セントルシア料理

[last update 2015/01/05]

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カリーの下はプロビション。ゆでたイモ類やパンの木の実の盛り合わせ。(撮影地グロスイレット)


基礎情報セントルシアSaint Lucia、首都カストリーズ、ISO3166-1国コードLC/LCA、独立国(1979年英国より)、公用語英語、通貨東カリブドル

◆アフリカ黒人文化を継承するクレオール料理

カリブ海の国が連なる中、南米大陸に近いあたりにセントルシアがあります。

カリブ海の国セントルシアは小さな島国で、主要産業はバナナを中心とする農業と、世界遺産ピトン火山や美しい海を擁した観光業です。北に隣接するのはフランス領マルティニーク、南に隣接するのは元英領セントビンセント・グレナディーンです。セントルシアはフランスと英国に交互に何度も支配され、言葉や地名、食べ物に両方の文化が混交しています。セントルシア人は植民地時代に奴隷として運ばれてきたアフリカ人の子孫であり、混血も含めて人口の95%以上がアフリカ系の黒人です。地元の人はフランス語とアフリカの言語が混ざってできたパトワ語を話します。

セントルシア料理は「クレオール」という言葉なしには語れません。アラワク族やカリブ族などの先住民族は、労働に使役され、植民者が持ち込んだ病気にかかったりするなどして絶滅し、新たな労働力(奴隷)としてアフリカ人が移送されてきました。そうして支配者層の白人と黒人の混血が生まれ、言語も食文化も、双方の要素が混合していきます。「クレオール」とは、狭義には白人と黒人の混合を意味する言葉です。

また、奴隷制廃止後には、英国がカリブ海に多くの移民を導入する政策により、多数のインド人が移住してきました。経済的には米国が幅を利かせ、米国からのインスタント食品やインスタント調味料も流入しています。そういう数々の影響がミックスされた文化が、今のセントルシアの土台です。

というわけで、セントルシア料理の基礎としては、
1)暑い気候のトロピカルな島国。
2)先住民は絶滅。
3)アフリカ人奴隷の子孫が主体の国
4)英領や仏領を経験し、クレオール文化が浸透。
5)インドの影響あり。
6)産業に弱く食糧の輸入率が高い。特に米国からの輸入は多い。

こういう背景が混交してできたクレオール料理であることを理解しておきたいと思います。
だいたいのことはカリブ海の多くの国との共通しています。

植民地時代に盛んだったサトウキビの生産こそ廃れたものの、島の実りとして、バナナ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、パッションフルーツ、グアバなどフルーツは豊富ですし、魚もたくさん採れます。

セントルシアの国民食と呼ばれるものには、ソルトフィッシュがあります。塩漬けした魚を戻して塩抜きしてトマトや玉ねぎと炒め煮にするもので、昔アフリカ人奴隷にとっては貴重なタンパク質源でした。

その他の国民食には、グリーンフィグ(プランテーン、皮が緑で中は甘くない、イモ的感覚で食べるバナナ)、ブレッドフルーツ(パンの木の実、ソフトボール~ハンドボールくらいの大きさの緑の実で、焚き火の中に放り込んで中までホクホクにしてイモ的感覚で食べる)、ベイク(揚げパン)、プロビション(ゆでたイモ類ミックス)など。

プロビションとは「食糧の供給」という意味をもつ英単語。プランテーン、ダシーン(タロイモ)、ヤム(ヤム芋)、その他イモ類、ブレッドフルーツ(パンの木の実)など、お腹にたまる炭水化物類を総じてこう呼びます。いろいろなおかずを合わせて食べられています。何がなくともプロビションがあれば生きていけると、カリブ海の奴隷時代から存在するものなのでしょうか。英領ゆえインド人の移住が多かった影響で、カリー(ずばりカレー)やコロンボ(唐辛子を含まず芥子を含んだコロンボパウダーミックスで作るカレー)などもよく食べられていますが、セントルシアをはじめとするカリブ海諸国では、カレーの主食がこのプロビション(イモ類ミックス)だったりするのです。

その他、インドの影響とされる人気料理には、ロティがあります。カレー味の具(じゃがいもがメジャー)を、小麦粉の薄焼きクレープで包んだものです。なおここでいう「インド」とは今のインドとは違うことに要注意。現在のパキスタンもバングラデシュも、昔はインドでしたから。

一方、元フランス領ゆえ、あるいはフランスの影響を受ける近隣諸国(例えば隣国マルティニークなど)と共通する料理としては、ブヨン(ダンプリンと呼ばれる粉を練ったスイトンのようなものと肉野菜などのごった煮)、ブジン(血のソーセージ)、アクラ(魚フレークが入った揚げパン)、コロンボなどがあります。フランス領を経験した国は世界中どこに行ってもパンが美味しいもので、セントルシアでもパンは美味しいということです(・・・残念私は食べてない)。

個人的に、セントルシアの料理を見ていて、近いなーと思うのが、マルティニーク料理です。もちろんセントビンセント料理なんかも(お隣だし)めちゃくちゃ近いものがあるんですが、そういう元英領国家にはないものがセントルシアにはあって、これってやっぱりフランスが入ったカリブ海の国っていう背景を慮るのです。上述のブヨンなどは、ハイチ(フランスから独立したカリブ海初の黒人国家)でも有名な料理です。

また、セントルシアを始め、カリブ海諸国の多くは中世にアフリカから連れてこられた奴隷の子孫が主体であることはすでに述べましたが、アフリカを強く感じる料理には、カラルー(緑の葉を刻んでとろとろに煮たもの)があります。カラルーはアンゴラ料理のページでも紹介しています。

料理は、一皿に主食やおかずを乗せ、豆煮込みなどをかける、てんこもりワンプレートがよく食べられています。「ミールス」って呼ぶんですって。これ、インド料理に似ているところがありますね。

セントルシア料理には煮込み類が多くありますが、やはりインド人が流入してきた影響でしょうか、多数の香辛料やハーブを加え、またアメリカから化学調味料系のインスタントも輸入されており、そういう味わいも加味され、ともあれセントルシア料理は複雑な味わいに仕上がっています。

セントルシアのお酒と言えば、ピトンビールとラム酒です。ピトンの名前はセントルシアの世界遺産になっているピトン火山に由来します。飲みやすいビールと評判です。そして、ラム酒はサトウキビを発酵させた蒸留酒であり、ここセントルシアに奴隷が運ばれてくる原因でもあったサトウキビプランテーションの歴史とつながる根っこを持っています。カリブ海の国に来たら、先住民絶滅、アフリカ人奴隷、といった悲しい歴史を慮りつつ、それでも今をカラリと明るく生きるたくましいルシアン(セントルシア人)に敬意を表して、是非一杯のラム酒を飲むのはいかがでしょうか。

◆セントルシアに行ったら、これ食べよ♪

【炭水化物】
・グリーンフィグ・・・プランテーン(緑の甘くないバナナ)
・ダシーン・・・タロ芋。
・ダンプリン・・・小麦粉を固く練ってゆでたもの(あるいは煮込みに入れて加熱したもの)。
・ブレッドフルーツ・・・パンの木の実。大きな実を焚き火に入れて黒焦げにしてほくほくの中身を食べる。
 ┗ブレッドフルーツパイ・・・ブレッドフルーツの実にチーズなどを混ぜて焼いたグラタン風。
・プロビション・・・イモ類ミックス。ソルトフィッシュやカレーなどのおかずを添える。
・ベイク・・・揚げパン。
・ヤム・・・ヤム芋。

【魚料理】
・グリルドフィッシュ・・・魚ソテー。
・ソルトフィッシュ・・・塩漬けタラを水につけて塩抜きしたものをトマトや玉ねぎと炒め煮にする。

【煮込み類】
・カラルー・・・緑の葉(ダシーンの葉など)のどろどろ煮。
・ブヨン・・・ダンプリンや肉野菜などのごった煮。

【インドを感じる】
・カリー(Curry)・・・いわゆるカレー
 ┗カリードラム・・・羊肉のカレー。
・コロンボ・・・「コロンボスパイスミックス」という芥子入りのカレー粉を使ったカレー。
・ロティ・・・カレー味のじゃがいもを小麦粉の薄焼きクレープ状ものもでくるむ。

【フレンチカリビアン】
・アクラ・・・タラの細かい身が入った揚げパン。ほとんどタラから、タラほぼ皆無までグレードいろいろ。
・コロンボ・・・「コロンボスパイスミックス」という芥子入りのカレー粉を使ったカレー。
・ブジン・・・血のソーセージ。これも煮込みにすることが多い。
・ブヨン・・・上述。

【お酒】
・ビール・・・世界遺産ピトン火山にちなんだピトンビールを是非。
・ラム・・・ラム酒。サトウキビを発酵させて作る蒸留酒。

【その他】
・バナナ・・・セントルシアの最大輸出品なので、訪問記念にどうぞ。
・バナナケチャップ・・・セントルシア名産、ルシアン好物のピリ辛バナナソース。Baronブランドが有名。


[kuwakuwa]

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セントルシア世界のお金

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