日本語でマッルン。シンハラ語では「මැල්ලුම්」より「මැල්ලුම」

2025/02/22

日本でもマッルンとしてそこそこ知られているスリランカ料理があります。基本的には野菜の副菜なのですけれど、キャベツだったら「ゴーワマッルン」のように、「食材名+マッルン」が料理名になります。

シンハラ文字は難しくて今までマッルンをカタカナでしか取り扱ったことがなかった。ちょっとその点を反省したので、スリランカの言葉を学ぶ意欲を以って取り組んでみました。素人なので情報源にはなりませんが、それでも自分の中で情報が増えるよう、メモして記録したいと思いました。

ずっと乗り越えられなかった壁。
スリランカ料理「マッルン」の綴りは「මැල්ලුම්」か「මැල්ලුම」か

両単語は似ているし日本人には見ても読めない文字なので、この先、「මැල්ලුම්」を赤「මැල්ලුම」を青にします。

◆1)英語版Wikipedia「Mallung」(≫こちら

「මැල්ලුම්」
シンハラ語表記は1つだけ書かれていました。

◆2)Wikipedia「シンハラ文字」(≫こちら

文字解析します。

  • 「මැ」:「ම」(m)にæがついて「マ」ないし「メ」。メのほうがいいと思うんだけど皆さんマと書いているのは許容
  • 「ල්」:「ල」( l )にハルキリーマ(母音を取り除き子音のみを残す記号)がついて「 l 」の子音のみ
  • 「ලු」:「ල」( l )にuがついて、上の子音のみの「 l 」とセットで「ල්ලු」は「llu」なので「ッル」
  • 「ම්」:「ම」(m)にハルキリーマがついて「m」の子音のみ。音は「ンム」と言おうとしてムを言わずにムの口を用意した形で「ン」だけ言う(※サンタのンではなくサンマのン)
  • 「ම」:「ම」(m)に母音記号がない場合は自動的にアが付帯して「マ」

◆3)A Sinhalese-English dictionary(≫こちら

マッルン

シンハラ語辞書を幾つも見ましたが、「මැල්ලුම」はありましたが、「මැල්ලුම්」はありませんでした。

意味は「葉野菜や実野菜・果物を刻んでココナッツシュレッドと合わせて作る付け合わせ料理」(condiment made of minced leaves or fruit and scraped coconut)。つまり、このようにして作るものを総称した固有の料理名なのです。

◆4)Youtube(≫こちら

数多くの動画を開いて綴りと音声を確認しました。綴りは「මැල්ලුම්」「මැල්ලුම」も散見されました。発音は「マッルマ」「メッルマ」「マッルン」「メッルン」と割れていて、「මැල්ලුම්」に末尾「マ」も末尾「ン」もあったり、「මැල්ලුම」末尾「マ」も末尾「ン」もあったりした。

言葉というのは、話者によって音がゆらぐのはよいのだけど、文字が整備された今の時代に音が整合性がつかないのは、識字率や就学率の問題なのか、前後の単語の音によって発音が変わっているのか、両方正しいのか、ゆらいでも通じるから問題ないのか、地方差なのか。…理由は分からない。ほかの言語だと単数形と複数形、男性形とか女性形の違い、口語としてのその混同、正書法とそうでない表記、とにかくブレる要素はたくさんある。

日本語でも「こんにちは」の発音は「こんにちわ」だし音声としての「こんにちわ」をそのまま「こんにちわ」と書く人もいるしな。醤油は「しょうゆ」でも前後の単語の影響を受けて「わさびじょうゆ」になったりするしな。「たくあん」と「たくわん」は共存しているしな。「うどん」が「うろん」な地域もあるしな。「発酵」と「醗酵」、「灌漑」と「潅漑」、「1つずつ」と「1つづつ」、いやん無数にある。

料理動画では、動画編集する人がスマホちゃきちゃきのお孫さんで、調理者がそのお母さんやおばあちゃんだったりするから、文字と発音が同一人物由来になることのほうが少ないかも。よってなおさら文字と音がブレててもおかしくない。

動画を見て収穫だったのは、このブレやゆらぎを知ったことと、もうひとつ、「මැල්ලුම්」のように「末尾が(mの口の形)で終わる発音」と、「මැල්ලුම」のように「末尾がで終わる発音」が両方あることが分かったことです。

ということは、この時点でおそらく、「මැල්ලුම්」「මැල්ලුම」も正しいのです。

◆5)Google画像検索(≫こちら

マッルン

マッルン

綴りは「මැල්ලුම්」「මැල්ලුම」も散見されました。

◆6)Pinterest(≫こちら

マッルン

マッルン

綴りは「මැල්ලුම්」「මැල්ලුම」も散見されました。

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よし、Printed mattarを探そう!
(プリンテッドマター=印刷物、出版物)
なぜならば、プリンテッドマターのほうが監修が入り誤記が減り、正しい表記が残りやすいからです。

◆7)Jack Fruit Brine|THAKARA FOODS(≫こちら

マッルン

マッルン

商品パッケージでは「මැල්ලුම」だ! 音声にすると「マッル」や「メッル」になるのだろう。

◆8)මැල්ලුම් වර්ග|Salads(≫こちら

マッルン

雑誌のレシピページの画像に見える。

「මැල්ලුම」だ!

ちなみに4つのマッルンのレシピは1つめから順に「කොස්」(コス、ジャックフルーツ)、「බිම්මල්」(ビンマル、きのこ)、「රාබු කොළ」(ラーブコラ、大根の葉)、「ගස්ලබු」(ガスラブ、パパイヤ)。
美味しそうだね~。大根の葉のマッルンとか、是非作ってみたいです。

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結論として

今回議題としているスリランカ料理は、「මැල්ලුම්」と書く人も「මැල්ලුම」と書く人もいる。上述のようにその表記割れの理由は無数に考えられるがシンハラ語学者でないので私には理由は分からない。現状の使用状況から見て「මැල්ලුම්」「මැල්ලුම」も可だが、しかしPrinted mattar(雑誌、商品ラベル)表記及びシンハラ語辞書の単語は「මැල්ලුම」だったから、「මැල්ලුම」を優先して使用していくほうが良い。ただし「මැල්ලුම」の語尾はなのでメッルマやマッルマと読むべきで、メッルンやマッルンと読ませたい場合は「මැල්ලුම්」と表記すべき。


と、こんな感じで今日の日記を締めくくります。

なお、シンハラ語は大文字・小文字の別がないのがいいですね! ブラフミー系文字も、以前ヒンディー語をやってるので、文字の作り方に非常に多くの共通点があってヒンディーの復習にもなったほどです。この点アルメニア語などは極度に膨大な苦労をするので・・・ということで、ハイコレカラモガンバリマス(^^;;;



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