旅に出ています。旅することが目的で旅をします。この北コーカサス(北カフカス)の地域は、紛争などから長い間あるいは近年旅行者の侵入を阻んできた地域が多くあります。チェチェン紛争はほとんどの日本人が名前を知っていると思います。
料理の点でいえば、例えば南コーカサスのグルジア料理や黒海南岸のトルコが香辛料を多く使う地域であるように、北コーカサスも香辛料の美食地域です。しかし北コーカサスは香辛料の美食地域であるにも関わらず料理情報が極めて乏しい。紛争が繰り返されてきた地域ですから然もありなん。しかしそこには長く人が住んでいる。文化がある。だから、行けば必ず料理の発見が相次ぐ地域です。これはスパイス大使である私にとっても無上の喜びです。
◆旅の行程
(日本→モスクワ乗り換え→)クリミア共和国→(クラスノダール地方→)アディゲ共和国→カラチャイ・チェルケス共和国→(スタヴロポリ地方→)カバルダ・バルカル共和国→北オセチア・アラニヤ共和国→イングーシ共和国→チェチェン共和国→ダゲスタン共和国→カルムイク共和国→(ヴォルゴグラード州→モスクワ乗り換え→日本)。
この9つの共和国を、頑張って訪問します!!!
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ロシアはユーラシア大陸の北部を占める広大な国です。
↓これがロシアのおおまかな地図です。
日本は国の中が都、道、府、県に分かれて行政を行っていますよね。
ロシアは国の中が州、地方、市、共和国、自治州、自治管区に分かれています。
↓ロシアにもある程度の行政分けが必要で、このように、85の区域に分かれています(※)。
※クリミアとセヴァストポリをカウントした数。
先ほど、「ロシアは国の中が州、地方、市、共和国、自治州、自治管区に別れている」と書きました。つまり、「ロシアという国の中に共和国がある」、すなわち「国の中に国がある」のです。
ロシアという国の中に国がある・・・、それは、ロシアが連邦制国家であるということです。
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ロシアの中の共和国は23個あります。ロシアの内部の共和国なので、英語ではインナーリパブリックと呼ばれることもあり、私はインナー共和国と呼んだりもします。
※クリミアは日本非承認だったので訪問前は地図に描かなかったのですが、既に訪問しており「これはロシアだ」と自己結論を持てたので、地図を描き替えました。
↓これが、23個のインナー共和国です(※)。
ではなぜ国の中に国があるのかというと、それは、ロシア人ではない民族が築いてきた土地だからです。
ブリヤート共和国はモンゴル系のブリヤート人の国。
ウドムルト共和国はフィンウゴル系のウドムルト人の国。
チェチェン共和国はコーカサス系のチェチェン人の国。
といった具合に。
私は2017年の夏に、モスクワよりやや東に集まる6つの共和国(モルドヴィア共和国、バシコルトスタン共和国、ウドムルト共和国、タタールスタン共和国、マリエル共和国、チュバシ共和国)を旅してきました。モルドヴィア共和国、ウドムルト共和国、マリエル共和国の3つはフィンウゴル系民族の国で、タタールスタン共和国、バシコルトスタン共和国、チュバシ共和国はテュルク系民族(中央アジア系民族)の国です。
「一生かけてもこんなところ行けないだろうな」と諦めていた時間が長かったこともあり、本当にその地に立てたときの感動は大きかった。。。だから2018年は、ロシア西南部の9つの共和国を訪問するのです。
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今日の時点で、私はアディゲ共和国にいます。
ここからが、もう、泣きそうになるほど、民族が複雑です。本当の民族構成が分からない。ソ連が歪めた、ソ連が混ぜた、ソ連が「分からなくした」。ここにもあるスターリンの呪い。民族の混交というか歴史の歪みなどに複雑で、誰に話を聞いても何を読んでも何が正しいのかすら分からない。「分からなくした」ソ連の狙いは今も残っている。
出会う人、会話した人に、「私は日本人です。あなたは?」とよく尋ねました。同じ人が「アディゲ人」とも「チェルケス人」とも答える。違う人は「アディゲもチェルケスも同じなのよ」と言う。違う人は「アディゲだけどチェルケスじゃないわ」と言う。事前勉強にない民族名を言う人はどういう人? アルメニア人も多い。虐殺の歴史も含むから、深いところは聞けないけれど、それでもみんな素敵な笑顔を見せてくれる。
今回の旅では、短くてタイトな日程であっても、それでもロシアの30日間のビザをフルに使います。家庭料理も見たい。難しい地域だし、ロシア語があまり話せないけれど、教えてもらえることは、たくさんあるはず。
市場のおばさんは、言葉が通じないのに、私が興味深そうにスパイスを観察していると、静かに「とあるスパイスミックス」をビニール袋に入れて、持たせてくれます。おばさんが誇りにするスパイス「アジカ」。インターネット情報と違う。でもおばさんのアジカは本物だ。「インターネットと違う」と思う発想が少しでもある私が馬鹿なのだ。「インターネットが違う」。そうよ、もっともっと現場主義にならなくちゃ。
-だから、私は、旅に、出る-
キッチンスパイスを見せてくれるおねーさん。驚きのミックススパイスがありました、それは市場にも売っていて、おねーさんは手作りもしていて、素晴らしいものでした。そして私は、帰国後、彼らが愛する、彼らの料理を自分が再現したい。再現します。
秘境の北コーカサスの料理は、日本初公開のレシピばかりになると思います。だからやりがいがある。日本で作れる新・スパイスレシピを、楽しみにしていてください。
もちろん身の安全には最大限気を付けて、頑張って旅をして参ります。