塩を焼くととても気持ちいい!
このときどんな化学変化が起こっているのか。
◆焼塩 その特徴と利用方法|橋本壽夫の塩の世界(≫こちら)
・塩田で製塩するとにがりが6%
・にがりのうちMgCl2(塩化マグネシウム)が1/3なので2%
・MgCl2(塩化マグネシウム)は吸湿性があり味も悪い
・塩を焼くことで得られる水酸化塩化マグネシウム(MgOHCl)は吸湿性がない
◆塩化マグネシウム6水和物の熱分解反応と生成酸化マグネシウムの反応性(≫こちら)
1971年の論文には塩化マグネシウム水和物の昇温に伴う化学変化が記載されています。
・常温での塩化マグネシウムの形態はMgCl2・6H2O(塩化マグネシウム六水和物)
・174℃から塩化マグネシウム(MgCl2)→塩基性塩化マグネシウム(MgOHCl)(※上の水酸化塩化マグネシウム)への変化が始まる。
・459℃から塩基性塩化マグネシウム(MgOHCl)→酸化マグネシウム(MgO)への変化が始まる。
◆焼成塩の微量成分とその味覚への影響の分析(≫こちら)
「苦味雑味となる塩化マグネシウム」との表現がある。
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家庭の調理環境だと、クレープを焼く温度が140℃、揚げ物の温度が160℃や170℃、チャーハンを作る温度が250℃です。
調理器具が壊れない範囲でキッチンで塩を加熱しても300℃台くらいまでの昇温がいいところではないでしょうか。塩(塩化ナトリウムNaCl)の融点は800.4℃なので塩は家庭のキッチンでは融けません。
キッチンで塩を焼いたときの温度を300℃としましょう。
家庭の塩には、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、水などが含まれます。
キッチンで300℃で焼き塩を作ると、
1)塩化ナトリウム→変化しない。
2)吸湿性かつ味が悪い塩化マグネシウム(MgCl2)→吸湿性のない水酸化塩化マグネシウム(MgOHCl)に変化する。
3)塩が保持していた水分→気化してなくなる。
ということで、2)と3)より塩はさらさらになります。
2)より味の改善にもなります。
1)より、主役の塩化ナトリウムは変化しません。
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私も、塩を焼くと、なあんとなく、美味しくなる気はしています。
プラセボ効果かもしれないけど、プラセボでハッピーになるなら、そのプラセボでいいんです。いただきます!
なおプラセボ効果とは、薬学部では必ず習う概念ですが、薬剤が入っていない錠剤を「お薬ですよ」と交付すると患者は薬を飲んだと信じ込み、本当は薬なんかないのに気から病状が改善する現象があります。これをプラセボ効果と言います。
だから私も、塩を焼いたことで「これで美味しくなった」と信じ込み、本当は味が変わるような化学変化が起こっていないけれども美味しさが増す方向に感じている可能性もあります。でもキッチン環境で174℃の昇温は確実なので本当にMgCl2が低減する化学反応が起こって不味さが減っているのだと思います。
不味さが減る=美味しさが際立つ、そういう塩を作れているのなら嬉しいですね。
私はこれからも焼き塩を作ります!