美味しいトルココーヒーを淹れる方法があると、暮らしが楽しいです!!
2013年にトルココーヒーはユネスコの無形文化遺産に登録されました。つまり人類がその伝統と文化を保存していく価値が認められたのです。しかし、実はトルコで飲まれる飲料としてはチャイ(紅茶)に軍配が上がるのですが、トルコからバルカン、北アフリカアラブなど、このトルココーヒーが広域に伝播したことは、トルコ文化の価値の高さを実証していると思います。
私はこのトルココーヒーが好きで、特に、コーヒー文化が甚だしく優位であるリビアの旅で何度も飲みました。その他、ギリシャやトルコやサウジアラビアなど他の国でもさんざん飲んできて、概ねスタンダードの味を検討してきました。
そして自宅に帰って配合をいろいろと研究し、「この味だ!」と思うトルココーヒーが再現できたのです。
その上で、この記事では「本格的で美味しいトルココーヒーを自宅で淹れる方法」を掲載します。
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必要なものは、トルココーヒーを入れる「ジェズベ」という取っ手付きのミニ鍋です。
ジェズベ(取っ手付きのミニ鍋)がない場合は、吹きこぼれを起こしそうな形状の小鍋を使えばよいです。私もジェズベを買うまではミルクティーやお味噌汁を作るサイズの小鍋で作っていました。ただし、形状の違いによる不利を減らすため、吹きこぼれ状態を作りやすいようにガラスのフタか、それもなければ鍋直径以上のサイズのガラスの皿を用意します(ガラス製でないと中が観察できないので不可です)。
あと写真に映っているのは、デミタスカップ(小さいサイズのカップ、容量約70 mL)、砂糖、コーヒー豆(粒が細かいもの)、砂糖菓子、計量スプーン(大さじ)、鍋敷き。写真には映っていませんが計量カップの中に水と、熱源(コンロ)を用意。
レシピは簡単です。
材料(およそ3杯分):
- 水
- 200 mL
- コーヒー豆
- 大2
- 砂糖(※)
- 大2
※:砂糖はグラニュー糖でも上白糖でもよいです。上白糖のほうがコクのある美味しい甘さがつき、グラニュー糖だとさっぱりした甘さになります(差異を大きく感じるほどではありません)。
レシピは海外現地で作る人も目分量なので、作り手によって幅はあります。一度これで作ってみて、薄い味が好みの場合は水を増やすなど加減できます。ただし、疲れたときに濃くて甘いのを少量すするのが美味しいコーヒーなので、薄味は合いません。
下はコーヒー豆の細かさの参考写真です。
これはギリシャで買ってきたコーヒーの粉です。自宅でもミルサー(コーヒー豆を挽く器具)を使うときはこれより粗くならないよう、コーヒー豆を細かくします。ロブスタ種(インドネシアコーヒーによく使われるもの)よりはアラビカ種がよいですね。
火にかける前に水、コーヒー豆、砂糖を入れます。
200 mL・大2・大2とは、覚えやすくて最高♪
入れた段階ではコーヒー豆は浮いていますが、ここでスプーンなどでかき混ぜてはいけません。
以下はひとりごとなので小さな文字にしますが、普段の調理で煮物をするとき、ミルクを沸かすとき、あるいは単純に石鹸水を煮る場合でも、水面が真水でないと吹きこぼれやすいですよね。例えばそうめんから出るでんぷんや豆から出た泡(サポニン)や牛乳の被膜などがある場合は吹きこぼれが起こりやすいです。これは水面の水分子は外側が空気だと内部の水分子との分子間力で中に引っ張られるような挙動をしますが、水面水分子の外側にでんぷんやサポニンや膜、トルココーヒーの場合は浮いたコーヒー豆があると、水面の水分子は外との物質間で引っ張られるようになる。つまりは水面の盛り上がりが増して吹きこぼれます。水面に異物質があると水の蒸発がさえぎられるので界面空気側の水分子が減り(つまり蒸気圧が下がり)、蒸気圧が下がると同じ温度でも水分子は気化するようになり(水の状態図でTが同じでもPが下がるとl相→g相になる)泡が出やすくなるほど水分子の気相への変化すなわち水分子運動が高まる。トルココーヒーは吹きこぼれ現象を使って液相中の水分子の運動を高めてコーヒー成分をよりよく引き出すものなので、コーヒー豆は表面に浮いているほうがいいんです。・・・精査はしていないから思いつきですけど私は物理化学的にはこういう理解をしています。
トルココーヒーは吹きこぼれ現象を利用したコーヒー抽出法ですが、本当に吹きこぼれてしまってはいけませんから、注意深く観察しながら加熱します。それでは火をつけましょう。
火はごく弱火にし、加熱を開始します。
底だけ熱くて側面が冷たいのは好ましくないので(いきなり底からボコッと来たら困ります)、まだ沸騰の可能性がないうちにあちこちの方向に傾けて側面も熱くしましょう、とはトリポリ(リビアの首都)のカフェで実習させてもらったときにお兄さんに教えてもらいました。
あちこち傾けて、っと。
注意深く観察していてください。沸騰よりも早いタイミングで、底から気泡がはじけるようなかすかな音が聞こえてきます。
4分経過後、泡が盛り上がり始めました。
でもまあ泡が出るのに何分かかるかは、その日の気温と気圧と水温と火力によって変わるでしょう。
泡が増えて水面が高くなってきました。
水面が一層高くなりました!
あふれないよう、水面と泡を観察し続けて!!
限界まで泡が来たら火から遠ざける!!
火から遠ざければ水面が下がります。そしてもう2回(あるいは好きな回数)、同じように限界まで泡を高めます。
盛り上がりを3回沈めたところで6分経過。
完成です。液だれしないように気を付けなら、静かにカップに注ぎます。
出来た \(^o^)/ ♡♡♡
美味しそー♡♡♡
なお、静かに注いでも細かい粒子はカップに入ります。
底にたまった粉は飲みません。
この底にたまった粉(英語の説明ではスラッジと言っていました)はコーヒー占い用です。カップをソーサーに伏せるように置き、カップの液体をソーサーに落とし切った段階で、再度カップを上に向け、カップの底の紋様を見て運勢を占います。私はスマホに2つのコーヒー占いアプリを入れています。「Tasseography」で検索すると見つかります。
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「外で飲むトルココーヒーならこんな甘さだった。」と思える味が再現できました。現地でいろんなところで飲んできて、その味を覚えている上で「よしこれでいい」と思える良レシピが出来ました。
このコーヒーは甘いですけど、疲れたときの一杯には、甘いものを少量すするのが美味しいのです。無糖で作って客に自由に砂糖を入れさせる店もありますからその形式でもよいです。でも私はお店の人のプロ加減で甘く淹れてもらうのが好きなので、お店の人に砂糖を入れた状態で作ってもらっていました。実習したトリポリのカフェで砂糖の分量を聞いたら「コーヒー豆と砂糖は同量でいいよ」ですって。だから覚えやすくて採用♪
心配なのは、とにかく、あふれさせないこと。でも見ていれば大丈夫です。恐々と、恐れながら作ればあふれさせることはありません。だからトルココーヒーを作るときは、ほかに気を取られないようにするのが最大ポイントです。
なお、ジェズベを持っておらず、小鍋で作っていた頃は、ガラスのフタをして吹きこぼれが起こりやすい状態を作り、泡が盛り上がってきたらフタを外して吹きこぼれを防ぐようにコーヒーを淹れていました。
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自宅で美味しいトルココーヒーを淹れる方法があると、暮らしが楽しいです。
素敵で新しいコーヒーライフがあなたの暮らしに増えたなら、それは私にとりましても喜びです。