アイスバインというドイツやオーストリアの郷土料理があります。
私はこれを、ジビエ料理の一環で、イノシシ肉を使って作りました。
皮つきの肉を残すのは非常に手間がかかる。私はお肉だけでなく内臓各種も舌(タン)も取りたいから、処理の優先順位は内臓類のほうが先だったことから、肉の解体は短時間で終わらせないといけなくて、皮を残すことはできませんでした。それでも素晴らしいアイスバインを作ることができました。
下の写真はイノシシ解体時、得たパーツの一部分です。
このほかにも、いわゆる豚足、頭、背肉、腹の肉、スペアリブなどなどなど、とにかく食べるところが多いのは、自分で個体からさばく肉だからです。
アイスバインの材料は比較的限定されませんが、主には豚の足の骨つきの肉を使い、ソミュール液に漬け込んで10日間冷蔵庫でじっくりと待ちます。
ソミュール液を作るのは、水、塩、砂糖、こしょう、ベイリーフ、ドライタイム、クローブ、マジョラム、キャラウェイ、その他ちょこちょこと。10日間の間は毎日上下を返します。
ちなみにこういうプラゴミ系の袋は再利用のものです。
10日後はこういうふうになっています。
これを水から煮ます。火からおろす20分前に皮をむいたじゃがいもを入れます(これが美味しい)。
できた♪♪
結局のところ調理は「漬ける」と「煮る」しか行っていないので、手が離せる作業ばかりだから、アイスバインの調理自体はらくちんですね。
大きく作るから内側のパサパサにならない部分が多くて、でもソミュール液の旨味は10日も漬け込んだことで内部まで浸透しています。
肉自体にこれほど心地よい旨味がつくのかと、唸ります。
色が茶色いって否定的な感想ですか?
それ間違えてますよ。
加熱したお肉は茶色いはずでしょう?
ハムやベーコンが不自然なほどのピンク色で、ひどいことにソーセージは真っ赤にしたり、アミノ酸系化学調味料を入れて、日本もそういう時代を何十年も過ごしたことで、日本人はハムやベーコンの類を、まがいものでないと信じなくなってしまってきている。。。
今回の料理は発色剤という食品添加物である亜硝酸塩(人体に毒になるやつ)を入れずに加熱調理したので、こういう無添加のお肉料理は茶色くなっていいんです。自然のお肉料理は茶色くていいんです。
さあさあ、ゆでじゃがとザワークラウトとマスタードを添えて赤ワインをドンと出す♪♪
なんかね、涙が出るほど美味しかったですね。柔らかさが極上で、骨の際(きわ)まで優しい味が染みわたり、これは簡単に言えばゆでハムなのですが、自然に由来するものだけを使い、健康そのものの野生肉を使うこのジビエアイスバインは素晴らしい料理でした。たとえスーパーで塊肉を買えたところで、生き物として無残な飼育環境で育った豚ではこの自然の味を感じることはないのではないでしょうか。
脂身のない夏の季節でしたが、それでも肉質が美味しいコンビーフのようで、肉が旨くて、肉が素晴らしくて、肉から感動が沸き上がるんです。
日本の肉料理にはない、肉を知り尽くす人々の肉料理ってなんて美味しいんだろう。
「肉を知り尽くす人々の肉料理」
世界の素晴らしい料理を再現できて嬉しいです。そして私が住む地域がもつ、この里山の食材の恵みにも感動します。
ジビエ肉でこれからも世界の料理を、人として感動の味で作っていける。
ここで暮らすことは、世界への玄関だね。幸せですね。