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- 魚介のおかずの項を新設しました!
【基礎情報】
国名:マレーシア、Malaysia、首都:クアラルンプール、プトラジャヤ(行政)ISO3166-1国コード:MY/MYS、独立国(1965年シンガポール離脱)、公用語:マレーシア語、通貨:リンギット。
【地図】
マレーシアは半島本土とボルネオ島(カリマンタン島)の北部のサバ州とサラワク州で構成されています。半島先端の先にシンガポールがあり、ボルネオ島南部や近隣の島々はインドネシア。サラワク州に囲まれてブルネイがあり、半島北部はタイと接し、サバ州の目と鼻の先はフィリピンです。
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◆華人やインド人と一緒の歴史が長くて、マレー人の料理は多彩です。
熱帯雨林気候のマレーシアの料理は、暑い気候のもとで育つ豊かな作物を使う料理です。パンダンリーフ、ライムの葉、ラクサリーフのような香り豊かな葉を使い、スパイスがブレンドされ、キャンドルナッツのコク、エビペーストの臭み、唐辛子の辛さ、レモンやタマリンドの酸味、そしてガランガル(生姜の一種)やターメリック(ウコン)のような風味の強い根が舌をうつ。そしてさらに長年の歴史を共存してきた華僑/華人がもたらす美味たる調味料や巧みな調理技術が取り込まれてきました。
マレーシアの麺料理は種類と味付けが豊富です。写真はラクサ。(撮影地サンダカン)
「マレーシア料理とは何か」と問われると回答しにくいですよね。インドネシア料理で有名なナシチャンプルはマレーシアにもあるし、マレーシア料理で名高きラクサはインドネシアにもある。醤油をジャっと絡めた野菜や魚介の油炒めは中華料理に見える。朝食のロティチャナイはまさにインドのパラタそのものだ。・・・そのように、マレーシアの料理は「どこか他の国の料理と似ている」。その背景は大きく3つあります。
- マレーシアの主要民族であるマレー人の分布は7つの主権国にまたがる(マレーシア、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、東チモール、タイ、フィリピン)(更にココスやクリスマスも加わる)。「マレーはマレーシアだけじゃない」と理解することが前提となる。よって共通する食材が共通する調理法で食べられている。
- 中国系民族とは1000年の歴史を共有し、中世にはマラッカ海峡沿いに海峡中国人居住地域ができ、マレーの料理は中国料理と共存し受容し同化した。
- かつてのインド人移民(労働者及び非労働者)のコミュニティーは今も残る。ムスリム系インド料理もあり、イスラム化したマレー人に受け入れられた。
マレーの中心地はマレー半島で、そこに古くからあるヒンズー教や仏教やアニミズムの文化は、華人(中国系民族)との交易、華人の定住、イスラムの到来などから変遷しました。最も重要な変遷は1400年頃に興ったマラッカ王国で、当時のスルタン制度は今もマレーシアの政治の根幹です(現在もマレーシア各州の首長であるスルタンが5年ごとに交代で国王になります)。マラッカが面するマラッカ海峡は世界で最も重要な海上輸送航路の1つであり、マラッカは国際貿易港として栄え、マレー語は広くアジアの港でリンガフランカ(共通語)でした。東南アジアの多くの国々で「マレー化」が一層進み、フィリピンにもマレー人、タイにもマレー人、インドネシアにもマレー人、という現在の図式が作られていきます。
長らくマラッカなどの沿岸沿いで交易や商業に関わってきた海峡中国人(ストレイトチャイニーズ、華人系住民)は、中国明朝後期から清朝にかけて海外交易が禁止されると彼らはトレーダーをやめてマレー半島に定住するようになります。その主な定住地がマラッカ、ペナン、シンガポールです。
20世紀前半の大東亜戦争は日本が主導するアジア植民地の解放戦争という一面を持っていました。日本は敗戦しましたが解放は実現し、マレー半島は英国から独立を達成します。しかし独立当時マレー人以外の人種が約半数を占めていた(華人が特に多かった)ことから、マレーシアはマレー人の少数民族化を防ぐため、異民族排斥(マレー人と先住民を優遇する政策、ブミプトラ政策)を施行。反発した華人たちはシンガポールを連邦から脱退させて独立国とし、マレーシアから分離しました。
異民族排斥の結果もあり、現在、マレーシアの民族系統別人口比はざっと、ブミプトラ(マレー人+先住民):華人:インド系=7:2:1です。マレー半島の主要都市であるクアラルンプール、ジョホールバル、ペナンは華人の比率が高いのですが、そうでない地域はマレー人が圧倒的に多く、本来のマレー料理が色濃く楽しめます。
マレーシアは、マレー人の国を作りたかったんです。だから、今、マレー人人口比率がダントツで高いこと(高くなるように無茶苦茶やってきた)に理解を深めると、ここを単に多民族国家と一言で語るのも少々乱暴な気もします。文化を国家単位で総じてとらえるときは主要民族を主体に考えるのが定石ですから、マレーシア料理はやはり「マレー人の料理」を中心に捉えていくのがよいと思っています。
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主食(米) Staple (Rice)
マレーシアの主食は米です。作物の米(稲)はブラス、炊いた米すなわちごはんはナシと呼びます。戦後工業部門で発展を遂げた国であることや木材の輸出国である(つまり森林が多い)ことから分かるように、稲作が目立つ国ではありません。農林水産省の資料では、東南アジア諸国の米動向分類においてマレーシア(とシンガポール)は米の純輸入国であり、米が自給できなくても米を求む食文化であることが理解できます。
主な米料理には、ナシゴレン(焼き飯)やナシルマ(ココナッツミルクで炊いたごはん)があります。ナシルマは通常、ゆで卵、イカンビリス(小魚保存食)、サンバル(ピリ辛タレ)、きゅうりがセットになります。
「Nasi lemak」の最も適切な日本語カタカナ表記は「ナシルマ」という結論へ。
チキンライスあるいはナシアヤムは、ごはんとゆで鶏あるいはローストチキンのセットメニューです。「チキン(鶏)+ライス(飯)」と「ナシ(飯)+アヤム(鶏)」はどちらも同じ意味ですが、チキンライスといえば前者、ナシアヤムといえば後者が出てくることが多い傾向にあります。混同しやすいので、ゆで鶏タイプを特定する場合は、ナシアヤムプティ、ローストチキンタイプを特定する場合はナシアヤムゴレンと言うとよいです。
ナシチャンプルは、ごはんをよそったお皿に何種類か好きなおかずを乗せてワンプレートにする料理で、インドネシアでも定番の料理です。華人の店ではチンチーチャファン(經濟什飯)と言います。
インド系マレーシア料理には、ナシブリヤニまたは単にブリヤニ(ビリヤニとも)があります。ブリヤニ自体が元来ムスリムの料理ゆえ、マレー人の大多数がムスリムであるマレーシアにも受け入れられました。例えばマトンビリヤニの場合、ごはんはカルダモンやクローブなどの香辛料と共に炊いて色素で色づけされ、ヨーグルトで漬け込んだ羊肉のカレー煮込みが合わさって提供されます。
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主食(麺、他) Staple (Noodles and Others)
マレーシアでは、麺類は非常にポピュラーです。マレーシアの国民食と言えるラクサ(叻沙、拉沙)は、日本で言う「ラーメン」のような位置づけです。つまり地域バリエーションないし調理人の差異が豊富なのです。ラクサはカリーラクサ(ココナッツミルクカレーラーメン、単にラクサと言う場合多くはカリーラクサを指す)とアッサムラクサ(スパイシー酸味ラーメン)に大別されます。地域の名称を冠して、クチンラクサ、ペナンラクサ、ケダラクサなど無数のラクサがありますが、それらはほぼカリーラクサかアッサムラクサのどちらかに属します。
ミーは黄色い小麦麺です。ミールブス(じゃがいもでとろみのあるあんかけ麺)やホッキェンミー(福建麺、ダーク醤油と魚介ダシを使う真っ黒麺)、ミーゴレン(焼きそば)など。その他の麺には、ミフン(またはビフン)という日本でもビーフンとして知られる米の麺、クイッティアオという幅広米麺などがあります。クイッティアオは通常はチャークイッティアオという醤油味の焼きそばとして食べられます。
小麦粉の生地を焼く料理はロティと総称されます。マレーシアでの英国植民地時代の影響を反映して、食パンもロティの代表で、ロティバカール(トースト)にしてカヤ(ココナッツミルクと卵から作るジャム)を塗って食べることが多く、カヤを塗ったトーストはロティカヤバカールまたはカヤトーストと言い、朝食あるいはアフタヌーンティーの定番です。ロティカーウィンはトーストにカヤとバターを挟みます。
インド系の店でロティと言うとロティチャナイを指すことが多いかな。ロティチャナイはインドのパラタやスリランカのゴータンバロティと同じ料理で、パン生地を風呂敷のように薄く広く伸ばして空気を含ませて層にして焼き、カレーの汁をつけていただく朝食の定番です。ロティチャナイをトゥルル(卵)と一緒に焼くとロティトゥルルです。また、インドのドーサと同じ、発酵米粉溶液を薄焼きにしたものはロティトセイまたは単にトセイ(トセ、トシとも)と言います。これもカレーの汁やチャツネをつけていただきます。
マレーシア料理のThosaiやTosaiの発音は「トセイ、トセ、トシ」。
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肉のおかず Meat
マレーシアはイスラム教を国教とする国ですが、ハラル(イスラム教で許される食品)とノンハラル(イスラム教で許されない食品)が自由共存できます。これがマレーシアの肉を語る重要基礎事項です。ノンハラルの筆頭は豚肉です(※)が、マレーシアでは、例えばサウジアラビアやイランのように国を挙げて豚肉を取り締まることはなく、中華街の市場や外資系スーパーマーケットなどで豚肉やベーコンが流通しています。
※厳密に言えば、イスラム教で規定する条件に則って解体されていなければ、鶏肉でも牛肉でもノンハラルになります。
マレー人は多くがイスラム教徒で、豚肉を食べず鶏肉や牛肉が好き。インド系イスラム教徒は更にマトンが好き。インド系のヒンズー教徒は豚肉と牛肉を食べる習慣がなく鶏肉やマトンを食べる。クリスチャン(キリスト教徒)と中国系住民は何でも食べ、特に華人は豚肉をこよなく好みます。要するに、マレーシアで食事をするにあたり、マレー人の店に行くのか、中国人の店に行くのか、インド人の店に行くのかで食べられる肉の種類が変わるし、逆に日本人が旅行でマレーシアに行ったなら、そのとき食べたい肉によって行く店を変えるという旅の楽しさがあるのです。
肉類はダギンと総称されます。アヤム(鶏肉)、ランブ(牛肉)、バビ(豚肉)の用語を知っておくと便利です。マトンはインド人の店でよく見るので英語でマトンでOK。ただしマレーシアのマトンは羊ではなく山羊(ヤギ)です。
鶏肉料理には、上述のチキンライスあるいはナシアヤム(ごはんのゆで鶏のセット)。牛肉料理にはルンダン(スパイシーな牛煮込み)、マトンの料理にはブリヤニ(スパイシーごはんとカレー煮の組み合わせ)があります。華人の店の代表料理にはバクテー(肉骨茶)という骨付き豚肉の漢方生薬煮があります。
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魚介のおかず Seafood
魚はマレー語でイカン。ポリネシアのイカと同じ用語です。基本的に生魚は食べません。イカンゴレン(揚げ魚)とイカンビリス(小魚保存食)は代表的な家庭料理でナシ(ごはん)とサンバル(唐辛子のタレ)で食べるのが定番。
その他の魚料理にはカリイカン(魚カレー)、アッサムプダス(魚のスパイシースープ)、オタ・オタオタまたはサタ(魚すりみ蒸し)など。
シンガポール料理で知られるチリクラブ(カニのチリソース煮)はマレーシアではマレー語でクタムマサッチリKetam masak cili、広東語で辣椒螃蟹(ラーチューポンハイ)と呼ばれます。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
【主食系】
- カヤトースト(Kaya toast):カヤを塗ったトースト
- クイッティアオ(Kway Teow、Kuay teow、粿條):幅広米麺
- チャークイッティアオ(Char kway teow):醤油味の焼き幅広米麺
- チキンライス(Chicken rice):ごはんとゆで鶏あるいはローストチキンのセット
- チンチーチャファン(經濟什飯):ごはんとおかず数種類のワンプレート
- トシ(Tosai):発酵米粉溶液を薄焼きにしたもの
- トセ(Tosai):発酵米粉溶液を薄焼きにしたもの
- トセイ(Tosai):発酵米粉溶液を薄焼きにしたもの
- ナシ(Nasi):炊いた米(ごはん)
- ナシアヤム(Nasi ayam):ごはんとゆで鶏あるいはローストチキンのセット
- ナシアヤムゴレン(Nasi ayam goreng):ごはんとローストチキンのセット
- ナシアヤムプティ(Nasi ayam puti):ごはんとゆで鶏のセット
- ナシゴレン(Nasi goreng):焼き飯
- ナシチャンプル(Nasi campur):ごはんとおかず数種類のワンプレート
- ナシブリヤニ(Nasi briyani):スパイシーごはんとカレー煮の組み合わせ
- ナシルマ(Nasi lemak):ココナッツミルクで炊いたごはん
- ビフン(Bi hoon):ビーフン(米の麺)
- ビリヤニ(Briyani):スパイシーごはんとカレー煮の組み合わせ
- ブラス(Beras):米(稲)
- ブリヤニ(Briyani):スパイシーごはんとカレー煮の組み合わせ
- ミー(Mee又はMi):黄色い小麦麺
- ホッキェンミー(Hokkien mee、福建麺):ダーク醤油と魚介ダシを使う真っ黒麺
- ミーゴレン(Mee goreng):焼きそば
- ミールブス(Mee rebus):じゃがいもでとろみのあるあんかけ麺
- ミフン(Mihun又はMee Hoon):ビーフン(米の麺)
- ラクサ(Laksa、叻沙、拉沙):広義にラーメン、狭義にココナッツミルクカレーラーメン
- アッサムラクサ(Asam laksa):スパイシー酸味ラーメン
- カリーラクサ(Curry laksa):ココナッツミルクカレーラーメン
- ロティ(Roti):広義には小麦粉を練った生地を焼く料理
- ロティカーウィン(Roti kahwin):カヤとバターを挟むトースト
- ロティカヤバカール(Roti kaya bakar):カヤを塗ったトースト
- ロティチャナイ(Roti canai):層状薄焼きパン
- ロティトセイ(Roti tosai):発酵米粉溶液を薄焼きにしたもの
- ロティトゥルル(Roti telur):卵入りのロティチャナイ
- ロティバカール(Roti bakar):食パンのトースト
【肉のおかず】
- ダギン(Daging):肉類の総称
- ダギンアヤム(Daging ayam):鶏肉
- ダギンバビ(Daging babi):豚肉
- ダギンランブ(Daging lembu):牛肉
- チキンライス(Chicken rice):ごはんとゆで鶏あるいはローストチキンのセット
- ナシアヤム(Nasi ayam):ごはんとゆで鶏あるいはローストチキンのセット
- ナシアヤムゴレン(Nasi ayam goreng):ごはんとローストチキンのセット
- ナシアヤムプティ(Nasi ayam puti):ごはんとゆで鶏のセット
- ナシブリヤニ(Nasi briyani):スパイシーごはんとカレー煮の組み合わせ
- バクテー(Bak kut teh、肉骨茶):骨付き豚肉の漢方生薬煮
- ブリヤニ(Briyani):スパイシーごはんとカレー煮の組み合わせ
- マトン(Mutton):山羊肉
- ルンダン(Rendang):スパイシーな牛煮込み
【魚介のおかず】
- アッサムプダス(Asam pedas):魚のスパイシースープ
- イカン(Ikan):魚
- イカンゴレン(Ikan goreng):揚げ魚
- イカンビリス(Ikan bilis):小魚保存食
- カリイカン(Kari ikan):魚カレー
- オタ(Otak):魚すりみ蒸し
- オタオタ(Otak-otak):魚すりみ蒸し
- クタムマサッチリ(Ketam masak cili):カニのチリソース煮
- サタ(Sata):魚すりみ蒸し
- 辣椒螃蟹(ラーチューポンハイ):カニのチリソース煮
【その他】
- カヤ(Kaya):ココナッツミルク卵ジャム
- サンバル(Sambal):唐辛子のタレ
- トゥルル(Telur):卵