マスグーフ

  • イラク料理

  • 現地表記

    :مسگوف(アラビア語イラク方言)

  • 概要

    :魚の背開きの炭火焼き

マスグーフ

マスグーフ

イラク料理と言えばマスグーフ! 私は、渡航できない国の料理こそ日本人が調理できる環境に合わせてレシピを作る意義があると思っています。イラクは古代よりチグリス川やユーフラテス川の恵みを受けて偉大なる文明が築かれた、メソポタミアの大国です。湾岸戦争のいざこざや、911事件の報復でアメリカにひどいことされて政権も失われて今や傀儡。旅行者が行くと大変に危なく、「行っちゃいけないイラク」の図式はもう何十年も続いており、今も旅行者が入りにくい筆頭の国の1つとなっています。でも古代文明の礎より続くイラクの食文化は素晴らしく、このマスグーフも少なくとも4500年前の考古学的物証からも作られていた証拠が見いだされていて、マスグーフはイラクで最も古い料理の位置づけです。このレシピはイラク料理の調理と調味料の基礎を勉強した上で作ったので、マスグーフの本場のバグダッドでこれを食べた夫に「これ!こんな味だよ!」と言ってもらえた安心レシピができました。イラクはイスラム教が主体の国で表立ってはお酒が飲まれない国。なので、マスグーフを焼いたら是非炭酸飲料と一緒に食べてみてください。イラク味がぐーんと増しますよ!(ホントです)

材料

2~4人分):

大きな魚(※1)
1尾(※1)
酢A(※2)
約1 C
オリーブオイル
大3
ターメリック
大1
クミンパウダー
大1
こしょう
小1
チューブにんにく
小1
酢B(※2)
大3
トマトジュース
大2
マンゴージュース
大2
大1/2
砂糖
小1/2
  • ※1:魚は新鮮な鯉を一匹使うと本格的ですが、日本では普通には手に入らないので、海の魚でよいので、焼くと白身がぷりぷりする魚を使います。ここでは体長40 cm、重さが1 kg強あるイサキを使いました。
  • ※2:元レシピではタマリンド水やライム果汁ですが日本でこれらを大量に使うと高額になるので酢を使っています。

調理時間

(焼き時間を30分とした場合)

作り方

  1. <魚の処理>魚のウロコを取り、背中が上になるようにまな板の上に乗せ、頭のてっぺんから包丁を入れて、頭を左右に割る(のどのあたりは切り離さない)。
  2. 背中に包丁を入れ、中骨のあたりまで左右に切り開く。
  3. 魚を横に寝かせ、包丁を、中骨の上をゴツゴツ当たるように動かし、中骨と身を離す。
  4. 内臓(ハラワタ)を取り出す。
  5. お腹の皮を決して切らないように、腹側の身を左右に開き、腹の皮がつながった状態で左右に真っ平に開くようにする。
  6. 頭の中にあるエラを取り除く。
  7. <魚の下味>魚を酢で洗い、特に血液をしっかりと落とし、網などに乗せて余計な酢を落とす。
  8. 小さな容器に残りの材料を全部混ぜ、魚全体に手で塗りつけ、1時間以上置いておく。
  9. <薪を使うバーベキューの準備>焼き始める15分くらい前に、火を起こす場所に、紙、小枝、薪と重ね、紙に火をつける。小枝が燃え、次に薪が燃えるので、薪にしっかりと火がつくのを待つ。
  10. <オーブンや魚焼きグリルの場合>焼き始める数分前に、予熱などをして庫内を温める。オーブン温度は200℃くらいでよい(高温にしすぎない)。
  11. <魚を焼く>魚から余分な調味液がたれない程度にぬぐい取って、網に乗せ、30分~1時間くらいかけて、表面が焦げないように注意しながら両面をじっくりと香ばしく焼く。
  12. Enjoy!

材料と調理のこつ

  • イラクでは鯉の養殖が盛んなのでまるごとの鯉が手に入りやすいのですが、日本では流通のメインが海の魚で川魚はあまり流通しないのと、料理名のマスグーフは調理法を指す用語で魚の種類を特定しないのと、イラクの隣国の湾岸諸国では海の魚でもマスグーフを作ることなどから、日本でも、海の魚でマスグーフを作ってもよいと思っています。ただしとにかく新鮮な魚を使うことと、大きな魚を使うことと、焼いたときに白身がぷりぷりする魚を使うことを念頭に魚を選びます。ここでは体長40 cm、重さが1 kg強の獲れたてのイサキを使いました。
  • マスグーフは大きな魚ほど味が良いとされる料理なので、体長30 cm以上、重量1 kg以上の魚を使うとよいです。
  • マスグーフの語源は串焼きで、現地でも串に刺して串を立てて焼く手法が残っていますが、網2枚で挟み焼きにする方法や、家庭ではオーブンで焼く方法もあります。日本の家庭の調理環境では串を立てて直火で串焼きにするのはかなり難しいので、バーベキューや七輪の感覚で焼けばよいと思います。ただし網を使う場合は魚の皮がはがれないよう注意します。
  • マスグーフは直火で焼く魚の旨さを味わう料理でもあるので、キッチンであれば魚焼きグリルやオーブンで焼くことになりますが、庭で火を起こすことができれば炭火焼きを推奨します。
  • マンゴーを使ったソースは風変りに思われがちですがイラクではアンバとして知られている伝統的なソースです。日本では同じマンゴーは手に入らないのですけど、その風味を得たくて、少しばかりですがマンゴージュースをレシピに加えました。ただし現地でも様々な下味レシピがあるので、ない材料は省いてもよいです。
  • 酸味と甘みと香辛料の香りをつけて焼く料理です。焼くと酸味や甘みは隠し味レベルに控えめになるのですが、それが美味しいのです。
  • イラクはイスラム教が主体の国で、この料理も酒類とは食べません。またイラクでは飲食店でペットボトル飲料が無料でサービスされるので、マスグーフもペットボトル飲料(コーラや7UPやオレンジ炭酸ジュース、なければミネラルウォーター)と一緒に食べると、イラク味が増します。
  • 右手で身をつかんでちぎって食べます。骨まわりの肉も右手で骨ごとつかんでしゃぶって食べます。ナイフやフォークは不要です。
  • 焼いた魚の身からしたたる肉汁(魚汁と言うべきか)が美味しいので、ホブズ(薄パン)を下に敷く盛り付けもあります。

Tips about cuisine

  • 「マスグーフ」のアラビア語(イラクの公用語)の綴りは「مسگوف」。
  • イラク以外のアラビア語表記では「مسكوف」も見かけるが、「گ」はg音を表す(※کはk音)ので、このページでは「マスグーフ」のイラク現地の表記として「مسگوف」の綴りで記載している。
  • マスグーフのスグーフは魚が串刺しにされて並べられて焼く様子を示している。スグーフにマがついて単語は受動分詞化し、つまり串刺しにするという意味が「串刺しにされたもの」の意味になった。
  • イラク料理「マスグーフ」の意味の検証



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