なのです。さらに言うと日本で市販されているピザ用チーズにはすでにある程度の溶融塩が添加されています。

フォンデュ

上の図は、チーズフォンデュ用のミックスチーズの概要(≫こちら)です。フォンデュパウダーとして酒石酸と重曹を加えています。これを私は、白ワイン中の酒石酸と、クエン酸と重曹で再現しているのです。

◆THE BUILDING BLOCKS OF FONDUE|SAVEUR(≫こちら
「A squeeze of lemon or splash of dry white wine helps balance the richness in fondue.」(レモン果汁やドライな白ワインは、フォンデュをしっかりと整えます。)

「The citric acid in lemon juice and the tartaric acid in dry white wine prevents heated cheese from curdling.」(レモン果汁に含まれるクエン酸と、ワインに含まれる酒石酸は、加熱されたチーズが分離凝固するのを防ぎます。)

<フォンデュに加えるもの1:乳化剤の結論>
1)ドライで辛口の白ワインを使う→天然の酒石酸を得る。
2)クエン酸を少し加える。
3)重曹(NaHCO3)を少し加える。こんにゃくづくりのタンサン(Na2CO3)でもよい。

なお、白ワインにはアルコールが含まれます。詳細は割愛しますが、アルコールはチーズタンパク質が水になじむ構造(カゼインタンパク質サブタイプκのもつ糖鎖構造)を萎縮させてしまい、逆効果になるので、ワインを必ず沸騰させてアルコールを飛ばします。アルコールが飛べば子供でも食べらるのも利点です。

3)フォンデュに加えるもの2:懸濁剤

◆特許6162394「チーズ類、およびその製造方法」|知財ポータルサイト「IP Force」(≫こちら

フォンデュ

表中から読み取れること:
タピオカデンプンを2~10%(できれば4~7.5%)含むと、ぴよーんとよく延びるよいフォンデュができる。冷めてもよく延びる。ただし、比較品(コーンスターチ)ではどんな濃度で加えてもダメ。

推測ですが、コーンスターチ(とうもろこしデンプン)と片栗粉(じゃがいもデンプン)は似たような稠度をつけるので、タピオカデンプン使用と比べると、片栗粉では勝負にならないと思います。なお、チーズフォンデュの安定化の向上として、諸外国では手に入りやすいデンプンとしてコーンスターチをチーズにまぶしてから白ワインに投入しますが、タピオカは熱帯のイモで、チーズフォンデュは山岳の寒い国の料理なので、チーズフォンデュの長い歴史の中でタピオカデンプンに出会うことなく、諸外国ではフォンデュの安定化のためにコーンスターチを使ってきたのだと思います。しかしタピオカデンプンの素晴らしさは上の表から明らかです。ポンデケイジョづくりで話題になったタピオカデンプンですから、入手は困難ではありません。

<フォンデュに加えるもの2:懸濁剤の結論>
チーズフォンデュをタピオカデンプンで作ると絶好調

4)水分量の調整

◆特許6162394「チーズ類、およびその製造方法」|知財ポータルサイト「IP Force」(≫こちら

フォンデュ

表中から読み取れること:
フォンデュに含まれる水分が53〜63%(できれば55~59%)でよく延びるフォンデュが作れる

<デンプン量と水分量の調整の計算>
つぎに、白ワインとチーズとタピオカデンプンの使用量を算出します。なお、タピオカデンプンを加えるともっちもちになるので、できれば下限の4%にとどめておきたい。水分を増やせばチーズを増やさずに全体量を増やせるので水分量は上限の59%にしたい。よって、
<条件>
タピオカデンプン4%
水分59%
を目指します。

◆計算
チーズが1袋200gだったので、これを基準に。チーズの水分は45%。実際にチーズのパッケージを見て全量に占める非水分量(タンパク量など)が55%だったので、水分量は45%だと思われます。つまりチーズ200gの水分量は90gです。ここにワインを100mL加えます。全量を水分と仮定し、

水分/全体=水分含量 ですから、
(90+100)/300=63%
大体よいでしょう。ここにタピオカデンプンが混ざるので水分量はもっと減りますから。水分量の試算はいったんここまで。

次にデンプン量を試算します。
チーズ200g、ワイン100mL、タピオカデンプンAmLとします。デンプンは大さじで計ると思うので体積で計算します。大さじ1杯(15mL)のデンプンの重さが約7.5gなので、AmLのデンプンの重さは0.5A(g)です。ワインの比重を1と仮定します。

デンプン量/全体=デンプン含量 ですから、
0.5A/(300+0.5A)=4% これを解いてA=25mL、つまり、おおよそ大さじ2弱です。

最後に水分含量を最終試算します。
水分/全体=水分含量 ですから、
(90+100)/(300+0.5×25)=60%
ばっちりですね♪

<デンプン量と水分量の結論>
チーズ200g、白ワイン100mL、タピオカデンプン大2弱。
これで、延びのよいフォンデュが作れる。

5)作るときの注意
移し替えたときの温度変化を避けるために、卓上に置く容器でフォンデュを作成する。どうしても移し替える場合、移し替える容器を熱湯で温めておき、移し替えるときに熱湯を捨てて急いで水分をふき取る。

6)食卓の準備
専用のフォンデュ装置がなくても、一定の温度を保てればよい。85℃あたりを保てればよい。キャンドル、ホットプレート、IHコンロ、などを使う。

ある日はフォンデュ装置で。

フォンデュ

別の日はIHコンロで。白い容器で最初からフォンデュを作っているので移し替える際のロスもありません。白い容器はIH非対応なので下にIH対応の器を敷いています。ホットプレートを使っても同様にできます。

フォンデュ

7)食べるときの注意
◆Why does fondue sometimes “curdle” and what can I do to prevent it?|Seasoned Advice(≫こちら

タイトルは、「フォンデュが分離して凝固するんだけどどうすればいいの?」という失敗を語っています。その回答の1つとして、

「Importantly: keep stirring. The Swiss give the fondue a little stir every time they dip the bread into the pot … you get more cheese on your piece of bread, and help keep the cheese in the pot smooth.(重要なことですが、チーズは常に揺さぶってください。スイス人は、パンをフォンデュに浸すたびにフォンデュをちょっと動かします。あなたはパンにチーズがたくさんつけられますし、フォンデュのチーズが固まらないように滑らかに保てます。)

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スイスを中心に、フランスやドイツイタリアやリヒテンシュタインなど、スイス山岳地帯で近いところで一般的に食べられているチーズフォンデュは本当に美味しい料理です。ぴよーんと延びるチーズがバゲットパンに絡まると、もう本当に最高!!

フォンデュ

<総括>
コツは、辛口白ワインと、水分量と、デンプン量と、デンプンとしてはタピオカデンプンを使うことと、クエン酸や重曹を使うこと。ワインのアルコールを飛ばすこと。そして食卓では撹拌保持。

ではお役に立てれば嬉しいです!!

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