日本で人気のタイ料理のひとつ、「ガパオ」は、タイ語で「กะเพรา」と書きます。
タイ語は子音と母音の組み合わせなのですが、うーん、「กะเพรา」がガパオに見えない・・・。
私はタイ語のビギナーですが、今回、「กะเพรา」について、1)適切な日本語表記と、2)なぜ日本ではガパオという名称が定着したかを検証しましたので、本記事にはその検証過程を記事にします。
「กะเพรา」は「カ」(กะ)+「ペー」+(เพ)+「ラー」(รา)ではなく、「พร」が二重子音であるため「カ」(กะ)+「プラオ」(เพรา)。二重子音の2番目の子音は弱くなり(あるいは脱落し)「カプラオ」が「カパオ」に近い音になる。また日本語表記では「กะ」と「ขะ」はどちらも「カ」で区別できないが、軽い「カ」(ขะ)に対し、相対的に重く発音される「カ」(กะ)を便宜的に「ガ」と置くことをしばしば行ってきたため、その踏襲で「กะเพรา」は「ガパオ」になる。ただしタイ語にgの子音はないため「ガパオ」は本来誤記。あくまで日本語表記のための便宜的な転用であり、正しい表記は「カプラオ」か「カパオ」のほうが適切ではある。当サイトでは、「กะ」は本来のタイ語発音の通り「カ」として「กะเพรา」は「カプラオ」。あるいは日本語で定着した「ガパオ」の表記も使用していく。
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まず母音と子音を見分けます。ここでは母音を赤で記します。
กะ →k+ア=カ
เพ →エー+ph(※)=ペー
รา →r+アー=ラー
※「พ」の音は「ph」と置き換えられるが「フ」ではない。息を出しながら「プ」と言うときの音。
うーん、そのまま読むと「カペーラー」になっちゃうんだよなぁ~。
そこで、タイ語アルファベットを一通り手で書き、頭に入れて、仕組みを知ってから解析に着手することにしました。
解けました!!
「กะเพรา」の「กะ」は、「k+ア」なので「カ」でいいんですが、その次が、実は二重子音(พร)に二重母音(เา)の組み合わせで、「เพรา」は、二重子音が「พร」=「ph+r」で、二重母音の「เา」すなわち「アオ」を伴って「プラオ」に近い発音になります。
よって「กะเพรา」は「カ+プラオ」=「カプラオ」。
二重子音の場合、2つめの子音の音はあまり強く発音されないので(※)、「ph+r」では「ph」単音に近くなり、二重母音「アオ」はそのまま残り、「カプラオ」が「カパオ」に近い音になります。
※二重子音の2つめは完全に落ちて単子音化することもある。
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次に。
「カパオ」が最終的に「ガパオ」で定着した理由を知るために、子音「ก」(k)と「ข」(kh)の違いに触れます。
私がかつてバンコクでタイ人に「鶏」と「卵」のタイ語を何度も交互に発音してもらったことがあります。しかし私には「鶏」の「カイ」と「卵」の「カイ」が聞き分けられませんでした。
鶏→「ไก่」=アイ+k=カイ。
卵→「ไข่」=アイ+kh=カイ。
「ก」(k)は息を吐き出さない。「学科」と言う時の「か」。
「ข」(kh)は息を吐き出す。ため息をつきながら「はぁ…ダメだったか…」とゆっくり息をもらしながら言うような「か」。
鶏の「ไก่」は息を出さずに「カイ」と言い、卵の「ไข่」は息を出しながら「カイ」と言う。カタカナではどちらもカイなのだけど、タイ人は明確にこの音を識別するからすごいよね。
これを、日本語で区別しようとしたときに生まれたやり方が「ก をgの音で書き表す」という荒業です。
なぜなら、卵の「カイ」(ไข่)は息を出しながら「カイ」と言うので「カ」の音が軽くなる。だから、鶏肉の「カイ」の「カ」を相対的に「重い音」とし、重さを表すために「ガイ」という表記にしたのです。
日本でも有名なタイ料理に「カオマンガイ」ってありますよね。タイ語では「ข้าวมันไก่」と書くのですけど、鶏肉を意味する「ไก่」(カイ)が「ガイ」と書かれています。タイ語を学んでいない日本人は鶏肉のカイと卵のカイをタイ人のように識別して話せないので、鶏肉のカイをガイと置くことで強引に区別をつけているのです。
何が言いたいかというと、タイ料理名は日本語で表記されるときに、「ก」が本来「k」音(カキクケコ)であるのに、強引に「g」音(ガギグゲゴ)で表記されることが多々あるのだということです。タイ語には「g」音がない(※)ので、かぶらないのでよいということにされているのでしょう。
※「んぐ・・・」と言うときの「ん」の音(ng)はタイ語に存在します。
だから、「カパオ」または「カプラオ」の冒頭の「ก」がg音になって「ガパオ」になったんです。本来「กะเพรา」は「カプラオ」で、二重子音の「ph+r」のうち「r」が弱くなるため「カパオ」に聞こえ、更に「ก」が「g」音で表記されるために、「ガパオ」になっているのです。
しかし、本当にタイ語に愛着のある人なら、カパオ/カプラオをガパオとは書かないでしょう。「ガパオ」は本来誤記。タイ語に精通すると思われる人のブログやサイトで「カパオ」と表記されているものが多いのは、「กะ」はやっぱり「カ」なのだから。
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「กะเพรา」は「カ」(กะ)+「ペー」+(เพ)+「ラー」(รา)ではなく、「พร」が二重子音であるため「カ」(กะ)+「プラオ」(เพรา)。二重子音の2番目の子音は弱くなり(あるいは脱落し)「カプラオ」が「カパオ」に近い音になる。また日本語表記では「กะ」と「ขะ」はどちらも「カ」で区別できないが、軽い「カ」(ขะ)に対し、相対的に重く発音される「カ」(กะ)を便宜的に「ガ」と置くことをしばしば行ってきたため、その踏襲で「กะเพรา」は「ガパオ」になる。ただしタイ語にgの子音はないため「ガパオ」は本来誤記。あくまで日本語表記のための便宜的な転用であり、正しい表記は「カプラオ」か「カパオ」のほうが適切ではある。当サイトでは、「กะ」は本来のタイ語発音の通り「カ」として「กะเพรา」は「カプラオ」。あるいは日本語で定着した「ガパオ」の表記も使用していく。
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やっと解決しました。やって良かった。タイ語が一層好きになりました。
写真はパッカプラオ(パッガパオ)。タイバジルとお肉の炒め物です。鶏肉「ไก่」(カイ)で作って卵「ไข่」(カイ)とごはん「ข้าว」(カオ)を添えるスタイルが多いのですが、これ、ちゃんと言うように努力をするとタイ語に随分親しめますよね。「カ」と「カ」の違いの壁に取り組む絶好のチャンスだと思うし。
よし。私も、次にタイに言ったら、自分の口で発音して注文してみよう。
息を吐きながら言うカ(ข)を青、息を出さずに言うカ(ก)を赤で書きますが、「カオパッカパ ra オカイカイダーオ」って(笑)二重子音の2つめの「r音」もひそかにしのばせて(笑)
「ข้าว」(カオ)=ご飯
「ผัด」(パッ)=炒める
「กะเพรา」(カパ ra オ)=タイバジル
「ไก่」(カイ)=鶏肉
「ไข่ดาว」(カイダーオ)=目玉焼き
(ไข่カイ=卵、ดาวダーオ=星)
日本語では息を出しながらカとは言いにくいだろう。
日本語発音だとカオパッカパ ra オカイカイダーオになってしまうかもしれない。
そうしたら、鶏肉(カイ)づくしがきちゃうのかも(汗)。しかしこれいい勉強になるだろうな(笑)
しかしながら、今日は、ビギナーながらもここまでタイ語のことが理解できて、本当に大満足です。
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何事も解決するまでやり遂げると満足感がありますよね。
世界中の言語への取り組みなど「広く浅く」しかやりようがないのだけれど、これからも「やってよかった」という達成感を得ながら生きていけるよう、「取り組む」ことと「解決するまで知ることを諦めないこと」の両面を積極的に取り入れて、頑張っていこうと思います。
“なぜタイ料理のバジル炒め「กะเพรา」を日本ではガパオと言うのか。” への1件の返信
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