【基礎情報】
国名:チュニジア共和国、Republic of Tunisia、首都:チュニス、ISO3166-1国コード:TN/TUN、独立国(1956年フランスより)、公用語:アラビア語、通貨:ディナール。
【地図】
チュニジアはアフリカの北端に位置する国で、西にアルジェリア、東にリビアと接しています。地中海を挟んですぐのところにマルタとイタリアがあります。
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◆地中海料理の一部を形成するマグレブの美食
チュニジア料理は地中海料理です。地中海沿岸部の基本食材は、オリーブ、小麦、ブドウ。それぞれオリーブやオリーブオイル、パンやパスタ、ワインや酢になります。そして野菜や果物、豆類、ナッツ、肉や魚など、食材が豊かです。有名なチュニジア料理といえばクスクス(小粒パスタ)やハリッサ(唐辛子ペースト)が思い出されますが、フランスのラタトゥイユのような料理も、スペインのオムレツのような料理も、イタリアンパスタのような料理も、ギリシャのシーフード料理に似た料理も、エジプトによくあるトマトだくで真っ赤な料理も、アラブ諸国に広まる豆料理も、トルコ風のスナックもあります。それは、チュニジアが古い時代から地中海各地域に影響を与え、影響を受けながら発展してきた証です。
チュニジアの魚市場は活気がありました。多様な魚がさばかれます。(撮影地チュニス)
地球の大陸を「欧州」や「アフリカ」と分けてしまうと関係が見えにくい。だから一度、国境線を意識しないで地形だけの地図を見てみましょう。どうでしょう、広大な大地の中に大きな湖があるように見えますね。それが地中海です。そうやって見ると「地|中|海」という名前の意味が分かります。事実そこは「ローマンレイク」(ローマの湖)と呼ばれ、古代ローマの繁栄を語る言葉として使われてきました。
また欧州からアフリカを南北に見ると、地理的な障壁はサハラ砂漠にあることが分かります。サハラの南はブラックアフリカ。サハラの北(北アフリカ)は欧州南部と文化を共有します。何が言いたいかというと、地中海は決して障壁ではなく連結なのだということです。これを理解しないとチュニジア料理を理解することができません。
地中海は、古代より商業的および文化的交流のための主要な輸送ルートでした。しかも陸で行くよりも早い、高速の輸送路でした。ギリシャやエジプトに文明があり、地中海ド真ん中にはイタリア半島がありローマ帝国が広く地中海地域を支配しました。欧州側にもアフリカ側にも海商都市が築かれ、都市国家が多数成立しました。チュニジアではカルタゴが有名です。
一般に、食文化とは、地理的な土地柄を基礎背景とし、征服、侵略、植民地化などの影響を受けたものです。チュニジアの場合は、「土地柄」とはマグレブ(※)の先住民(ベルベル人)の食文化、すなわち隣接地域(アルジェリア東部とリビア西部)と共通する食文化と、地中海の先にある近隣地域の食文化です。「征服、侵略、植民地化」としては、古代ローマ、アラブの侵入とイスラム化、オスマントルコの侵攻、フランス植民地であったことなど。
※北アフリカのうち、モロッコからリビア西部あたりまでをマグレブと呼ぶ。
ここに、チュニジア料理を理解するための要点をまとめます。
- マグレブ先住民族の食文化はリビアやアルジェリアと共通する。例えばショルパ(スープ)やクスクス。
- 地中海性気候のもと野菜がよく育つ。オリーブオイルやトマトを使う料理が多い。よって地中海に面する各国の料理と似た作りや味になりやすい。
- 海岸部も内陸も砂漠もあるものの、都市分布や人口を考慮すると、海岸部の地中海料理を主体に捉えるとよい。魚介類がよく食べられる。
- ローマ帝国の時代からここは「ローマのパン庫」すなわち小麦の穀倉地帯。地中海地域には製粉(パン)や製麺(パスタ)の長い伝統がある。チュニジアでもパンやパスタをよく食べる。
- 7~8世紀のアラブの侵攻。現在チュニジア人口の98%がアラブ人であり、チュニジア料理の多くは他のアラブの国と共通する。
- イスラム教国家である。料理は基本的にハラル(イスラム教の戒律に基づく料理、例えば豚肉を食べないなど)であり、肉類では、羊肉、鶏肉、鶏卵が好まれる。
- フランス人やイタリア人の移住者が多く、ワインなどの酒類や彼らの食スタイルが普及している。
- 辛い調味料ハリッサが人気。
チュニジアは小さな国ですが観光要素に溢れています。主要都市が軒並み古代都市であり、ここを訪れる旅人は、壮大な遺跡の数々に歴史の大きさを感じ、スーク(市場)やメディナ(旧市街)の異国情緒に心洗われることでしょう。料理もエキゾチックです。マグレブの美食に、ギリシャやスペインに通じると思うような地中海の各国料理から、レバノンやパレスチナに通じると思うようなアラブ各国の料理など。きっと、数々のチュニジア料理に魅了されることと思います。
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主食 Staple
チュニジアの主食はパンです。アラブ伝統のホブズ(円盤状のパン)のほか、バゲット(フランスパン)も食べられます。
コスクス(クスクス、粒状パスタ)も国民食。肉の煮込みや魚の煮込みをかけていただきます。魚の煮込みをかけた場合はコスクシビルフート、というように、コスクス(クスクス)とおかずの材料をあわせてセットで呼ぶこともあります。チュニジアのクスクスはなかなかスパイシーに作られ美味しいです。
また、イタリアに近いことからマカローナ(パスタ類)をよく食べるという共通点があります。
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野菜のおかず Vegetables
チュニジアは野菜が豊富です。隣国のアルジェリアとリビアが広大なサハラ砂漠の国であることと比較するとチュニジアは全土が地中海沿岸。世界指折りのオリーブ生産国であり、オリーブとオリーブオイルがたくさん流通しています。オリーブとトルシー(野菜ピクルス)は前菜の定番。
著名な野菜料理を3つ挙げると、1つめはサラタトゥンシヤ。チュニジアンサラダとも呼ばれるもので、きゅうり・トマト・玉ねぎ・ピーマンなどのみじん切りにオリーブオイルとレモン果汁をかけて作ります。アラビア語でサラダはサラタという発音です。2つめはサラタメシュイア。なす・トマト・ピーマンなどを焼いてピューレにしたサラダです。メシュイアは炭火焼きや網焼きを意味します。3つめはシャクシューカ。たっぷりのトマトと玉ねぎを煮て卵を落とします(卵は混ぜてもよい)。トマトはチュニジア料理に不可欠な野菜であり調味料でもあるのです。
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豆のおかず Beans
スークには立ち食いのラブラビ屋が。ラブラビはパンにヒヨコマメ煮をかけたもので、ツナとハリッサがトッピングされます。
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ハリッサ Harissa
ハリッサは唐辛子、クミン、キャラウェイ、コリアンダー、塩などを混ぜてオリーブオイルでペースト状にしたものです。マグレブ諸国(※)では唐辛子が導入された16世紀より長く使用され、現在は市販のチューブのハリッサが人気で、料理に辛味をつけたいときの調味料として重宝されています。バラの花びらを加えた高価なハリッサもあります。チュニジアではいろんなものにハリッサが入っているし、パンにもジャムがわりに塗って食べますし、おかげでチュニジア料理は概ね辛くてホットでスパイシーなものになっています。
※マグレブ:モロッコ、アルジェリア、チュニジアの3か国のほか広義には西サハラやリビア西部も含む。
料理名一覧 Food & Drink Glossary
【主食類】
【野菜のおかず】
- サラタトゥンシヤ(سلطة تونسية):生野菜のみじん切りサラダ
- サラタメシュイア(سلطة مشوية):焼き野菜のピューレ
- シャクシューカ(شكشوكة):トマトと玉ねぎを煮て卵を加えた料理
- チュニジアンサラダ(英:Tunisian Salad):生野菜のみじん切りサラダ
- トルシー:野菜ピクルス
【調味料】
- ラブラビ(لبلابي):パンにヒヨコマメ煮をかけたもの
【調味料】
- ハリッサ(هريسة)唐辛子ペースト