中国の、特に揚子江あたりから北になると、小麦を主食とする文化が主体となります。日本だと餃子はごはんのおかずですが、中国では、皮が主食で具が主菜となる、パーフェクトな一食です。「パーフェクトな一食」という点で、日本の丼や寿司の文化に似ています。
現地での注文の仕方は、「1皿でいくら」というメニュー表記もありますが、「イージン(一斤)」、「パンジン(半斤)」、「イーリャン(一两)」という単位で注文します。しかしイージン(一斤)が500 gということは知識で知っていても、それが、餃子の重さにしたら、とてもじゃないけれど500 gには見えないほどたくさん出されて驚いたことがあります。
そこで、「水饺(シュイチャオ)」をレシピ化するにあたり、「どれだけの材料を使って作ればイージン(一斤)の餃子になるのか」をきちんと数値化するために、キッチン実験をしました。
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山東省出身で日本語が堪能な、日本の大学に勤務される先生にメールで伺った返事が、以下の通りです。
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中国で、よく「斤」「両」を重さの単位にします。グラムとキログラムも使うけど、民間特に田舎のところでは「斤」「両」を使うところが多いです。
1斤(イージン)=500グラム。
1斤(イージン)=10両(シーリャン)
「皮を作る粉の重さ」については、一般的に練る前の粉の重さです(即ち水分なし状態、乾いた粉の重さ)。
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ちなみに、広東省に住む日本語が堪能な中国人友人に聞いたところ、「よく分からない」って言われてしまったので、中国全土に餃子は広まってはいるものの、やはり米食文化圏の南方では、餃子文化へのなじみが薄いのだなと思いました。
「イージン(一斤)は、皮を作る粉の重さで500 g」ということが確認できたので、次に、予備実験として、調理過程での重量の変化を記録しました。レシピは、≫こちらです。
①皮を作る生地の量
粉250 g+水115 g+塩3 g=理論上368 g
→実測で363 g(水分蒸散などによる)
②具の量
ひき肉+ニラ(洗ったあとの付着水分を含む)+調味料=実測で265 g
※この日はニラが少し多かったのですが、レシピどおりだと250~260 gくらいに収まると思います。
③成形する前の皮と具の重量
実測値①+実測値②=628 g
④打ち粉をして包んだあとの重量
生地と具を36等分にし、生地に打ち粉をして延ばして包みました→実測値633 g(打ち粉を含む)。
⑤ゆであがり
ゆでたら748 gでした(餃子に付着する少々の水分を含む)。
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中国現地では、イーリャン(一两=一斤の1/10=50 g)と注文すると6個(サイズが小さいと7個)の餃子が買えます。
イーリャン(一两=一斤の1/10=50 g)で6個(サイズにより7個)なら、
ウーリャン(五两=パンジン(半斤)=250 g)で30~35個。
水分を含まない元の粉の重さを250 gにするレシピが、パンジン(半斤)の餃子レシピです。
上の場合では、
①→②→③:粉が水を吸って皮になって具を包んで餃子になると、重量は250 g→628 gすなわち2.5倍。
③→④:打ち粉をする過程で、重量は628 g→633 gすなわちほぼ変化なし(1.01倍)。
④→⑤:ゆでる過程で、重量は633 g→748 gすなわち1.2倍。
①→⑤:粉が餃子になる過程で、重量は250 g→748 gすなわち3.0倍。
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中国現地では、「パンジン(半斤)」と注文して2人でシェアして食べる光景をよく見かけます。
2人分の餃子が⑤748 gとすると、1人分の餃子が374 gです。
ゆでる過程で皮のみが水分を吸い、具の重さに変化がないと仮定すると、2人分の具が265 gなので、2人分の皮が748-265=483 g。
つまり、パンジン(半斤)の餃子で、1人あたり主食の炭水化物部分を242 g、お肉と野菜のおかずを133 g食べることになります。
ちなみに主食の炭水化物242 gはごはん大盛りの量です。