+++新着+++
- 「お酒」の項を新設しました。
【基礎情報】
国名:セネガル共和国、Republic of Senegal、首都:ダカール、ISO3166-1国コード:SN/SEN、独立国(1960年フランスより)、公用語:フランス語。通貨:セーファーフラン(XOF)。
【地図】
セネガルは長い海岸線や砂漠地帯をもつ国です。近隣国は、北から右回りに、モーリタニア、マリ、ギニア、ギニアビサウがあり、セネガル内部にガンビアがあります。
◆海と砂漠の両方の文化。日本人の多くが好きになれるアフリカ最西端の料理。
アフリカ大陸最西端にあるセネガルは、ブラックアフリカの最果ての国と言えます。北にはアラブ主体のモーリタニアがあり、アフリカをモロッコから南下するように旅をすると、セネガルに入って「ブラックアフリカに来た!」と身をもって体験することになります。
夕暮れの路上カフェで、カフェトゥーバを淹れるおばさん。(撮影地カオラク)
砂漠あり、沿岸あり、乾燥地帯もサバンナも熱帯雨林もある国土において、セネガル料理を語る重要な食材は、ヒエと米と落花生(ピーナッツ)、そして魚と羊です。
首都ダカールを含む北部の主要民族はウォロフ族です。北部は雨も少なく、内陸は砂漠を擁しています。一方で、かつてポルトガル領だった南部カザマンス地方は、主要民族はジョラ族で、降水量が多く気温も高く、農作物が豊富で、稲作も行われています。また砂漠の遊牧民であるプル族(フラニ族の一派)もおり、彼らからもたらされる乳製品もセネガルの主要な食材です。
セネガル料理はそれほどバラエティが多くないので、重要キーワードをまずは頭に入れてみましょう。そうすれば料理名から内容がよく分かります。セネガル料理名にはフランス語もしばしば混交するので、併記しておきます。
- チェブ=米(フランス語でリ)
- ジェン=新鮮な魚(フランス語で魚はポワソン)
- ケチャ=干した魚
- ヤップ=肉(フランス語でビヤンダ)
- ギナール=鶏肉(フランス語でプレ)
主食 Staple
セネガルがフランスから独立する1960年までは、主要作物と言えるものは落花生(ピーナッツ)程度しかなく、人々はミレット(トウジンビエ)などの雑穀を主食としていました。チェレはミレットを炊いたものです。プル族の遊牧民文化がもたらしたミャウと呼ばれるバターミルク(バターをとったあとの残りのミルク)をかけていただきます。村落では今も朝晩チェレを食べています。
現在のセネガルの代表料理にはチェブ(米)を使う料理が多くあります。
ごはんとおかずのバランスは、日本が「一汁三菜」なのに対し、セネガルでは「一菜」の食事をとります。つまり、ごはんと何かを一緒に炊いてしまうか、ごはんに何かをかけるかのどちらかです。大人数の食事も、直径が何十センチもあるタライみたいな大皿に料理を乗せ、みんなで同心円状に向き合ってタライを囲んで、突っつきあうように食べるのです。床に座って食事をいただく、そして一日のうち昼食が一番重い(朝食と夕食は昼食よりも軽い)のが彼らの習慣です。
チェブジェンはジェン(魚)を使った炊き込みごはんです。ジェン(魚)と野菜(にんじん、キャベツ、苦いなすなど)を煮てから具を取り出し、油煮汁でチェブ(米)を炊き、食べるときに具を味付きごはんの上に乗せます。トマトを使って赤く炊くものと、使わずに白く炊くものがあります。ヤップ(肉)やケチャ(干し魚)でも同様に作り、それぞれチェブヤップやチェブケチャと呼ばれます。チェブケチャはたいていニェベ(あずきのような豆)を一緒に炊きます。
なお、セネガルの主要な米どころは南部のカザマンス地方で、多くの地域ではあまり稲作が行われておらず、ベトナムなど東南アジア産の米が砕き米(リキャセ、Riz cassé)の状態で流通し、これだけ米料理の種類が多いのに、米の自給率はおよそ3割しかありません。
▲目次に戻る
ヤーサとマフェ Yassa & Maffe
セネガル料理では、ヤーサやマフェが有名です。周辺国や欧米などでセネガル料理店を営むセネガル人の店では、ヤーサとマフェはほぼ必ずメニューに乗ると思ってよいほどです。なお日本語ではヤッサの名で定着していても、現地の発音はヤーサです。
ヤッサではなくヤーサ。セネガル人が教えてくれた貴重な発音。
ソスヤーサ(たっぷりのレモン玉ねぎソース)を作って鶏肉や魚などの具と煮合わせる料理で、ギナールを使ったヤーサはヤーサギナール(ギナールをフランス語に置き換えて、プレヤーサ、プレオーヤーサ、ヤーサオープレとも)と呼ばれます。同様に、魚で作るヤーサはヤーサジェン(ヤーサオーポワソン)、シーパ(エビ)を使うとヤーサシーパです。酸味が特徴の料理を白いご飯の上にかけて食べたときの味わいは、どこか甘酢あんかけ丼に似た味わいがあります。
また、上述の通り、独立の頃の主要産業には落花生(ピーナッツ)の栽培くらいしか目立ったものがなかったセネガル。ピーナッツペーストをたっぷり加えた煮物をマフェと言います。これも別鍋で炊いた白いご飯にかけていただきます。
▲目次に戻る
ポルトガルやフランス Portugal & France
上述の「南部カザマンス地方」について。
セネガルは、国土の中にガンビアという国を含んでおり、ガンビアより南部はカザマンス地方と呼ばれ、昔ポルトガル領だったところです。主要都市であるジガンショールもポルトガルが作った街。気候は多雨多湿高温で、稲作も含め、農作物に恵まれています。上述のヤーサはこの地域の代表料理で、ヤーサのような酸味ある料理は、インドのゴア(インドの中で部分的にポルトガルが支配した部分)で酢入りカレー(ビンダルー)が定着していることや、ポルトガルの国民食のエスカベーシュ(酢漬け料理)と関連しているような気がします。ポルトガルは大航海時代に船の上でも日持ちする食糧の加工として酢料理を多く開発したためです。
もちろん、セネガル料理全体を見れば、外国の影響で最も有力なのはフランスです。元フランス領の国にはよくあることなのですが、セネガルでもフランスパンは政府公定価格で売られ、価格が吊り上がることがないように保護されています。都市でも農村部でも、甘いインスタントコーヒー(ネスカフェ)にフランスパンという朝食の光景はよく見られます。また、都市部でちょっとお金のかかる美味しくてお洒落なお店があれば、それは大抵フランス料理店なのです。
▲目次に戻る
お酒 Alcoholic Drinks
セネガルではビエール(ビール)を製造しています。人気がある銘柄には、ガゼルとフラッグがあります。さっぱりしていて美味しい。
▲目次に戻る
宗教に関連して Food & Religion
セネガルに行くならば、セネガルの宗教について理解しましょう。
セネガル人は約9割がイスラム教徒です。でもセネガルにおけるイスラム教は柔軟性があり、女性も割と肌を出していますし、お酒もよく売られています。
イスラム教の行事と食生活の関連では、まずはラマダン(断食月、年によって時期は少しずつずれる)が重要です。ラマダンの間は日中食事を採らず、日の入りの時刻になるとまずすきっ腹にドグと呼ばれるお茶や軽食をとります。タンダルマ(ナツメヤシ、デーツ)は糖分が豊富なドグの代表的なつまみです。そしてお腹が落ち着いたらゆっくりと夕食をいただきます。
ラマダン明けを祝うお祭りはコリテと呼ばれ、ごちそうを食べます。コリテから2ヶ月と10日が経つとイスラム教最大の祭り「タバスキ」(犠牲祭)です。各地各家庭で羊を屠殺し、大量の羊料理を食べてタバスキを祝います。もちろんクリスマス(ノエル)も祝えば正月もある、セネガルではお祝い事は大事な生活習慣になっているのです。
▲目次に戻る
料理名一覧 Food & Drink Glossary
【主食・米料理】
- チェブ・・・米
- チェブケチャ・・・干し魚の炊き込みごはん
- チェブジェン・・・魚の炊き込みごはん
- チェブヤップ・・・肉の炊き込みごはん
- チェレ・・・ミレットを炊いたもの
- ミレット・・・トウジンビエ(ヒエの一種)
- リ(Riz:仏)・・・米
- リキャセ(Riz cassé:仏)・・・砕き米
【煮込み料理】
- マフェ(Maffe)・・・ピーナッツペーストの煮物
- ヤーサ(Yassa)・・・ソスヤーサ(Sauce yassa、レモン玉ねぎソース)で鶏肉や魚などを煮合わせる料理。
【肉類】
- ギナール(Ginaar)・・・鶏肉
- ビヤンダ(Viande:仏)・・・肉
- プレ(Poulet:仏)・・・鶏肉
- ヤップ・・・肉
【魚介類】
- ケチャ・・・干した魚
- シーパ・・・エビ
- ジェン・・・新鮮な魚
- ポワソン(Poisson:仏)・・・魚
【野菜や豆】
- ニェベ・・・あずきのような豆
- ヤーサ(Yassa)・・・レモン玉ねぎソース
【軽食・おやつ】
- タンダルマ・・・ナツメヤシ、デーツ
- ドグ・・・お茶や軽食。
【乳製品】
- ミャウ・・・バターをとったあとの残りのミルク
【飲み物】
- カフェトゥーバ(Café Touba:仏)・・・セリム(ギニア生姜)風味の甘いコーヒー
- ビエール(Bière)・・・ビール
- ガゼル(Gazelle)・・・ビールの1銘柄
- フラッグ(Flag)・・・ビールの1銘柄