野生きのこって経験の少ない人が採る場合、さらに経験が無い人にとっては「危険」の対象なんですよね。
私も、きのこの経験がない人からは、なかなか理解が得られません。周囲の人はスーパーで買うきのこか、原木栽培のしいたけしか食べたことのない人ばかりで、「野生のきのこって、毒きのこでしょ」「道の駅でも毒きのこが売られることがあるって言うし」「プロでも間違うって言うし」「やめてー」・・・と、危険前提の反応が返ってきます。
よく聞く「道の駅で毒きのこ」という中毒事例について、思うことがあります。一つは、売った側は、本当はきのこのプロではなかったのかもしれないということ。二つめは、商品価値を高くして売るために(きのこが割れたり欠けたりしないようにするために)、鑑別を省略しているのかもしれないということです。かじって味を確認したり、軸を割って空洞の具合を見れば類似きのこを排除できる、そういう鑑別が鍵になるきのこもあるのですから。
そして三つめは、買う側にきのこを見分ける知識がなく、パッケージの名称を鵜呑みにしている可能性です。「パッケージに書かれた文字を見てきのこを見ていない」から、中毒事例が起こるのではないかな。そう思うこと、ありませんか。
自分がきのこを採る場合も、人が採った場合も、鑑別の知識はないよりはあるほうがいいと思っています。また、思うのですが、医薬品のパッケージには添付文書が入っていて、副作用情報などが記載されているように、道の駅でも、類似きのことの鑑別方法などを記載した文書を添付するとよいですね。そうすれば、野生きのこは、正しい知識とともに、より安全に消費者に広まっていくのになって思います。
あと、中毒事例の詳細を見ると・・・「86歳女性、採取したきのこを夕食に食べ、その後に倒れ・・・」「50歳台男性、きのこ狩りの夜、仲間と共に調理し、酒宴」といったように、疑問を感じるものもあります(「その高齢が原因では?」「暴飲暴食が原因では?」、等)。
私は、今のところは、うちで採れたきのこのうち、新たに鑑別したきのこがある場合、1日に1種類だけ食べるようにしています。
そのほうが、万が一体調を崩したとき、原因きのこを特定しやすくなるからです。
きのこ好きの友人が言っていました。
「死んじゃうきのこなんて少ししかないし、食べる量でも全然違うのにね。」
確かに。
野生のきのこを楽しむ最大のコツだと思うのですが、毒きのこの知識はしっかりと勉強します。致命的なきのこは手すら触れない。そのために毒きのこはすべて頭に入っている必要がある。そういうきのこは数十種類しかないから、これは出来ます。
きのこを採ることは楽しく有意義ですが、素人が「あ、あの写真とそっくり!」と比較対象の知識が乏しいまま同定しちゃうことがあるので危ないのです。「そっくり=それと同じきのこ」・・・白だと思ったら食べるというやり方はしてはならないと思う。「似たようなきのこの区別がつかないうちは食べない、ということができない方が多い」とは、私にきのこを教えてくれる恩師の言葉でもあります。私の実践する鑑定方法は背理法に似ていて、「類似きのこをすべて洗い出して、鑑別する。類似きのこを排除して同定する」ことです。
私は、きのこについては駆け出しですが、それでも、うちに生えたもので、食べるに至ったものは、可能性のある類似種をすべて除外するまで調べています。2人で別々に調べて検討結果を照合して判定しています。きのこは、白だから食べるのではなく、黒を排除する知識と能力が必要なんだなーって、強く実感しています。おかげで体調に変化を感じたことは一度もないです(^o^)
あと思うのが、「体質により中毒を起こす」という類のものです。例えば、カニやエビは、アレルギーを起こす人でなければ、とても美味しいものですよね。お酒が飲める人も、一口で顔が赤くなる人もいる。「体質により中毒を起こす」というきのこの場合は、少量を試しに食べ、その後食べる量を増やしていっています。
でもね、きのこって、そうやってお勉強する過程が楽しい!と思いませんか!
その上で、きのこは面白いし有意義だし、有意義なら伝えたい。そう思って発信しています。
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世の中、毒と付き合っていくということも知識として持っておいたほうがよいですよ。塩は胃癌プロモーターだし、春の山菜の王様のワラビも発癌成分プタキロシドを含む。だけど塩を排除して生きている人はいないし、ワラビは春のスーパーでも売られる人気の食材です。あと、判明しているものは、毒の成分名も見ます。正直なところ、「この成分程度ならw」と思う毒成分も、「これは絶対ダメ」と思う毒成分まであります。毒って、すべてが一律同じではないんですよ。毒成分を含むとされるいわゆる毒きのこは食べませんけれど、確認はします。慢性障害、遅発性障害、非可逆性障害は絶対に避けたいです。
大事なことは、「適切」を知るための知恵と知識だと思っています。
「きのこはベテランでも間違う場合がありますので、もし初めて見つけたときは信頼できる人に鑑定してもらってからにしましょう」とはよく言われる言葉です。
私も、「慣れてしまったがために確認を怠った」といったことがないように、いつも初めての気持ちで慎重に確認をし、「うちのきのこ」という楽しい暮らしをしていこうと思っています。