デンマーク料理

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  • カレーの項を新規掲載しました。

【基礎情報】

国名:デンマークKingdom of Denmark、首都:コペンハーゲン、ISO3166-1国コード:DK/DNK、独立国、公用語:デンマーク語、通貨:クローネ

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【地図】

デンマークは、南は陸でドイツと接し、東の海を渡るとスウェーデンです。

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◆乳製品とじゃがいもと豚肉が主体の、北欧らしい食文化

アンデルセン童話やヴァイキングの歴史で知られるデンマークは、ドイツの北の端から突き出たユラン半島(ユトランド半島)と443の島(有人島は76)からなる、九州地方とほぼ同じサイズの小さな国です(フェロー諸島とグリーンランドを除く)。今のデンマーク、ノルウェー、スウェーデンのあたりは、かつてはヴァイキング(ゲルマン系民族の中のノルマン人)が席巻し、うちデンマーク地方に居住した者はデーン人と呼ばれデンマーク人の祖となりました。デーン人はデンマークの国名の由来でもあります。

チーズ販売車
朝市の会場に登場したのは、チーズ専門の販売車。(撮影地オーデンセ)

デンマーク料理の基本食材は、寒冷地ならではのじゃがいもと、養豚が盛んゆえの豚肉と、また、酪農が盛んゆえのチーズ、クリーム、バターミルク(バターを取ったあとのミルク)などの乳製品です。食材や料理法はシンプルで、バリエーションにはそれほど富まないという印象です。家庭には基本的にオーブンが備え付けられており、オーブンで焼く、あるいは鍋で煮込むという簡単な調理法が多いのです。香辛料が刺激的な料理はあまりありません。煮込み料理やオーブン料理を鍋ごと食卓に置いて、取り分けていただく、そんなシンプル調理の光景は、北欧料理の典型風景です。
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主食 Staple

主食は、昔(今の年配者が若い頃まで)はカトフェル(じゃがいも)でした。近年は主食をブロ(パン)とする傾向が強くなったものの、カトフェル(じゃがいも)は今も主食兼付け合わせの定番です。

デンマークはブロ(パン)は美味しく、家庭でも気軽に焼かれています。フランスクブロ(フランスパン)やルーブロ(ライ麦パン、ルー=ライ麦)がよく登場します。ルーブロ(ライ麦パン)は生地を発酵させて焼くので酸味があります。
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肉のおかず Meat

デンマークで食べる肉は主に豚肉です。豚肉の生産大国で、日本にも大量の豚肉を輸出しており、実は沖縄で人気のTULIP社のランチョンミート缶はデンマーク産であるほどです。デンマークでは、豚肉は、ハム、ベーコン、オーブン焼き、カツレツ、ポークチョップ、肉団子など、いろいろな料理法で食べられます。

フレスケスタイは、クリスマスには特に定番の豚の背中の肉の丸焼きで、表面の脂身をカリカリに焼き上げて肉はジューシーで、実に美味しい。フリカデラーは肉団子料理の代表で、つくねのように俵型に成形して焼いた豚肉です。エープルフラシュク(エープル=リンゴ、フラシュク=豚肉)は豚薄切り肉を焼いたものにリンゴソテーを合わせた料理です。その他の肉類としては、鶏肉や牛肉などの消費も増えてきています。更に秋にはトナカイ肉が狩猟解禁となって出回ります。お肉好きのデンマーク人は、日が長い夏の間は、よく庭でバーベキューを楽しみ、肉をドカンと焼いてみんなで切り分けて食べるのです。
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魚介のおかず Seafood

多数の島と長い海岸線を持つだけに、魚料理も多くあります。チョフシュク(タラ)、ガーヤ(エビ)、エエル(ウナギ)、シル(ニシン)、ラクス(サーモン)などが定番の食材ですが、中でもシル(ニシン)は酢漬け、燻製、フライ、焼き物と、あらゆる調理法で登場します。ニシンの酢漬けはしめ鯖が好きな日本人なら絶対気に入る美味しさです。
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カレー Curry

デンマークと聞いて国の代表的な料理がカレーだとは驚きますか? しかしデンマークにカレー粉が導入(1837年)されて以来、ボライカリー(ミートボールのカレー)はもうすぐ2世紀にもわたるデンマークの国民食です。ニシンの酢漬けにもカレーマヨネーズソース味が人気です。なおデンマーク語はRの発音がフランス語風なので舌うちしません。だからボライカイという発音が近いです。
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乳製品 Dairy Products

デンマークは酪農が盛んな国なのでオスト(チーズ)は多種類のものが売られ、食事にもデザートにも、美味しいチーズがよく登場します。ダンボー(ソフトなチーズ)、ダナブルー(ロックフォールに似たブルーチーズ)、マリボー(オランダのゴーダをモデルにしたチーズ)など、世界的に有名な銘柄がたくさんあります。
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軽食 Quick Eats

デンマークは物価が非常に高く、スーパーで安い食材を買っても、日本の高級店かと思う価格揃い。カフェや食堂でちょっとお腹を満たすだけなのに1000円は軽く超えてしまうハイパー物価高。この点はやはり北欧なのですね。そこで安い軽食として人気があるのが路上のホットドッグです。フランスパンを使うのでフランスクホットドッグ(フランスのホットドッグという意味)あるいはプルセボーン(プルセ=ソーセージ)と呼ばれます。500円くらいで食べられるし(それでも高いですが)、旅行者にも嬉しいはず。見慣れない形状をしていて、短めのフランスパンの両端を切り落としたようなパンに、パンよりも長いソーセージを差し込み、両端がはみ出るようにしたものがメジャーです。

また、日本でも「デニッシュパン」の名が知られていますが、これは直訳して「デンマークのパン」という意味です。デンマーク人が創りあげた、小麦粉の生地とバターを層に織りなした円盤型のパンですが、層を作る技術はオーストリアのウィーンからもたらされたことから、デンマーク人はビエナブロ(ウィーンのパン)と呼びます。
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挑戦する? We dare you

デンマークは甘いものやパティスリー系も豊富ですが、そんな中、日本人が味に驚くものが、ラクリスという、甘草エキスを使ったグミのような真っ黒なお菓子です。薬局の匂いというかアンモニア臭がするというか、ともあれ臭いのですが、しばらく微妙に思いながらも食べていると、そのうちラクリスを食べないと寂しく思うようになる。北欧各国に根付いている伝統お菓子であり、フィンランドのサルミアッキと同じものです。
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お酒 Alcoholic Drinks

デンマークのお酒といえば、蒸留酒が有名です。強いお酒を総称してスナップと呼びます。中でもじゃがいもが主食級の国ゆえにアクアビットというじゃがいもの蒸留酒が人気で、オールボーいう銘柄が有名です。またデンマークではお隣のドイツと同様にウル(ビール)も愛されており、工業製品としてはカールスバーグが有名で、そのほか多数の地ビールも売られています。
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食習慣 Habits & Customs

デンマークでは、温かい食事は通常1日1回、夕食です。朝食は、パンにバター、ジャム、チーズ、ハム、そしてコーヒー。あるいはコーンフレークやミューズリー、ヨーグルトや牛乳。

昼食になると、冷製の食事でも豪華になり、スモーブロ(スモー=バター、ブロ=パン)がよく登場します。ルーブロ(ライ麦パン)などのパンをスライスして、ポレッグ(様々な具)を自由に乗せるオープンサンドイッチです。レストランやカフェで食べれば綺麗にゴージャスに盛り付けてあって旅行者も大満足。でも、家庭の、ハムやチーズの普段着のスモーブロも魅力です。具には、ニシンの酢漬け、サーモン、エビ、ウナギの薫製、スキュ(豚肉などの煮こごり)、レバポスタイ(レバーペースト)、ローストビーフ、ハム、ベーコン、チーズ、ゆで卵、昆布、ビーツ、紫キャベツ、トマト、ピクルス、キュウリ、アスパラガス、ケイパー、など、本当に何でもありです。パンに具を乗せたものをお皿に乗せて、ナイフとフォークで頂きます。このようなスモーブロはホームパーティーの定番料理でもあり、スモーブロ専門のレストランがあるほど、国民的人気を博しています。
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最後に Acknowledgments

以上、デンマーク料理について、概観いたしました。

最後に書きたいことは「お皿に注意」です。デンマークだけではなく欧州にはよくあることなのですが、彼ら、食器を洗剤で洗ったあと、すすぐ習慣がないのですね。泡がついたまま乾燥放置するか、泡がついたままふきんでふくのです。私はホステルのような安宿で欧州の人が洗い終わった食器を使ってごはんを食べたとき、ごはんにまとわりつく洗剤の不味さに泣けたことがあります。一度食器を洗っている人に「最後は泡は水で流さないの?」と聞いたら「洗ったんだからきれいよ」って言われたことがあり、いやいや海を越えた文化の違いに驚く瞬間です。

デンマークは、物価がハイパー高くて、旅行者には長居しにくい国ですが、それでも中欧とは何かが違う、「北欧の典型的な食文化」を、ドイツからちょっと足を延ばしただけで感じることができる。その料理は魅力がいっぱいです。日本人はビザ取得の関係で気軽にロシアを抜けることができないこともあり、スカンジナビア半島諸国は「海を越えたご近所さん」です。そんなスカンジナビア半島諸国との共通の文化を、かつてヴァイキングが海社会を席巻した名残のように感じてもらえたら、嬉しいです。

デンマーク料理に出会えたことと学べたことに感謝すると共に、本稿が、デンマークを旅して、デンマークの料理を知りたい人の一助になれれば、嬉しく思います。

ただ、デンマーク語は発音が難しい! 日本人が英語の勉強で習うようなアルファベットの読み方では全然通用しないので、レストランのメニューもとてもじゃないけど現地発音に起こせないのですが、ともあれ当たって砕けろ、行ってらっしゃ~い!
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

★がついているものは、左がよくある日本語カタカナ表記で右が旅先で出会ったデンマーク人の発音に最も近いカタカナです。今後検証します。

【主食】
  • カトフェル(kartoffel)・・・じゃがいも
  • スモーブロ★スメアボル(Smørrebrød)・・・オープンサンドイッチ
  • ブロ★ボル(Brød)・・・パン
    • フランスクブロ(Franskbrød)・・・フランスパン
    • ルーブロ★ホーポル(Rugbrød)・・・ライ麦パン
【肉類のおかず】
  • エープルフラシュク(Æbleflæsk)・・・焼いた豚薄切り肉にリンゴソテーを合わせた料理
  • スキュ(Sky)・・・豚肉などの煮こごり
  • フリカデラー(Frikadeller)・・・焼いた肉団子
  • フレスケスタイ(Flæskesteg)・・・豚の背中の肉の丸焼き
  • ボライカリー(ボライカイ)(Boller i Karry)・・・肉団子のカレー
  • レバポスタイ(Leverpostej)・・・レバーペースト
【魚介類】
  • エエル★オオル(Aal)・・・ウナギ
  • ガーヤ★ハーヤ(Rejer)・・・エビ
  • シル(Sild)・・・ニシン
  • チョフシュク(Torsk)・・・タラ
  • ラクス(Laks)・・・サーモン
【その他おかず】
  • ポレッグ(Pålæg)・・・スモーブロに乗せる様々な具の総称
【乳製品】
  • オスト(Ost)・・・チーズ
    • ダナブルー(Danablu)・・・ブルーチーズの有名銘柄
    • ダンボー(Danbo)・・・ソフトなチーズの有名銘柄
    • マリボー(Maribo)・・・ゴーダチーズのようなチーズ
【軽食】
  • ★ビーナボル(Wienerbrød)・・・デニッシュパン
  • フランスクホットドッグ(Fransk hotdog)・・・ホットドッグ
  • プルセボーン(Pølsevogne)・・・ホットドッグ
【おやつ】
  • ラクリス(Lakrids)・・・甘草エキスの真っ黒なグミやキャンディー
【お酒】
  • アクアビット(Akvavit)・・・じゃがいもの蒸留酒
  • ウル(Øl)・・・ビール
  • スナップ★ス(Snap★s)・・・強いお酒の総称

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