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- 文章を推敲し、「セカンドソウルフード」の文言を追記しました。
【基礎情報】
国名:中華人民共和国、People’s Republic of China、首都:北京、ISO3166-1国コード:CN/CHN、独立国(1949年人民共和国成立)、公用語:中国普通話、通貨:人民元。
【地図】
中国はユーラシア大陸の東に位置する広大な国です。陸で国境を接する国は、東から時計回りに、北朝鮮、ベトナム、ラオス、ミャンマー、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、ロシア、モンゴルです。海を隔てた隣国には、韓国、日本(、台湾)、フィリピンがあります。
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◆世界でいちばん食が「熱い」国。日本人に最も親しみのある外国料理です。
中国料理はすごいです。ロシアから中国に入っても、キルギスからでもパキスタンからでも、国境を越えると「中国の料理は違う!旨い!」と唸ります。日本人が食べない物も食べる食への熱い情熱。たぎる炎で炒め、蒸し、煮、料理が熱くて旨い。唐辛子を好み味わいが熱い。茶を携行するために随所で配布される开水(カイシュイ、熱湯)の熱さ。国内の特色菜がずらり勢揃う飲食店産業の熱気。それから食べきれない量を注文する客の習慣にも食の熱さを感じます。日本料理を支える醤油や豆腐などは中国由来とのことで、私たちの料理の源を多く伝えてくれた中国の食文化には心底感謝の念を抱きます。
*このサイトでは、台湾(中華民国)、香港、マカオについて、別途ページを設けます。台湾は国家要件を満たしており、香港とマカオは中国の一国二制度において高度な自治が認められた地域でありながらも現在もISO3166-2における国コードを保有しています。
円卓を囲み、各自が直箸で好き好きに取っていく典型的な中国の食卓風景。(撮影地米亚罗)
中国には公式には56の民族がいます。人口の9割を占めるのが漢族(漢民族)で、漢族の言葉である「漢語」は、1民族の言葉でありながらも国名を背負って中国語と呼ばれています。言い換えれば「中国語」は漢民族の言葉であるということ。同じく「中国料理」と言うときには漢民族の料理を主体に捉えられなければならない。これが中国料理を理解するための大前提となります。
漢民族の古来の分布は現在の中国領土よりも狭く、三国時代の魏呉蜀あたり、あるいは明の時代の版図から雲南あたりを除いたもの。しかしそれでも広く地域差があり、地域差を語るために漢民族料理の子分類として「中国八大料理」が存在します。これが、四川料理や広東料理といった日本人に知られる料理区分です。
漢民族は、黄河のほとりの人々が周辺他民族を同化しながら膨張して形成された、農耕定住型の民族です。農耕社会ゆえに野菜類が豊富で食べるものの種類が多い。野菜類の多さは多様な保存食を育み、植物の油が得られる。大豆からは今の中国料理に欠かせない醤油や豆腐や味噌などの発酵食品や加工品が作られ、小麦も米も育ち、穀物からは酢や酒が出来ます。海も川も山も森もあっていろいろな生き物が食糧になるし、家畜も飼う。その食材の多さと豊かさは今の漢民族の料理そのもので、「中国料理」の最たるイメージとして異論がないことでしょう。さらに調理上の特徴として、調味料と調理技術で美味を生む。中国料理は、素材の味が活きるというより、むしろ調理と味付けで素材が変化する料理です。調理人の腕が立つ料理なのです。
それに加えて民族の多様性が重要です。民族を代表する料理は中国料理の立派な美食。新疆烤串(ウイグル族のケバブ)、兰州牛肉面(回族の手延べ麺、蘭州ラーメン)、东北饺子(満州族の餃子)、蒙古手扒羊肉(蒙古族のゆで肉手づかみ食べ)などなど、少数民族の美食も重きを置かれる位置づけにあります。ちょっとした規模の街に行けばそういった「地域名や民族名+代表料理」の看板を掲げた飲食店がずらっと連なり、その街にいるだけで国じゅうの名物料理が食べられる、まさに食の一大ワールドを為します。「中国八大料理」のように漢民族地域でさえ地域性豊かなのに、多数の異民族の各種料理が加わるのだから、いつ中国に行っても、何度中国に行っても新しい料理に出会い続けられ、中国料理の多様さには果てが見えません。
次なる特徴は漢字文化です。漢字は文字が意味をもつから、「爆炒猪肝」(豚レバーの超強火炒め)や「酸辣汤」(酸っぱくて辛いスープ)のように、たった3、4文字程度の料理名にも食材名や調理方法や味付けが記されるのがすごい。店には菜単(メニュー表)がある文化だから、注文前段階において、少ない文字数なのに料理の概要も価格も明示されているってすごいですよね。安心して楽しくごはんを選べます。
なお中国料理は日本人が幼少より親しんできた最も身近な外国料理です。ラーメン、餃子、チャーハン、それから肉まん、野菜炒め、チャーシューなどなど。中国料理は日本人にとって「セカンド(第二の)ソウルフード」なのです。海外旅行で日本の味に飢えたときも中華街や中国料理屋があれば救われる。中国料理は単に味が良いという美味ではなく、我々のソウルフードとして我々の心身にフィットする料理なのです。
世界中の料理を経験した私は、「世界でどの国の料理が一番美味しいですか」とよく質問されます。私の答えはもう出ている。自国の料理が一番なのは当然なので「日本以外でってことですよね?」と確認したあと、
「いちばん美味しいのは、中国料理です」と。
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