【緒言】
私は、そういえば自宅で紅茶をうっとりするほど美味しいと思って飲んだことがない気がします。紅茶は確かに自宅にあるし、これまでも紅茶を飲んできた。なのに、です。私は、美味しい紅茶の淹れ方を真剣に正しく学ぶべきではないのでしょうか?
この記事では、そう気が付いたことを契機とし、『美味しい紅茶の淹れ方に関する研究と実践』と題して、得た結論をまとめようと思います。
* * *
1)いい茶葉
2)沸点
3)淹れ方
4)保温
5)あなたが紅茶を好きであること
以下に、この5大ポイントを解説しますが、文章の羅列になるので、まず先に、具体的にやることの結論を書いておきます。
ティーポットのほうが美味しく淹れられるので、紅茶の理論を学ぶにはティーポットでの淹れ方を学ぶのがよいです。
1)いい茶葉を使う。
2)ずんぐり型のポットか急須。
3)ガラスより陶器製。
4)一度茶器は熱湯で温める。
5)茶葉を先に入れる。お湯は後。
6)お湯150mLあたり茶葉2g。ケチっちゃだめ。
7)沸点の湯(ボコボコするお湯)。
8)再沸騰や保温のお湯はダメ。
9)沸騰したらすぐに湯を入れる。
10)お湯をフタギリギリまで入れる。
11)茶器は必ずフタをする。
12)温度が下がらないようにくるむ。
13)焦ってはいけない、5分は待つ。
14)茶葉やティーバッグは絞らない。
15)注ぐ前に中をひと混ぜ。均一に。
16)最後1滴(ゴールデンドロップ)までゲットする。
17)ミルクは成分無調整。
18)先にミルクをカップに入れておく
さらに、マグカップ&ティーバッグでも、ティーポットの淹れ方を最大限に真似ることで美味しさが増します。
★ティーポットの淹れ方を最大限に真似する
すなわち、
1)いい茶葉を使う。ピラミッド型。
2)ガラスより陶器製。フタとなる小皿も用意する。
3)カップ容量を測る。
4)一度カップは熱湯で温める。
5)沸点の湯(ボコボコするお湯)。
6)再沸騰や保温のお湯はダメ。
7)沸騰したらすぐに湯を入れる。
8)【ポットティーと順番逆】お湯を先に入れる。ティーバッグは後。
9)お湯150mLあたり茶葉2g。ケチっちゃだめ。
10)小皿などで必ずフタをする。
11)温度が下がらないようにくるむ。
12)焦ってはいけない、5分は待つ。
13)ゆすっちゃだめ、絞っちゃだめ。スプーンですくいあげる。
14)最後1滴(ゴールデンドロップ)までゲットする。
15)ミルクは成分無調整。
16)【ポットティーと順番逆】ミルクは紅茶の後で注ぐ。
そして紅茶が美味しい最大の条件は、
・あなたが紅茶を好きであること。
それでは以下解説します♪
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<解説>
1)いい茶葉
いい茶葉に限る。悪い茶葉を使ったらそりゃ美味しくない。ちなみに甘さを求め渋みやアクを出さないようにして淹れる日本茶やコーヒーと違い、紅茶の旨味は心地よい渋みと香りにあるのです。
そうそう、よくある質問ではないかと思うが、「ダージリンとセイロンはどっちがいいですか」みたいな・・・。そんな無粋な質問は無用ではないでしょうか。紅茶の味わいは好みなので。「アールグレイは良いですか」と言われても、香料が好きな人も嫌いな人もいるから、答えは自分で見つけましょうね。ともあれ、今は、茶葉から美味しさをMAX引き出す話をしているので、好みの話はそれをマスターしてからにしましょう(そのうちアッサムはミルクティーに合うとか分かってきます)。
茶葉の量は、ここ極めて重要で、150mLあたり2g。ケチると美味しくないのはお味噌汁の味噌だってコーヒー豆だって何だってそう。だからケチらない。ケチっちゃだめ。150mLあたり2gの茶葉、ここは守っていこう。では日本のティーバッグは何g入っているのか? 茶葉をスプーン1杯取ったら何gなのか? 知らないと美味しい紅茶は淹れられない。だから重量を知ることが大事だ。
ちなみに各メーカーは、ティーカップ1杯を150mL、ティーバッグ2gが多いようだ。だからカップ1杯にティーバッグ1つの計算になる。
もし好みより濃くなっても大丈夫。もともとミルクティーの場合は濃く淹れるものだし、ロシアのサモワールやトルコ式紅茶は濃く濃く煮出してあとから差し湯で薄めるのだが、これがまた白湯の旨さが得られて美味しいのだから。
いい茶葉でもあっさり引き上げては味が出ない、焦ってはいけない、官能試験の国際規格では6分間待つこととしている。まあせめて5分は待とう。なぜならば、茶葉から心地よい渋みを引き出さない限り美味しい紅茶にならないのだ。コーヒーはドリップの最後のほうはアクがあるので捨てるが、紅茶は最後の1滴も美味しいので、絞らない範囲で、最後の1滴すなわちゴールデンドロップまでゲットする。ティーバッグの場合も、極端にゆすっちゃだめ。最後取り出すときも、スプーンですくいあげて、茶葉を押さずに紅茶の液だけを落としこむように心がける。
2)沸点
温度はMAX高くする、すなわち沸点で淹れる(ちなみにコーヒーは85℃で日本茶は70~85℃、つまり求める旨さが違うから必要な温度が違う)。
沸点は水が沸騰する温度だ。だが、気泡が出たら沸騰というわけではないから要注意。もちろん沸点はその日の気圧が低いと下がり、標高が高いと下がるから、日本でなら、高気圧の日に海抜0mで作るのが美味しい紅茶が飲めるという算段になる。
私の自宅での実験(海から1kmちょっと離れた高台で標高100mくらい、気圧不明)では、
「あ、気泡が出てきた」で60℃、
「お、沸騰始まるかな?」(鍋底に気泡が膨張)で85℃、
「お、沸騰きたきた」(気泡が連続的に出てミニ竜巻みたいのが出来る)で93℃、
「おー、来るぞ来るぞ」(水面が強く波うち始める)で96℃、
「ボコボコ来たー」(大きな気泡がボコボコ形成)で98℃でした。
98℃以上にはなりませんでした。
大事なことは「お、沸騰きたきた」の段階ではまだ全然沸点じゃないんですね。紅茶は熱湯で心地よい渋みと香りを抽出するものだと心得て、沸いている湯の表面を観察してボコボコするお湯を沸かすことが大事です。
沸点近い高温を保つために、ポットはガラスよりも陶器製を使う(陶器には内部気泡があるので断熱効果が高い)、一度熱湯を入れて温めて湯を捨てる、必ずフタをする、ポットの上まで来るようにたっぷりの湯をフタギリギリまでを入れる、ティーコゼーなどで温度が下がらないようにくるんでおく。鍋帽子でもタオルでもいい。
温度に関連して。
ちなみにミルクティーの場合、熱い大量の中に冷たいミルクを入れるとミルクが急激に熱くなってタンパク変性が起こり、逆に、冷たい少量の中に熱いものを徐々に入れればタンパク変性は起こりにくいので、熱い紅茶を淹れたときはミルクが先(英国化学協会論もミルクが先です)。でも、マグカップでティーバッグの場合はミルクが先ってあり得ないので、マグカップティーはミルクを後にせざるを得ない。だから砂糖を入れてやや冷ましてからミルクを入れよう。ちなみに口がやけどせず美味しく飲めるのは65℃なのでかなり冷ましていい。
もちろんミルクは成分無調整の美味しいものを使う。
3)溶存酸素
また沸騰して数分も経つと溶存酸素が抜けてしまうので、沸騰直前に一度茶器に湯を注いで温め、次に「ボコボコ来たー」すなわち沸騰確認の瞬間に火を止める。そしてすぐに茶器に湯を注ぎます。再沸騰の湯はダメ。湯沸かしポットに保温中の湯もダメ。溶存酸素が足りないと気の抜けた味になるらしいです。
溶存酸素は茶葉のジャンピングに重要です。だから沸騰の瞬間に火を止める。ジャンピング、すなわち茶葉が浮いたり沈んだり循環するから茶葉の成分が湯に溶け出しやすいのは溶液物理学のNoyes-Whitney式の通り。酸素が付着すると茶葉が浮力を受けて水面にあがり、酸素を手放してまた沈むことの繰り返し。ジャンピングには湯の対流も必要なので、2)高い温度のほうが良い。あとフレンチプレスは細くて対流できないのでティーポットすなわちずんぐりむっくり型がよい、日本茶を入れる急須でもよい。
ティーバッグの場合は、茶葉がジャンピングできるように、平べったいものよりも、ピラミッド型で茶葉が動けるタイプのほうが良い。
4)使う水
使う水は日本の水道水を想定している。
なお、日本では湯を沸かす道具といえば鉄かステンレスだろうか。できれば鉄やステンレスを避ける。ステンレスも鉄を含むのだが、紅茶成分のタンニンは鉄錯体を形成すると渋さが減り紅茶の味が落ちるらしい。でもうちにはお湯を沸かすものはステンレス製のものしかないから、鉄排除はできない。
5)あなたが紅茶を好きであること。
もし極限まで努力してもお気に召さなかった場合、あなたはあまり紅茶が好きではありません。お子様などは大人になれば渋みを理解するかもしれない。体調によっても変わるかもしれない。だから、また試してみたら、次はその紅茶を抜群に美味しいと感じる日が来るかもしれないですが。
最後に。
マグカップとティーバッグで紅茶を淹れる場合の最重要ポイントは、ティーポットでのベストの紅茶淹れを最大限に真似することにある。
しかし、マグカップとティーポットで手順が逆になるのが、茶葉とお湯の順番(それから紅茶とミルクの順番、でもこれは理論上ミルクが後にならざるを得ない)。ティーポットは茶葉を先に入れて湯を勢いよく注ぎますが、マグカップでそれをやるとタグが引き込まれてしまうしw 何より上手くお湯が対流できないのだそうです。だからほとんどメーカーで、カップ&ティーバッグのときはお湯を先に淹れるように指示しています。
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文章の羅列になりましたが、私はこの勉強の過程で、非常に勉強になりました。
主に参考になったのは、紅茶の淹れ方に関する国際基準(ISO3103、ただし官能試験用基準)や英国王立化学協会の紅茶の淹れ方に関する指南書です。そして日本の数々の既製品のパッケージの指示。
味には好みがある。
紅茶の美味しい淹れ方なんて、正解がない世界です。
でも、無知ゆえに不味い紅茶を淹れてきてしまい、家族とのティータイムと称しながらも美味しい紅茶すら淹れられなかったこのテイタラクな人生を猛反省しよう。愛する家族に、大好きな来客に、自分自身の癒しの時間のために、少しでも美味しい紅茶を淹れるための努力だけは続けていかなくちゃね!!と、猛反省ながら前向きな私なのでした。
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最後にもう一度要点を再掲載します。
1)いい茶葉
2)沸点
3)淹れ方
4)保温
5)あなたが紅茶を好きであること
一番大事なのはここ。
5)あなたが紅茶好きであること
そして、味には好みがある。
だから、スタンダードからどう変えていくも、あなた次第。私次第。
ね!