本記事のタイトルは、「料理のむこうに地球が見える」。発酵食品で「食育」を広げよう。今日は「食」が教「育」になる素敵なレシピから、中国東北地方の白菜の漬物料理で満州の歴史を学ぶ食育の提案です。
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今回、東海漬物株式会社(≫こちら)の「白だし仕立て 割烹白菜漬」(≫こちら)を受領しました。だしの旨味を含んだ本格的な割烹の味の白菜漬というのがアピールポイントです。
「食育」は様々な意味で解釈されうる用語ですが、私が取り組んでいるのは「料理のむこうに地球が見える」。歴史や社会とその土地の食は密接に関連するのだから、間違いなく「食」は教「育」になる、美味しいだけでなく文化の学びになるような料理レシピが広がるよう活動を続けています。
最近、ある高校生が私に「ロヒンギャが気になる」と言いました。私たちは会話をし、彼女が抱いている少々誤ったイメージを払拭しました。その後彼女は自宅でミャンマー料理やバングラデシュ料理を作って、家族でロヒンギャ問題の会話をしたそうです。嬉しいですよね。世界の料理は美味しい上に学びに大いに役立つツールになるのです。
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さて私は、満州の歴史を強く肌で知りたくて中国東北部を旅しました。
日露戦争における日本の勝利は様々な影響を残しました。世界は世界史上主だった戦争で初めて有色人種が白人に勝利したことに注目し、日本の勝利はアジア諸国を活気づけました。講和条約に基づいて正当な段取りで作られた満州国。その首都となる街は昭和初期の日本人が理想郷を実現するべく築いた町で、日本の技術力とあいまってあまりに完成度が高い都市となりました。
満州国時代の首都新京だった都市は、今、吉林省の省都長春(チャンチュン)です。
駅の看板。「長春」の文字にぐっとくる。
下の地図は現在の長春(チャンチュン)(部分抜粋)です。
すごいキレイ・・・。息を飲むような美しい区画作り・・・。新京/長春は、高い精度の計画都市により造られた街であることが地図からも一目で分かる。
長春(チャンチュン)を歩いた時、私の心にはこの上ない旅の喜びが芽生えていました。見るものの数々に日本の歴史の重みがありました。満州建国(1932年)からもうすぐ100年経つ今も、当時の華やかな最先端技術を取り入れて作られた街や建築物は、中国人に使われる形で残っています。
駅前に映画のモニュメント。
長春には満映(満州映画協会株式会社)の施設を引き継ぐ中国最大の撮影所がある。ここは中国映画芸術発祥の地なのだ。
長春駅前にある春誼賓館。
1909年に大和ホテルとして営業を開始したホテルで、今もホテルとして営業をしている。写真でわかるように非常に立派なホテルだ。
駅から少し南に歩くと1910年建造の郵便局、さらに進むと1931年建造の旧満鉄図書館、そして1937年建造の旧満州国国防会館。
そして、一番目立つ日本の城のような建物が、旧日本関東軍司令部。
本当にすごい建物だった。流石は歴史を揺るがした関東軍の本部。日本の城の天守閣構造が見える。現在は共産党吉林省委員会となっている。現在の残念な日中関係の中でも、中国人は日本の伝統建築を受け入れてくれているということだ。
計画都市のほぼ中央部に位置するのが現在の人民広場。この周りにも歴史ある建物が並んでいる。現在中国人民銀行長春分行となっているのは、旧満州国中央銀行。
続いて旧満州国電信電話株式会社があり、さらに南に歩くと左手に牡丹園、その敷地内に旧日本神武殿がある。
神武天皇が祀られていた場所で、武道館としても使われた。現在は吉林大学の講堂。
新宮殿の南に続く大通りにも重要な建物が並んでいる。私が特に好きになったのは、1935年完成の旧満州国軍事部。
ここは現在は病院になっており、内部にも入ることができた。
軍事部の向かいには旧満州国国務院、さらに旧満州国司法部、そして旧満州国交通部などが続き、この日最後に見たのが旧満洲国総合法衛(最高検察機関だったところ)だ。
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今から100年も前だというのに、これだけの街と建造物を作った日本人はなんて素晴らしい。また「新京」という名にも夢がある。ほぼ未開の土地からのスタートだっただけに、土木士や建築士や技師たちはやりがいに満ちていただろうし、住まう人々は(太平洋戦争で戦局が悪くなる前は)夢に満ちて楽しかったことも多かったのではないかと思った。
また私は、このように2日にわたって長春(チャンチュン)を歩く中、市場や食堂で、満州の料理の数々を観察し続けた。
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料理の話をしましょう。現地では、満州の食文化は白菜の漬物に大きく支えられていることを理解しました。彼らは漬物を餃子の具にし、漬物を鍋の具にし、漬物を肉まんの具にもする。漬物と一緒にバーベキュー肉を焼く。私が入った食堂では、メニューのトップが酸菜排骨煲(スアンツァイパイグーバオ)という、豚スペアリブと漬物を入れた土鍋煮でした。
現地では迷わずこれを注文。トップメニューの料理はたいていその店の自慢の品で美味しいから安心です。その後もいろんなお店で漬物入りの料理を食べました。それらのすべてに共通するのは、酸味のある発酵食品を加熱して生じる旨味は半端なく美味しいということ。そして私は、いろんなお店でレシピを教えてもらい、日本へ帰ったのでした。
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今回、東海漬物株式会社(≫こちら)の「白だし仕立て 割烹白菜漬」(≫こちら)を受領しました。
これを使って料理を作るというテーマを見て、私はその瞬間に満州を思い出しました。我が日本の国民の歴史を尊敬し、満州の旅の思い出の料理を作りたくなりました。上の酸菜排骨煲(スアンツァイパイグーバオ)です。
レシピは簡単です。
材料(3~4人分):
- 豚スペアリブ
- 500 g
- 白菜の漬物(※1)
- 300~500 g(※1)
- にんにく
- 1かけ
- 生姜
- にんにくと同量
- 油(※2)
- 大2
- 鷹の爪(※3)
- 3~4本
- 塩
- 小1/2
※1:白菜の漬物は固形部分の重さです。手作りのものでも市販品でもよいです。絞って300~500 gを使う場合は漬け汁を含んで500~800 gくらいを用意するとよいです。
※2:油は、あればラードや豚の脂身を使います。その場合はサラダ油と等量混合すると使いやすいです。なければいつもの炒め物の油でよいです。
※3:鷹の爪は切られていない丸ごとを使います。小口切りタイプを使うと辛味が強くでるので、それしかない場合は量を減らします。
作業工程:1 時間
- 豚スペアリブをさっと水洗いし、湯(分量外)を1Lほど沸かして、豚スペアリブをさっとゆで、豚スペアリブを取り出す。ゆで汁は鍋に取っておく。
- 白菜漬物を絞り、漬け汁を別容器に取っておく。
- 白菜漬物を5 mm幅に切り、にんにくと生姜を薄切りにする。
- (スペアリブの粗熱が取れたら、剪定ばさみや骨切り道具などがあれば可能な限り骨を切断して短くするとよい。骨を切る道具がなければ切らなくてよい。)
- 大きめのフライパンに油の半量(大さじ1)を入れて熱し、にんにく、生姜、鷹の爪を入れて炒め、鷹の爪が黒くならないうちに取り出し、次に豚スペアリブを入れて、豚スペアリブの上に塩をふりかけ、豚肉の表面を焼きつけるようにじっくり加熱する(ここで10分くらいかけるとよい)。
- 豚スペアリブを取り出し、油の残り半量(大さじ1)を入れて熱し、白菜漬物を入れて香りが出るように炒める。
- 味見をし、酸味がほどよく利いた炒め物になるよう、好みで酢(分量外)を加えて炒める。
- フタができる鍋に白菜漬物炒めを入れ、お玉で1杯ずつ、白菜漬け汁→豚のゆで汁→水(分量外)と交互に加えながら、野菜の旨味・お肉の旨味・旨味の濃さが好みになるように煮汁を増やしていく。慣れないうちは等量混合から始めるとよい。
- 盛り付ける器の大きさを見て、煮汁が人数分のスープとして良い量になったら、豚スペアリブを入れていったん沸騰させ、フタをして弱火で30分以上煮る。
- 味見をし、塩加減や酸味加減や旨味加減を好みに調える。
- 一人用土鍋(あるいはその他の器)に1人分ずつ盛り付け、仕上げに炒めた鷹の爪を乗せる。
- 可能なら、食べる直前に土鍋を加熱して再度煮て出来上がり。
- Enjoy!
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おいしー♡
骨からいい味が出てる!!
お肉にしみ込んだ漬物の味がすごい!!
漬物汁を入れたスープが超絶美味!!
素晴らしい料理です。再掲しますが酸味のある発酵食品を加熱して生じる旨味は半端なく美味しい。この日は家族でこれを食べて、満州の歴史をいっぱいお話ししました。皇帝溥儀のこと、満鉄、関東軍のことや、そもそも満州とは何か、そして敗戦と引き揚げの辛い歴史・・・いろんなことを会話しました。・・・それは私にとっても極めて大きな「食育」でした。
なおこの白菜の漬物は、本格的な中国の味に似た要素をもちながらもかつおぶしなどで日本人の味覚に合わせて作られたもので、結果として日中融合の味になりました。それもまた日本時代の満州料理を彷彿とさせるもの。なぜなら当時の満州の日本人は、中国風土の食材と日本の味覚をあわせて料理していたはずだから。今回はその再現もこめて価値ある料理を作ることができました。
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「食育」は子育てのみならず、大人も子供も分け隔てなく人を育てるもの。
もし中学や高校に通うお子さんがいらっしゃるご家庭なら、こんな満州料理を作って満州事変について会話したり、トルコ料理を作ってオスマン帝国のことを会話する、そういう食育を取り入れてみませんか。大人が全てを知っている必要はなく、子供に答えを出させればいい。本を開くきっかけを導くだけでも素晴らしい。フランスでも英国でも、受験に必発の事項と料理をリンクさせて食卓の会話を契機に子供の知識を育めば定期試験や大学受験で得点UPは確実です。学びの種をたくさん蒔くのは間違いなく良いことなのですから。
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今日は、中国東北地方の白菜の漬物料理を食べて満州の歴史を学ぶ、そういった食育の提案を、美味しいレシピと共に紹介しました。
私はこれからも次世代を担う生徒たちの教育支援や、当ホームページへレシピを探しに来られる方の役に立てるよう、たゆまず頑張っていこうと思います。今回は美味しいお漬物製品を本当にありがとうございました。次もこの文化の学びになるお漬物で他の満州料理を作り、「家族で食育」、「自分に食育」、「地域に食育」を楽しんでいこうと思います!