緒言
ベトナムに行って、コーヒーが好きな人ならきっと誰もが気に入る!!それが「ベトナムコーヒー」です。
最もよくあると思われるスタイルは、ブラックコーヒーをドリップで落として加糖練乳で甘甘にしていただくというもの。でもその甘さが疲れている日には身にしみるんですよねー!! 疲労回復♪
ベトナムコーヒーは「コーヒーカップ1杯に特殊専用器具を1個使う」という特殊な淹れ方をします。その特殊専用器具は「フィン」と言います。
ベトナム南部主要都市のホーチミンのセブンイレブンで、ドリップ用の豆のコーヒーと「フィン」が売られていました。
コンビニで売られるレベルか。国民的な道具ですね。51000ドンは300円弱のお値段です。値札に書いてある「Phin cà phê inox」(フィンカフェイノ)とは、「Phin」(フィン)がフィルター、「Cà phê」(カフェ)がコーヒー、「Inox」(イノ)がステンレスを意味するので、「Phin cà phê inox」(フィンカフェイノ)は「ステンレス製コーヒーフィルター」という意味です。
買いました。
裏面。Article numberつき。
JANは「日本のArticle number」なので日本じゃないとJANコードとは言わないのだけどJANに相当するナンバーです。
あとはコーヒー豆も買いました。
* * *
日本に帰国後、ちゃんと美味しくするためのキッチン実験を繰り返しました。もちろん最初から上手に淹れられはしません。なぜならば、
フィンでコーヒーを淹れるには多数の注意点があるんです。
本記事では、ベトナムコーヒーを淹れる「フィン」の構造と淹れ方と注意点を多数の写真とともに解説します。これを読めば早くマスターできるよう、写真を多く掲載することを頑張りました (^^)v
フィンの構造
1つのフィンは4パーツで1セットです。
ここでは「上ぶた」、「中ぶた」、「ポット」、「下皿」と表記します。
上ぶた以外は穴がたくさんあいています。
コーヒーカップに直接乗せるのは下皿です。
注意点コーヒーカップの直径はフィン凹みより大きくフィン長径より小さいこと
下皿の上にポットが乗ります。ポットにコーヒー豆とお湯が入ります。
中ぶたが特徴的です。
中ぶたはポットの中でコーヒー豆が浮かないように押さえる役割をもちます。もうひとつ、コーヒー豆を均一に敷き詰める道具としても重要です。
上ぶたはお湯が冷めないために乗せます。
準備するもの
- フィン。4パーツ揃っている
- コーヒーカップ。中が見える耐熱ガラス製がよい
- 小さいスプーン。最後はかき混ぜて飲むので
- コーヒー豆。ロブスタ種で細かめに挽いてあるものがよいが、なければアラビカ種やブレンドなどでも
- 練乳。加糖タイプのもの
- 計量道具。計量スプーンや1 g単位のスケールなど
- 台ふきん。お湯が跳ねたりこぼれたとき用
- 鍋敷き。熱湯を入れたカップを置く
- 沸騰したての湯。沸騰した湯を冷めにくいようにたっぷり用意し90℃前後を目指して温度管理します。よって冷めたとき用に加熱できるよう手元に電気ケトルの形で置いておくとよい
- メモとペン。次回は今回以上に美味しく淹れられるように時間や分量をメモする
- 食品用温度計。湯温を90℃や95℃付近で管理する
注意点湯温を90℃付近に保てるよう場所と道具を考える
コーヒーの抽出は湯温に真剣になるほど成功します。だから、冷めてきたときに再加熱できるよう、「場所」も大事です。
コーヒー豆について
コーヒー豆はベトナム産。
注意点コーヒー豆はロブスタ種推奨
ちなみにネットでたまにロブスタ種は苦いとかなんとか書いてありますがそんなことはなく、なぜベトナムとインドネシアでロブスタ種が好まれるか、そしてそこでは甘い練乳と組み合わせて飲まれているかは、好みと流通の違いにすぎません(コーヒー会社で研究者やってる弟の情報)。
現地のコーヒー豆の挽きの具合はこんな感じです。
注意点コーヒー豆の挽きの細かさを写真を参考に調節する
コーヒー豆の細かさは出来栄えに大きく影響しますから、写真を参考にしてください。
練乳について
練乳は加糖練乳を使います。
大さじ1杯で18 gでした。
練乳の量は、コーヒーを淹れる湯量100 mLに対し、
- 普段甘いものを飲まない人:なし(0 g)~小さじ1杯(6 g)
- 甘すぎるものが苦手な人:小さじ2杯(12 g)
- 現地にある甘さ:大さじ1杯(18 g)
- 現地のベタ甘バージョン:大さじ1杯以上
です。大さじ1杯で現地の強い甘さになるので私のレシピは大さじ1杯です。これでもかなり甘いですよ~。また足りない場合は飲む途中で足せるので最初は少なめでもよいです。
コーヒー豆のセットの仕方
上ぶたを裏返し、その上にポットを置きます。
上ぶたを裏返して敷く理由は、ポットにコーヒー豆を入れると、ポットの穴からこぼれ落ちてくるので、それを受けるために上ぶたを敷いています。
コーヒー豆を大さじ1杯取って7~8 gでした。
注意点コーヒー豆が多いとお湯が落ちず、少ないと味が薄くて失敗。コーヒー豆の適量をつかむ
ここからが超重要。
中ぶたのつまみを持って軽く押し、くるくる水平に回して軽く押し、コーヒー豆を均一の厚さに敷き詰めます。
注意点押しすぎるとお湯が通らなくなって失敗。お湯の通りが適切より遅いと味に「苦渋(にがしぶ)」が出て失敗。押しが足りないとお湯を入れたときに浮いて失敗。ムラがあると疎な部分からお湯が落ちて失敗
本当にこの「均一の厚さに敷き詰める」段階が、美味しさを決める超重要作業です。
だから、慣れないうちはできたと思っても開けて確かめましょう。
ほら、中央とその左がなんか窪んでいますよね。こういう状況を作ってしまうとそこからお湯が落ちてしまうので失敗です。均一に平らで、押しすぎず押さなすぎずを目指して頑張りましょう。
ドリップの仕方
ではお湯を入れます。温度は90℃付近(85~95℃)。
注意点熱すぎると味に「苦渋(にがしぶ)」が出て失敗。温度が低いと成分が得られないので失敗
※水出しコーヒーは温度は低いですが1滴1滴を超ゆっくり落として極めて長い時間をかけることで成分の抽出量を確保しています。
もし沸騰直後で100℃近い場合は、別のカップにいったんお湯を入れるとか、お玉などの金属ツールでお湯をすくうなどすると、90℃くらいにはすぐに冷めます。
注意点湯温の感覚をつかむまでは食品用温度計を使い温度を確認しながら作業する
注意点湯量の感覚をつかむまではスケールに乗せて重量を測定しながら湯を入れる
1 g=1 mLとすれば入れた体積がデジタル目盛りで分かるので便利です。
ではカップとフィンをセットします。コーヒーカップに練乳が入っており、
ポットにはコーヒー豆が均一に敷き詰められ中ぶたが乗っているので、
スケールの上に、コーヒーカップ(練乳入り)、下皿、ポット(中ぶた入り)の順に乗せます。
お湯を20 mL入れます。
注意点必ず「中ぶたのつまみ」部分をめがけ、そーっとお湯をかける
お湯が中ぶたのつまみをつたって、静かに均等に落ちるようにするためです。もし直接底をめがけてしまうとお湯が一点集中でかかってしまい中ぶたの一方が下がって反対側が上がり、せっかくセットした中のコーヒー豆が動いて台無しになってしまいます。あと、そーっとかけないと中ぶたが動いてしまい、これもまた失敗します。
20 mL入りました。
すぐに上ぶたをかぶせます。
そういえばフタでコーヒー豆のおこぼれを受けていましたよね。大丈夫。このときお湯の中に入れられるので無駄なくコーヒーを抽出できます。
この状態でドリップを落としながら豆を蒸らし、ドリップが落ちなくなったら「蒸らし完了」です。
ベトナムで教わったことは、3分待つとか5分待つとか10分待つとかいろいろな声があって、でもみなさん時計などでは測らないので、要は好みの時間待つ?という感じ?
注意点特に冬は蒸らしの待ち時間で次のお湯がかなり冷めるため、90℃付近の温度維持をし続ける
次に80 mL入れます。このときも必ずそーっと、「中ぶたのつまみ」部分をめがけてかけます。
すぐにフタをします。もう計量はしないので、スケールからそーっと降ろしてよいです(長くスケールに乗せているとスケールのバネが狂うので降ろしたほうがよい)。
楽しくドリップを眺めてくださいねー♡
ラストドロップまで落とします♪
もちろん「最後の1滴は入れない」(アクが出るから)などこだわりを貫いてもよいですが、そのアクが入っても、練乳の甘さでカバーされちゃうので、なんなら1滴でも多く飲めたほうが嬉しいと思うのです。
ただ、最後の1滴を入れても、下皿にはこんなに残っている。
だから、上ぶたをひっくり返してまずポットを乗せ、
この上ぶた便利だわ~♡
下皿に残ったコーヒーをコーヒーカップに入れます。
注意点ドリップ終了後にフィン全体を動かすと下皿に残ったコーヒーがテーブルや床に落ちるので、まずポットを持ち上げて下皿のコーヒーをコーヒーカップに入れる
下皿もポットに乗せて、終了です♪ お疲れさまでした♪
なんか、フィンは本当によく出来た道具ですね!!
総括
ベトナムコーヒーが入りました。
スプーンで混ぜます。
ベトナム経験のある方、「おおー、これだよ!」って思いませんか!
アイスにするときはここに氷を入れればよいです。
* * *
ここまでレシピ化するにあたり、ベトナム人への現地での聞き取りも含めて、自分で入れる計量も含めて、かなりの試作と時間を要しました。
レシピ自体は確かに簡単です。

材料(1人分):
- 加糖練乳
- 大1
- コーヒー豆(※)
- 大1
- お湯(約90℃)
- 100 mL
※あればロブスタ種。なければその他。細かめに挽いてあるもの。
作業工程:10 分間
- コーヒーカップに加糖練乳を淹れる。
- フィン(ベトナムコーヒー用の器具)にコーヒー豆を入れる。
- お湯のうち20 mLを注ぎフタをしてドリップが落ちなくなるまで待つ。
- 残りのお湯を注ぎフタをしてドリップが落ちなくなるまで待つ。
- かき混ぜていただきます。
- Enjoy!
確かにレシピは簡単です。でも、作業のコツがとても多くて、やはりコーヒーを淹れるのは技術職なのだなと痛感しました。
* * *
ベトナムコーヒーは美味しいです。
練乳の甘さが、疲れを取ってくれる気がします。
何より、
ベトナムコーヒーは楽しいんです。
ベトナムに行ったらきっと多くの人が「この道具欲しい!」って思うんじゃないかな。日本の雑貨屋でも入手できるので、興味があればご自宅に是非♪