インドネシア料理

+++新着+++


【基礎情報】

国名:インドネシア共和国Republic of Indonesia、首都:ジャカルタ、ISO3166-1国コード:ID/IDN、独立国(1949年オランダより)、公用語:インドネシア語、通貨:インドネシアルピア

▲目次に戻る


【地図】

インドネシアは赤道直下に東西に広がる島嶼群です。陸で接する国は、カリマンタン島でマレーシア、ニューギニア島でパプアニューギニア、チモール島で東チモールがあります。海を挟んだ近隣国には、北にシンガポール、フィリピン、南にオーストラリア、南西にクリスマスとココス、西にインド(アンダマン諸島)があります。

▲目次に戻る


◆各地の名物料理と全土共通料理。バラエティーに富む食文化

暑い~!インドネシアは赤道の下に島々が広がる、日本の真夏並みの気温が年中続く熱帯の国です。暑い気候で野菜はぐんぐん育ち、島国ゆえ海産物も豊富。稲作が盛んで米を主食としています。野菜や魚の種類が多くて料理の種類が多いし、作り置きの習慣があるから塩味や醤油味を利かせてそれらを白いごはんと一緒に食べる。なんだか日本の食卓に似ていますね。インドネシアでは各地域の郷土料理も見ものですが、全土普遍的に広まる国民食を食べ比べるのも楽しい。インドネシア料理は、食のバラエティーさが身上です。

インドネシア
ワルン(ローカル食堂)ではおかずが店頭に陳列される。目で選べる楽しさ。(撮影地クパン)

インドネシアは広い。メルカトル図法を見ているとモンゴルかカザフスタンくらいのサイズに見えるけど(※)、地球儀で見るとインドネシアの壮大な大きさに気づいて反省することしばしば。国土は赤道付近に東西5000 km以上も広がり、国内時差があるほど広く、年間を通じて平均気温が27℃以上という全土熱帯気候の国です(山の上を除く)。

※メルカトル図法は極地を赤道幅まで広げるため、極地に近いところほど拡大され、赤道に近いところは拡大されず相対的に面積が小さく現れます。

2憶7千万人の人口(世界第4位)は1300の民族に分かれ、6千の有人島に住んでおり、多数の島と多数の民族はインドネシアの文化の多様性の基礎となっています。気温が高く雨が多い土地では野菜がぐんぐんと育ちます。海岸部が多くて魚介類も豊富。そこに多民族性の要素が交ざると、料理ないし食べるものの種類はおのずと多くなります。

ところで、インドネシアはなぜたくさんの島を抱えているのでしょう? 食文化理解のためにインドネシアの成立背景を学びましょう。

ジャワ原人は有名ですね。それは早期からここに人類が定着していた証拠です。紀元前よりここは大国(インドや中国)との交易で栄えました。丁子(クローブ)やこしょうなど魅惑の香辛料が採れるため、大航海時代以降は欧州列強に目をつけられ、やがてオランダがオランダ東インド会社を設立する形で棲みつきます。その実態は、征服、搾取、使役と過酷でした。

オランダは支配の拠点をジャワ島(現在首都ジャカルタがある島)に置きながら、勢力を広げて遠くの島をも傘下に入れ、広大なインドネシアの原型を作りました。大東亜戦争は日本による東南アジア諸国の列強からの開放という側面をもっていて、日本がここを占領することでオランダを撤退させてインドネシア独立のための手伝いもしましたから、その結果、終戦のわずか2日後にインドネシアは独立宣言とするという快挙達成。そのときの国是には「多民族性の統一」が含まれていました。その代表が国語としてのインドネシア語の制定です。

・・・偉いよなあ。ジャワ人多数の国なのにジャワ語じゃない言葉を国語に採用したんですよ。権力者層の言葉を押し付けるんじゃなく国が統一できる国語として商業語であるマレー語をインドネシア語に選んだことが本当にすごい。おかげで各地の諸民族はインドネシア語で急激にまとまっていき、言葉が同じなので必然的に文化的差異が収束するのです。この点で日本における標準語の効果に似たものを感じます。なお12世紀にイスラム教が到来し、今インドネシアの国民の9割がイスラム教徒という宗教上の同一性も、インドネシアの文化統一性の形成に寄与しています。

インドネシア料理は、「多数の島、多民族」と、つい料理の多様性が前面に書かれがちですが -確かにそれはそうなんだけど- もっと大事なこととして、「インドネシアは広い割に料理が似通っている」ことのほうが重要点です。インドネシアの国是の1つである「多様性の中の統一」という国政が縮図となったような食文化です。旅行者の立場として実感するのは、どこに行ってもナシゴレン(焼きめし)、どこに行ってもソトアヤム(チキンスープ)、そのほかバクソ(肉すり身団子)、テンペ(発酵大豆固め)、ケチャップマニス(醤油調味料)etc。とにかく共通性が目立つのもまたインドネシア料理なのです。そしてインドネシアの国民食の座に輝くのは一郷土料理ではなく共通料理のほうで、その代表はナシゴレン(焼き飯)です。

インドネシア料理の特徴を以下に記します。

  1. 稲作を基本とし、米が主食。白いご飯とおかずの盛り合わせが多い。
  2. 農耕社会で野菜の種類が豊富。料理がバラエティに富む。
  3. 島嶼群であるため様々な魚介類に恵まれる。
  4. 国民の9割がイスラム教徒。豚肉や酒を基本的に摂らない。
  5. 暑い国で店頭作り置きや屋台が発達し、香辛料や調味料を使った濃い味の料理や揚げ物が多い。腐敗しにくく白い飯に合うおかずたち。
  6. もともとマレー系(※)の食文化として、特にマレーシアと類似した食文化が根付いた。よってインドネシア料理はマレーシア料理と非常によく似ている。インドネシア語はマレー語と本来同じ言語(微改変程度)なので、マレーシアと同じ名前の料理も数多く存在する。
  7. 国土がインドネシア語で統制されており、国土の広さの割には料理に統一感がある。「全土普遍的な共通料理」がかなりある。例)ナシゴレン(焼き飯)
  8. 島も民族も多いため、各地に「ご当地名物料理」がある。例)チョトマカッサル(マカッサル市名物モツ煮)
  9. インドネシアは華人排除政策を行った国である。隣国のマレーシアと比較すると中国料理の影響がとても低い。

※マレー系:マレー語を話す人や地域。今日、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ブルネイ、フィリピン、タイ南部等に分布する。

オランダはインドネシアの食文化を変えるような支配をしなかったので、オランダ料理の名残を見ることは旅行者の立場では滅多にありません。行って出会うのはやはりマレー系の、東南アジア島嶼群の食文化。店も屋台もたくさんあって、食に活気があります。あまりに広大な国で、旅しても旅しても、進んでも進んでもなかなか地図上で動いていかない錯覚を覚えるような国ですが、食の楽しみは各地で尽きることがありません。
▲目次に戻る

主食 Staple

インドネシアの主食は米。世界で五本の指に入る米消費大国です(※)。

※FAO Stat 2015年、世界第5位インドネシア(211 kg/人/年)、28位日本(83 kg/人/年)。
国別1人あたりコメ消費量(2015)のデータ解析

ちなみに米が食文化に深く関連しない言語として、例えば英語の例では、米つぶも炊いた米もrice(ライス)として呼び分けませんが、インドネシアや日本はそこを呼び分けます。米(調理前の食材)はブラス、ご飯(炊いた米)はナシです。

インドネシア料理ではしっかりした濃い味付けのおかずを白飯と食べるのが基本で、国中どこでも白飯を食べるので、炊いて余った白飯の消費方法であるナシゴレン(焼きめし)も国中どこでも食べられる国民食です。麺やパンもありますが間食の要素も強いので、食事の主食はやはり米。

ただ、東南アジア本土(ベトナムなど)のようには米加工品が発達していません。ライスペーパーでもなく米麺でもなく、米の食べ方は炊飯した米です。この点ではインドネシアと日本はとても共通しています。

米に次いでミー(麺)もポピュラーです。汁そばから焼きそばまで、味付けや具によってバリエーション豊かですね。
▲目次に戻る


料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食】
  • ナシ(Nasi):ごはん(炊いた米)
    • ナシゴレン(Nasi goreng):焼きめし
  • ミー(Mee):麺
【肉類のおかず】
  • チョトマカッサル(Coto Makassar):マカッサル市名物モツ煮
  • バクソ(Bakso):肉すり身団子
【野菜・豆類のおかず】
  • テンペ(Tempe):発酵大豆固め
【スープ・汁物】
  • ソトアヤム(Soto ayam):チキンスープ
【調味料】
  • ケチャップマニス(Kecap manis):醤油調味料
【食材】
  • ブラス(Beras):米(炊飯前)

▲目次に戻る


Link

▲目次に戻る