ナミビア料理

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【基礎情報】

国名:ナミビア共和国Republic of Namibia、首都:ウィントフック、ISO3166-1国コード:NA/NAM、独立国(1990年南アフリカ共和国より)、公用語:英語、通貨:ナミビアドル

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【地図】

ナミビアはアフリカ大陸南部の大西洋に面する国で、北はアンゴラ、東北はザンビア、東はボツワナ、南から南東は南アフリカに接しています。

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◆乾燥した大地で、バントゥーの黒人料理と南ア料理が混交する。

「Namibia is arid」(ナミビアは不毛の地)・・・英語旅行ガイドブックを開いたときに目にした、その表現が印象的でした。ナミビアは砂漠国で、大西洋に面するナミブ砂漠と、東部にカラハリ砂漠を有します。人が住めるところがあっても、そこは乾燥が激しいステップ気候で、年間300日が晴天、世界で人口密度の低い3国家の1つです。人口密度が低いということは、人が住めるところが少ないということ。でも、そこに住む人々は、います。人口の9割が黒人で、ほとんどがバントゥー系民族です。よってナミビア料理は、バントゥーの典型的な黒人料理が主体です。

オシフィマを作る少女
ナミビア-アンゴラ国境地域、ヒンバ族の女性がオシフィマを作る(撮影地オフングムレ)

南部アフリカの先住民は、コイ族とサン族でした。両者は別の集団ですが、集合名詞「コイサン」として、英語・日本語ともに一般的に使用されています。息を吸いながら声を出す(!)独特の舌打ち発音をする人々で、南ア(南アフリカ共和国)、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエなどには、今もコイサン(及びその混血)が居住しています。しかし中世にバントゥー系民族が南下したため、現在では、ナミビア人口のほとんどがバントゥー(及びその混血)です。

また、ナミビアは、第二次世界大戦まではドイツ領で、ドイツ敗戦後は南アの信託統治領(植民地)でした。南アと同じ政治体制に敷かれたため、南アのものと思われがちなアパルトヘイト(人種隔離政策)やホームランド(黒人居住地区)設置は、ナミビアでも行われていたのです。

これらのことより、ナミビア料理を知るための基礎と背景を、以下のように整理すると分かりやすいと思います。

  1. 国土は砂漠が多く、乾燥している。
  2. 人口の多くは黒人であり、黒人の料理が主体である。
  3. 戦前はドイツ領であった。
  4. 第二次世界大戦後は南ア領であった。今も南アからの輸入品が多く、料理には南アの影響が著明である。
  5. 南アに多いアフリカーナー(南部アフリカへ移住したオランダ系住民)は、ナミビアにもおり、料理名にアフリカーンス(アフリカーナーの言語)が混じるなど、彼らの影響も伺える。

ナミビアは一見不毛な土地でも、ダイヤモンドもそのほかの高価な鉱物も採れ、石油もあります。隣国のアンゴラや南アのように裕福な国になれるポテンシャルはあるのに、今も鉱山権益の一部を南ア企業や南ア政府が保持し、田舎の小規模商店でさえ南アからの輸入品が溢れているなど、独立国となった今もなお経済的な南アの支配下とも言えます。でも、ナミビア料理について学ぶのであれば、そこに住む人々を尊重して、黒人料理を主体に理解していきたいと、いつも思うのです。
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主食 Staple

ナミビアの主食は、穀物を粉にして湯で練ったもので、オシフィマ(またはオシシマ)と呼ばれます。ナミビアは北部に人口が多く、北部民族の言葉では語頭に「オ」をつけることが多く、伝統料理も地名も「オ」で始まるものが多いです。オシフィマは、語頭のオが弱く「シフィマ」(シーマ)にも聞こえます。でもこう聞こえたとき、マラウイやザンビアで「シマ」と呼ばれている同様の食べ物と同じ名前だったのか!!と気づくのです。

オシフィマは、英語でポリッジ、アフリカーンス(アフリカーナーという南部アフリカに居住するオランダ系住民の言葉)でパップと言います。南アに近い南部はパップと呼ぶことが多くなります。補足ですが、オランダ語で「Pap」はマッシュしたものやお粥状のものという意味です。

ここで気を付けるべきことは、こういうアフリカの主食は、調理法の名称であるということです。エチオピアのインジェラも、ケニアのウガリも、ナミビアのオシフィマパップも、材料を特定した名称ではなく、穀物の粉を主食として食べる形状に調理したものの名称です。

ナミビアのオシフィマは、主にはマイス(トウモロコシ)(ミーリー(トウモロコシ粉)で作られますが、トウモロコシは乾燥にあまり強くないので、灌漑農業を導入しないようなところで「伝統的」なオシフィマの材料となるのは、マハング(トウジンビエ=パールミレット)です。ソルガム(イネ科に属するタカキビの一種)で作るオシフィマもありますが、マハングのほうがソルガムよりも乾燥に耐えられるので、主たる国民食の座は、マハングで作るオシフィマといった感じです。ただ、北部の小さな町にもトウモロコシ粉の大袋が売られる時代ですので、随分とトウモロコシ粉が普及しているようにも見受けられます。また、南アからの物流の影響が強くなる首都や南部地域ではトウモロコシ粉が普遍的に流通していて、ミーリーパップ(トウモロコシ粉で作るパップ)が主体となります。

オシフィマパップの類は、肉や野菜のおかずを添えて手づかみで食べたり、また朝食などではミルクと砂糖をかけて食べたりします。北部民族は遊牧生活をしている者も多く、彼らはオマヘレ(酸っぱい発酵乳)をかけてオシフィマを食べます。

また、粉にしないマイス(とうもろこし)も主食です。ゆでとうもろこしにしていただきます。日本のスイートコーンと違って甘くないので主食に適しています。

もう一つの主食がチップスです。日本語でチップスというと薄切りじゃがいもを揚げたものを指しますが、英国や英領国家圏では、チップスは拍子木切りのフライドポテトのことです。ナミビアを支配した南アにおいて政治的実権を握ってきたのは英国人で、英国人が多数移住してきた背景から、南部アフリカにチップスが根付いたのだと思います。ソーセージアンドチップス(ソーセージとフライドポテト)やフレイスアンドチップス(ステーキとフライドポテト)などがあります。
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肉のおかず Meat

ナミビアは南アに似て狩猟やゲーム(趣味の狩猟)が盛んで、肉愛好家の国。人気はブラーイカパーナ(バーベキュー)、ブラーイが南ア方面のアフリカーンス語由来でカパーナはローカル語。カパーナと呼ぶときのほうが新鮮肉にスパイスをふって焼く傾向が強いようですが重なっているのが実態。ともあれ肉を炙るのはホームパーティーやお祝い事にもつきもの、みんなが大好きな国民的バーベキューです。
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挑戦する? We dare you

ナミビアやジンバブエに行くと、巨大なマオンゴマウングマグング)、すなわちイモムシが売られていてたじろぎます。英語ではこれをモパネワームと言います。これはとても人気の食材で、パンや缶詰がやっと買えるような小さな商店でもレジ脇でこのイモムシがどーんと売られていたり、路上でイモムシ売りのおばさんが座っていたりと、そのポピュラーさが伺えます。ナミビア在住日本人は「シシャモ味」と言っており、食べてみると確かにシシャモ度が80%はありました。油炒めや乾煎りで食べます。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食と穀物名】
  • オシフィマ(Oshifima)・・・穀物の粉を湯で炊いたもの
  • オシシマ(Oshithima)・・・穀物の粉を湯で炊いたもの
  • ソルガム(Sorghum)・・・タカキビの一種
  • チップス(Chips)・・・フライドポテト
    • ソーセージアンドチップス(Sausage and Chips)・・・ソーセージとフライドポテト
    • フレイスアンドチップス(Vleis and Chips)・・・ステーキとフライドポテト
  • パップ(Pap)・・・穀物の粉を湯で炊いたもの
    • ミーリーパップ(Mealie Pap)・・・トウモロコシ粉で作るパップ
  • ポリッジ(Porridge)・・・穀物の粉を湯で炊いたもの
  • マイス(Maize)・・・トウモロコシまたはトウモロコシ粉
  • マハング(Mahangu)・・・トウジンビエ
  • ミーリー(Mealie)・・・トウモロコシ粉
    • ミーリーパップ(Mealie Pap)・・・トウモロコシ粉で作るパップ
【乳製品】
  • オマヘレ(Omaere)・・・牛乳または酸っぱい発酵乳
【その他食材】
  • マオンゴ(Omaungu)・・・大きなイモムシ
  • マウング(Omaungu)・・・大きなイモムシ
  • マグング(Omagungu)・・・大きなイモムシ
  • モパネワーム(Mopane Worm)・・・大きなイモムシ
【調理法】
  • カパーナ(Kapana)・・・バーベキュー
  • ブラーイ(Braai)・・・バーベキュー

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