スパイスの名称で混同しやすいものの1つが、ローレル、ローリエないしベイリーフです。今回この記事を書くに至った発端は、脳のどこかで覚えていた、以下のフレーズかもしれません。
◆スパイス業界にお願いしたいこと|インド料理研究家香取薫日記(≫こちら)
こちらのブログで、
「インド料理のレシピに月桂樹の葉をローレルと書くのも変な話なんです。インドはイギリス英語圏なので、インド人にローレルなんてフランス語で言っても通じません。インド料理の場合はベイリーフ、これは私の小さなこだわり。」
そーだよなー。
しかも日本は英語が義務教育に組み込まれているだけあって、多くの英単語が通用する国だから、月桂樹の葉は、外国語で表記するなら、ベイリーフが最も通りが良いように思います。
とはいえ、月桂樹の葉の外国語の名称や学名をしっかりと知らないことには、こういうことを語ることができません。「イメージで語るのはよくない」ので、今回は月桂樹の葉の名称について、私なりに、腑に落ちるところまで検証することにしました。
* * *
植物名は、
学名:Laurus nobilis(ラウルスノビリス)
和名:ゲッケイジュ(月桂樹)
◆フランス語Wiki(≫こちら)
ローリエ(Laurier)
◆スペイン語Wiki(≫こちら)
ハーブ慣用名は、ラウレル(Laurel)またはラウロ(Lauro)
◆英語Wiki(≫こちら)
Laurus nobilisという植物のページがあり、Bay laurelのページからはここに自動転送される。
学名でラウルスノビリス、日本語で月桂樹という植物は、ベイローレルと呼ばれている。
よって、ベイローレルは植物名を指す地中海が原産。
また、Bay leaf(ベイリーフ)というページは別途存在した。(≫こちら)
ベイリーフは、ベイローレル(学名ラウルスノビリス、Laurus nobilis)やカリフォルニアベイ(学名ウンベルラリアカリフォルニカ、Umbellularia californica)の木の葉である。その他インド、インドネシア、カリブ海、メキシコにもベイリーフと呼ばれる木の葉がある。
世界各地にベイリーフなるものが存在することは、ページ内の次の記述を読むと理解できる。
「Worldwide, many other kinds of plants in diverse families are also called “bay” or “laurel”, generally due to similarity of foliage or aroma to Laurus nobilis, and the full name is used for the California bay laurel (Umbellularia), also in the family Lauraceae.」
(世界的には、異なる科の植物であっても、ベイとかローレルなどと呼ばれているものが多数ある。「ベイローレル」の名称をダイレクトに使うものとして、「カリフォルニアベイローレル」(学名ウンベルラリア)がある。)
月桂樹は学名がラウルスノビリスです。しかし学名がラウルスノビリスでなくても、形や香りが似ていることからベイとかローレルなどと類似した名称で呼ばれる植物は多数あるということです。
英語Wikiには、ウンベルラリアのページも存在しました。(≫こちら)
上述のように、確かに「カリフォルニアベイ」と呼ばれる植物でした。
興味深かった点は、ウンベルラリアすなわち「カリフォルニアベイ」が本当に太平洋沿岸に分布していたことです。
「本当に沿岸の木、ベイの木なんだ!!」
ベイ(bay)とは、ちょっと入り組んだところや、湾になるようなところを指すことが多い英単語です。でも、カリフォルニアにおいては、入り組んでいる地形だけでなくその周辺を含めてベイエリアと広く呼ぶようにも思います。このカリフォルニア沿岸に生える木の葉だからベイリーフと言うのだと思いました。
なおそのページ内には、
「The leaf can be used in cooking, but is spicier and “headier” than the Mediterranean bay leaf.」
(カリフォルニアベイリーフは地中海ベイリーフよりも香りが強い)
と書いてありました。
* * *
では、まとめです。
◆今回知りたかったこと
「ベイリーフ」の「ベイ」って何?
答えは、ベイエリアないし沿岸部に分布する木の葉(リーフ)だからベイリーフ。ベイもリーフも英語なので、ベイリーフも英語とみなせます。
◆月桂樹あるいはその葉の、各言語での呼び名
学名ラウルスノビリスは、日本で月桂樹と呼ばれる木。
この葉は、
・フランス語でローリエ
・スペイン語でラウレル
・英語でベイローレル、ベイリーフ。よってローレルも英語での呼び方である可能性がある。
◆世界各地のベイリーフ
インドやインドネシアその他において、学名ラウルスノビリス(月桂樹の葉)でなくても、ベイリーフと呼ばれる香りのある葉がある。つまり、インドやインドネシアのベイリーフと日本のベイリーフは異なる植物かもしれない。
この点については、以下の画像で検証することができました。1つめのベイリーフは、学名がラウルスノビリスなので月桂樹です。2つめのベイリーフはインドの輸入食品であり、月桂樹とは葉脈の走り方が違います。現地でテジパッタ等と呼ばれるやつですね。
◆月桂樹に類似した木と葉がある
学名ウンベルラリア。「カリフォルニアベイ」と呼ばれる。だから、ウンベルラリアの葉もベイリーフと呼ばれる。
【推論の結論】
結局、世界各地の呼称を俯瞰すると、ベイリーフという名称を使うのが最適なのではないだろうか。
という結論に至りました。
* * *
いつも、ベイリーフを使うレシピを書く際には、ローレル?ローリエ?ベイリーフ?と、呼称の悩みが頭をよぎります。以下のGABAN社の製品名はローリエですね。
いつも、例えば私が仕事をする上でも、自分に言い聞かせる言葉があります。
「正解はひとつではない」
私は私の水準で知識を得て自分で正解と思うことを採択して進んでいく。そしていろんな人がいれば、いろんな視点や水準があるから、物事には、いろんな正解がある。
今回取り上げた、月桂樹の葉の名称もそうだと思います。私は、スパイスに馴染みはじめた一般の消費者向けという視線に立っても、「月桂樹の葉」という直接の日本語名を使わないのであれば、日本で通用する2番目の言語(英語)でベイリーフと表記するのが最も親切であり分かりやすいように思います。でもいいんですローレルでもローリエでも。それはそれで、呼称は、販売企業が、ちゃんと調べて考えた上で販売に至っているのだと思うから、その表記も正解だから、尊重します。
私の立場としては、自サイト内でレシピを公開するときには、上記の主張によりベイリーフという名称を最も多く使っていくと思います。しかし時にはさまざまな呼び名を使うこともあるかもしれません。ともあれ、さまざまなケースに対応していけるように、そしてそれを、知らずに漠然とブレるような使い方ではなく、出来るだけ正しく豊富な知識の上に立って、「分かった上で行動する」ように、引き続き努力していこうと思います。