ニンジン種子の発芽にはトリックがたくさんあります。知らないと失敗しやすい作物なのです。トリックとは、ニンジンの種は、発芽に光が必要であり、発芽は真夏であり、土が乾燥しやすい時期なのに、土を乾燥させてはならず、なおかつ発芽に時間がかかり簡単にはいかないということです。
通常なら、土の乾燥を防ぐためには土を厚くかけてあげるか、覆いをかぶせてあげればよいのだけれど、ニンジンの場合は光が必要という条件があるため、なるべくむき出しにして、暑い天候のもとでも土壌の表面が乾かないようにしないといけないのです。また、こまめに水をやるということは、ニンジンの種は小さいので、水やりのたびにニンジンの種が流されるおそれがあります。
これらを解決することは、畑につきっきりになれない者にとっては困難なことです。ビニールをかけるなどの方法もありますが、ビニールをかけたり外したり、使い終わったあとに洗ったりすることは、面倒くさがりの私にはちょっと性に合わない。そして、万が一ビニールが破れたり飛ばされたりしたときのことを考えると、土に還らない素材を菜園で使うことには、とても抵抗があるのです。
私の手持ちの本には、「ニンジンの発芽が揃えば栽培は8割成功」と書いてあります。それほどまでに栽培の難易度が高いことを意味した言葉なのでしょう。
さて、ニンジン栽培の条件について、自分用メモをまとめます。我が家は日本の中間地から暖地に属します。
- 8月下旬。猛暑でも日照りでも8月下旬までに終える。これが遅れると、収穫より前に適温よりも気温が下がってしまい、良い収穫が望めない。
- すじまき、好光性種子、覆土をしない。
- 種蒔きから発芽後しばらくまで水を切らしてはならない。発芽には時間がかかる。
- 水やりや雨で種が流れないように、蒔いたらとにかく踏む、あるいは他の方法でとにかく圧着する。
英語サイトでは、ニンジンの種が流れやすいことに関し、「あなたにとって可能な限りの最も優しい流速で水を注ぎなさい。種が発芽するまで絶えず潤いを保ちなさい。」と書いてありました。
さて、私なりに、面倒くさがりが、最も面倒でない方法でニンジンの発芽を成功させるための方法を考えました。そこで、去年の反省をもとに、今年は竹の棒(直径1.5cmくらい)を使って、見事に大成功したので、この記事にはその手法をまとめます。
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◆今年のニンジン種蒔き方法
- 雨がたくさん降った翌日に蒔くために、天気予報をチェック。もし雨が降らなさそうならジョウロで水まきを反復して、とにかく土壌の中も表面も潤った状態を作る。
- 種蒔きの2日前に、ニンジンの種を水に1晩浸ける。
- 種蒔きの1日前に、ニンジンの種をキッチンペーパーで沪取(※)してキッチンペーパーが湿った状態で(暑ければ冷蔵庫の野菜室に)置いておく。
- 種蒔きの日に、竹の棒で条間を取り、足で竹の棒を踏む。竹の棒が直径約1.5cmなので、約1.5cm深さの溝が出来る。
- 冷蔵庫から出したニンジンの種をトレイに入れ、乾いた砂を入れて均一に混ぜる。乾いた砂に混ざることで、種が手につかなくなるため、播種しやすくなる。
- 竹の棒を取り、溝に種を砂ごと蒔く。
- 竹の棒をかぶせ、竹の棒を踏み、種を地面に圧着させる。
- ジョウロで水をまく。こうすれば種に直接水が当たらず、種の左右に水が落ちるだけにとどまるのでよい。
- 竹の棒の両端の下に小石か何かを置き、浮かせておく。直射日光が当たらないので溝の中は乾かず、しかし溝の中は光が差し込んで明るく、しかも蒸れない。
- あとは、日が強いときに竹の棒を外したり、強く雨が降ってきたりしたら竹の棒で覆ってしまう。
- 発芽が確認できたら、竹の棒はもう使わない。
- 発芽して、伸びてくると同時に、溝の左右が自然と崩れてきて、土寄せのかわりになる。
※沪取(ろしゅ):ろ過して流れる液体を捨て、ろ紙上のものだけを取ること。
結果的に、これが発芽大成功だったんです!!
竹の棒を使った種まきは、楽で簡単でした。スジまきのスジをつけるのも、種の圧着も、ジョウロの水流を弱めるのも、土壌の乾燥防止も、日当たり調節も、発芽後の土寄せも、全部これ1つで出来たからです。覆いと違って、ちょいと持ち上げて「まだかなー」って観察し終わったら元に戻すのも簡単です(手を離すだけですから)。
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<後日談>
この写真は、後日撮ったもの。播種9日後、写真のように、綺麗に発芽しています。
4条とも、にんじんの新芽がきれいに伸びています。発芽密度の違いは、砂の中のにんじんの種の分布の不均一でしょう。(ところどころあさつきのこぼれ球根が発芽しているのはご愛敬、笑)
あとはこれを間引きしながら、美味しいにんじんになるのを待つだけ。なんたってもう8割成功したのですからv
本当に簡単で大成功だったので、参考になる方がいらっしゃれば嬉しく思います。