昔から「中国からカザフスタンの陸路国境越え」に興味があった。
新疆ウイグル自治区ではトルファンやウルムチを観光したのち、私はカザフスタンの国境の街へ向かった。夜行バスでの移動だ。
国境の町はコルガス。赤いピンの場所だ。
中国語表記で霍尔果斯、カザフ語ではҚорғас、英語アルファベット表記ではKorgas。
私はまだ世界旅に出始めたばかりで、旅の経験値が少なくて、夫にいろいろなことを教わりながら旅をしていた。その第一か国目となる中国の旅がまもなく終わる・・・。
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夜行バスを降り、その町で人々は散るように去る。
でも、我々と同じ方向、つまり国境の税関へ向かう人々もいて、その中の1人にカザフ人のお兄さんがいた。写真のサングラスの人だ。
彼はカザフ語とロシア語を母語とし、中国へ行き来して商売をしているので中国語もウイグル語もぺらぺら。英語で話す人がいないような地域なのに英語も上手で、我々とは英語で意思疎通ができた。そして我々を朝食に誘ってくれた。
街の看板は、カザフ語またはロシア語、中国語、ウイグル語と少なくとも3言語が同時表記されている。国際的都市ということだ。
そのような国際都市で地元を知る人が選んだ朝食は、素晴らしいものだった。
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店では早朝からたっぷりの料理を仕込んでいた。
厨房はお店の外。もちろん店内にも厨房はあるんだろうけれど、目の前で豪快に調理する男性の姿が目を引く。
上の写真では男性がكالا گۆش شۇرپا(カラグシュシュルパ)を個々の器によそっている。
※「كالا گۆش شۇرپا」は「ك ا ل ا گ ۆ ش ش ۇ ر پ ا」が「a p r u sh sh u g a l a k」でこれを右から読む。なお「グシュのۆ」も「シュルパのۇ」も日本語カタカナ表記では「ウ」としたが、「グシュのۆはカザフキリル文字のө」(オエウの間のあいまいなウ)で「シュルパのۇはカザフキリル文字のу」(割ととがったウ)のように、日本人にはなかなか聞き取れない発音差がある。
盛り付けるときは器の底にまずブツ切りのカラグシュ(ゆで牛肉)を入れる。そしてにんじん、かぶ、トマト、にんにくがごろごろ入るシュルパ(スープ)を入れて完成。調理時には肉と野菜を一緒に煮込んでいるので、汁には牛ダシが良く出ていて素晴らしく美味しかった。
これがカラグシュシュルパ。美味しかったなー♡
牛骨・牛肉のダシが良く出ていて、根菜類も甘く煮えて美味しかったです。
みなさん、نان(ナン)をちぎってスープに浸して食べています。ナンはインド料理のナンと語源が同じですが、新疆ウイグル自治区や中央アジアではナンは円盤状です。
※「نان」(ナン)は「ن ا ن」で「n a n」を右から読む。
それから、朝からしっかりとごはんモノも。
料理名はئاق پولو(アクポロ)です。なんとポロにベジタリアンバージョンがあった!! 新彊料理で有名なポロは肉にんじん炊き込みご飯で、特に骨付き羊肉がどーん。ですが、肉が入らないバージョンがئاق پولو(アクポロ)です。
※「ئاق پولو」(アクポロ)は「ئ ا ق پ و ل و」が「o l o p q a」でこれを右から読む(最初の文字は無音化字母)。
たっぷりの油でにんじんを優しく揚げて、にんじんも油も甘く美味しくなったところに米と水を入れて炊き上げます。
カザフ族の女性はチャイ(塩入りミルクティー)を注ぎ分けてくれました。
紅茶の味、紅茶の渋み、ミルクの油分、牛乳の味には、塩がよく合うんです。
外で食べる空気の気持ちよさ。
夜行明けで体調はしんどいけれど、それはみんなも同じ。だけどこうして美味しい料理とお茶で、国境越えのエネルギーをチャージできたのでした。
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コルガスの街の思い出といえば、街から見える天山山脈(てんしゃんさんみゃく)が素晴らしく美しかった。
そしてこのゲートをくぐり、旅の荷物を背負って国境へ向けて歩いていった。
中国の旅が終わる。
カザフスタンの旅が始まる。
陸路国境越え、やばい、大好きになった。
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なお、私はまだ世界旅に出始めたばかりで、私には旅の経験値が少なくて、夫にいろいろなことを教わりながら旅をしていました。
カザフスタン側の国境を出たとき、憧れの国境を陸路越えした感激に満たされて後ろをふりむいたら、国境名がҚорғасと大きく書かれた看板が目に入った。
Қорғас(コルガス)
この、今まで見たこともないғの字が不思議で、知らぬ言葉と知らぬ文字を使う世界にいざ自分が足を踏み入れたことに感動し、不思議の国にさまよいこんだ気持ちに酔わされていたのかもしれない。
だからその気持ちに素直にカメラのシャッターを押した・・・・・・・・のが大失敗。兵士に咎められてあやうく連行される危機だったのでした。
みなさん、
国境は写真撮影禁止です!
今なら絶対こんなヘマしないんですけどね(苦笑) 私にとって初めてそのことを知った、そのことでも思い出深い、憧れの「中国からカザフスタンの陸路国境越え」なのでした。