南インド料理名としてよく聞く「ポリヤル」。ポリヤルは炒め物の意味で、香辛料が基本調味料であるインドではスパイス炒めを指します。
◆Google画像検索「south india poriyal」
ポリヤルは炒め物です。
でもある日、私は南インド料理として知っていたバルバルを作ったのですが、
◆Google画像検索「south india varuval」
バルバルも炒め物です。
しかしふと知識のあいまいさに気付きました。ポリヤルとバルバルは言語が違うが同じものを指すのか、同じ言語で違う料理を指すのか、それぞれ何が料理の定義なのか。今回の記事ではその検証と結論について記載します。
* * *
◆英語Wikipedia「Poriyal」(≫こちら)
・ポリヤルはタミル語で「பொரியல்」。
・カンナダ語やマラヤーラム語やテルグ語では違う呼び名。
・炒め物やソテーを意味する。
・「ポリ」は炒めるという動詞に関連する。
・タミル語にはほかの調理用語もある。
→Aviyal – Boil
→Kadaiyal – Grind / Mash of boiled lentils with water
→Masiyal – Mash of boiled roots and leafy greens
→Thuvaiyal – Coarse Mash of stirfried vegetables
→Varuval(バルバル) – Deep Fry
→Vathakkal – Shallow Fry
→Vatral – Drying (in the Sun)
ただ、ここではバルバルが「揚げ物」になっていて、実際は炒め物なので、説明が実態に合っていない気がしました。そこでタミル語から情報を探すことにしました。
◆タミル語Wikipedia「பொரியல்」(≫こちら)
英語Wikipedia「Poriyal」のタミル語版です。
அவியல் – ஆவியில் வேகவைக்கும் முறை
கடையல் – வேகவைத்த பயறு வகைகளை மத்தால் அரைத்து / பிசைந்து செய்யும் முறை
மசியல் – வேகவைத்த காய்கள் மற்றும் இலை கீரைகளின் கூழ் கலவை
துவையல் – கரடுமுரடான காய்கறிகளின் அரைக்கப்பட்ட கலவை
வறுவல் – சிவந்த நிறம் வரும்வரை எண்ணெய் பயன்படுத்தி வறுக்கும் காய்கறி கலவை
வதக்கல் – சிறிது எண்ணெய் பயன்படுத்தி காய்கறி கலவையை வேக வைக்கும் முறை
வற்றல் – காய்கறிகளை வெயிலில் காய வைத்து பதப்படுத்தும் முறை.
私はタミル語の読み書きがあまりできないので、これを機械翻訳でまず英語にしました。情報が分散しないよう料理名には英語と日本語表記もつけ、そして英語説明に自分で和訳もつけました。発音を動画等で確認したものもあります。
ということで、現時点でのまとめです。
கடையல்(Kadaiyal、カレイに聞こえる) – どろどろマッシュ(Method of grinding/mashing boiled pulses with alcohol)←でも酒類を使う定義はないようだ。インドだものな。
மசியல்(Masiyal、マサヤに聞こえる) – どろどろマッシュ(A pulpy mixture of boiled pods and leafy greens)、同じ料理にMasiyalとKadaiyalの両方が充てられることもあり下のトベイルとあわせて区別は後日検証する(今は曖昧のまま本題を進める)。
துவையல்(Thuvaiyal、トベイルに聞こえる) – どろどろマッシュ(A coarsely ground mixture of vegetables)
வறுவல்(Varuval、バルバル) – しっかり茶色く炒める(A mixture of vegetables fried in oil until golden brown)
வதக்கல்(Vathakkal、ワタカル) – 油を少し使って蒸す(A method of steaming vegetable mixture using little oil)←バルバルも炒めてフタをするからこういうことをしているのだが。
வற்றல்(Vatral、バトラル) – 日干し(The method of processing vegetables by drying them in the sun.)
今後の課題も残っていますが、今回の目的の疑問は解決しました。少なくとも、英語WikipediaでVaruval(バルバル)を「Deep Fry」(油で揚げる)とだけを見ていたら間違えていたので、タミルの調理法ならタミル語でと、少しは時間と努力を費やして良かったです。
<結論>
南インド料理のポリヤルとバルバルの違いは、ポリヤルが炒め物で、バルバルがしっかり色づくような炒め物。
でも油の量によってはバルバルが揚げ物に見えることもあるだろう。少なくともバルバルを作るときは焦げ臭が出ない範囲で具材が茶色くなるよう調理したい。
なお、タミル語は、タミル語で読み書きができる日本人たちが1つの単語の発音を全部違う音にしてしまうほど、日本語カタカナ表記にするときの発音のゆらぎが大きな言語です。そのあたりは以下のぺージに記載しています。
スリランカ北部でのドラムスティックの実の呼称は「ムルンガッカーイ」や「ムルッカンガーイ」。