クロアチア料理

◆長年にわたって東西の狭間にいた国の多様な食文化に、歴史の波を感じる。


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ムシュレナブザルにレシピリンク挿入!


基礎情報クロアチア共和国Republic of Croatia、首都ザグレブ、ISO3166-1国コードHR/HRV、独立国(1991年クロアチアより)、公用語クロアチア語、通貨クーナ

まずは、下の地図で、クロアチアが旧ユーゴのスロベニアやボスニアに接していることを見ましょう。

日本人は母国をニホンやニッポンと呼び、ジャパンとは言わないように、クロアチア人(クロアチア語)は母国をHrvatska (フルバツカ)と呼びます。フルバツカの英語名がクロエイシア、日本語名がクロアチアです。クロアチアは北海道よりも狭い小さな国で、アラビア語の数字の2の「٢」みたいな形をしています。「٢」の縦ラインを沿岸部、「٢」の横ラインを内陸部と大雑把にみたとき、沿岸部と内陸部は、異なる国だった時間が非常に長い。沿岸部が途切れて南部が飛び地になっているのも重要ポイント。南部飛び地はまた別の国でした。つまりクロアチアは、歴史の中で、今のイタリアやフランスによるの西方支配を経験してきた沿岸部と、ハンガリーやオーストリアなど北方支配を受け続けてきた内陸部とがあり、更にユーゴスラビアとして統一国家に編入されたことで、セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナなどのオスマントルコに支配された地域と同じ国になってその影響が伝わり、ともあれ、西・北・東の食文化を受け、現在も色濃く残しているのが料理にも表れています。

クロアチア人はクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナに分断されて居住しています。しかしクロアチアはクロアチア人の国です。キリスト教(カトリック)の要素が強く、これが、バルカン半島に混住しているムスリム人(イスラム教)やセルビア人(正教)との民族紛争が絶えず、バルカン半島が「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれた要因の一つです。平和な時代も長いけれど、歴史イコール戦争であり、民族の混合と排斥があって、文化の共有があって、国土が破壊されては新しく作られていく・・・、こういう国では、食文化が複雑で当然です。

ですので、クロアチアでクロアチア料理を求めると、それは単一なものではなく、「何がクロアチア料理なのだろうか」とむしろ戸惑うこともしばしばです。欧州内陸料理の要素が強いオーストリア料理やハンガリー料理、遊牧の要素をもつトルコ料理、アドリア海の海の幸が豊かなテーブルに、イリュリア人の郷土料理、地中海料理やイタリア料理の数々・・・、このようなものが総合されてクロアチア料理を形成しています。その理由は、上述のような歴史的背景により、西・北・東の食文化を継承しているからです。

それではまずは、西方の影響を強く受ける沿岸部の食文化から書いていきます。アドリア海に面するクロアチア沿岸部には、ダルマチア地方やラグーザ(有名観光地ドブロブニクを擁する地域)などが海商都市の発展から栄え、イタリア系ラテン人とスラブ人(クロアチア人)が住み、古くからイタリアとの通商がありました。

ダルマチア地方の特産品にはプルシュト(プロシュート、生ハム)やタルトゥフィ(トリュフ)があります。リゾットやパスタなどで、ビエリタルフティ(白トリュフ)やツルニタルフティ(黒トリュフ)を贅沢に使用した料理が楽しめます。またこの地域のパシュキシールという羊のチーズがクロアチアのチーズで一番美味しいと言われています。

フィヨルド地形から長い海岸線をもつクロアチアは、海産物が実に豊かです。観光産業の発達したクロアチアでは、レストランには数々のシーフードメニューがあり、楽しめます。モルシュカプラタ(シーフードプレート)、サラータオドホボトゥニツェ(タコのサラダ)、リブリャユハ(魚のスープ)、プニェネリグニェ(イカメシ)など、挙げるとキリがありません。魚介類をシンプルに焼いてレモンをかけて食べるだけといった料理も美味しくて、シュカンピナジャル(焼き手長エビ)のように、材料名「○○」に「ナジャル」をつければ「焼き○○」という料理名になります。魚介類のリゾート(リゾット)も大変に美味しくて、特にツルニリゾート(イカスミリゾット)は代表的なクロアチア料理なのでおすすめです。

煮込み系の料理としては、ブロデット(魚介類と野菜のトマトベースの煮込み)があり、バカラルナブロデット(タラのブロデット)が人気です。ポパラ(白身魚とじゃがいものにんにくレモン煮)も是非食べてみたい一品。ブザラ(白ワイン、ニンニク、オリーブオイル煮込み)も名物で、ムシュレナブザル(ムール貝のブザラ)やシュカンピナブザル(手長エビのブザラ)などが人気です。

このように、海岸部ではオリーブ油やにんにく、トマト、パセリを多用する傾向があり、その点でもイタリア料理に似たフレーバーの料理が多いです。一方、内陸では肉料理が主体となります。オーストリアの影響で肉の保存食(ソーセージやベーコン)が発達し、隣国ハンガリーの影響から料理にパプリカ(赤ピーマン)粉を多用し、塩味が強い傾向にあります。

グラシュは、パプリカ粉を使用した肉の煮込みです。ゼレナメネストラは、直訳すると緑のミネストローネ、燻製肉や野菜がたっぷり入った煮込みです。コットロビナは、へこんだ鉄板を炭火の上に乗せて調理する肉の炒め煮で、スロベニアとの国境に近いサモボル名物です。パシュティツァダはダルマチア地方の名物のマリネした牛肉の煮込み。オドヤクは子豚の丸焼き。ペカはフタのできる鉄鍋に素材を入れて、炭火の中に埋めて蒸し焼きにした料理です。

中欧のどこにでも見られる煮凝り料理は、クロアチアではフラデティナアスピックパチェなどと呼ばれます。また中欧のどこにでもあるシュニッツェルなどのカツレツは、クロアチアではオドレザックと言います。特に美味しいと評判なのが首都名を冠したザグレブ風カツレツ、ザグレバチュキオドレザックで、薄切りの肉にハムとチーズを挟むか巻いてパン粉をつけて揚げたカツで、スイスのコルドンブルーと同じ料理です。お肉料理にはキセリクプス(発酵キャベツ)が合います。

トルコ方面からの料理は、サルマ(醗酵キャベツにお米を混ぜた肉団子を巻いたロールキャベツ、他の国ではドルマとも言う)、プニェニャパプリカ(パプリカの肉詰め、エジプトのマハシみたい)、アイバル(赤ピーマンとなすのペースト、トルコのエズメみたい)、カイマク(乳脂肪分)、ブレック(小麦粉の薄い生地に具(ひき肉、白チーズ、ほうれん草が定番)を乗せてくるくる巻いてオーブン焼き)、チェバプチチまたはチェバピ(語源はチェバプ=ケバブ、ひき肉とスパイスを混ぜて小さな棒状に成形して焼く)、ジュベチ(野菜各種と肉を角切りにしてトマト味で煮込む)など、多数あります。

ユーゴスラビア時代に発明されたインスタント調味料「ベゲタ」はクロアチア料理を大きく変えました。野菜パウダーとグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムなどが入った、顆粒コンソメのような工業生産品の調味料で、クロアチア人は何にでもベゲタを入れるとも言われるほど一般家庭に浸透しました。クロアチアに旅行したらお土産に良さそうです。

クロアチアの主食はクルホウ(パン)、シュパゲーティ(スパゲティー、クロアチア版はゆですぎなので注意)、ニョキ(ニョッキ、小麦粉とじゃがいも等を練ってゆでたもの)、パレンタジュガンツィ(トウモロコシ粉やソバ粉を湯で練ったもの)があります。

軽食やデザートになるものとして、まずは、国のいたるところで売られているピッツァ(ピザ)、パラチンケ(クレープ)。シュトゥルクリ(ドイツのシュトルーデルと同じ、薄く延ばした小麦粉の皮で白チーズや卵を巻いて、クリーム系のソースをかけてオーブン焼き。ザゴリエ地方名物。)などがあります。

飲み物には、食前酒の定番のラキヤ(果物やはちみつを醗酵させて作る蒸留酒)、ピーボ(ビール、クロアチアの有名銘柄は「Karlovacko(カルロバチコ)」と「Ozujsko(オジュイスコ)」)、メドヴィナ(はちみつ酒、はちみつを水で薄めて発酵させて作る酒)、ビノ(ワイン)など。旧社会主義国はたいていワインが美味しくないイメージで語られますが、クロアチアのビノは、流石西洋寄りというだけあって、なかなか美味しいほうかと思いました。ちなみにドライワインはスホ(suho)、スウィートワインはスラトゥコ(slatko)と表記されているので、確認して購入しましょう。


クロアチアの風景を見つつ地元ワインを味わう。ボトルの形がややずんぐり。(撮影地ドブロブニク)

最後に、お菓子というよりも、インテリア雑貨の要素が強そうですが、「リツィタル」(ジンジャーブレッド)は一見の価値ありです。固く焼いたクッキーに赤や白のアイシングで精密な模様がつけられていて見事なまでに可愛いのです。このリツィタルは愛する人、愛する家族への贈り物として、クロアチアの世界無形文化遺産に登録された、長年にわたるクロアチアの風習です。

以上、クロアチア料理について、いろいろと書いてきました。フィヨルドの海があって内陸があって、歴史に翻弄され、料理が複雑な国。こういうことを予備知識として知っていると、クロアチアの旅が一段と有意義になるのですね。

クロアチアでは、ガイドブックに載っているような観光地の町のバスターミナルや駅に到着すると、ソベ(Sobe)という部屋貸しのおばさんたちが客引きのために寄ってきます。そう、クロアチアは家庭に泊めてもらうことが簡単な国なんです。外国の家庭料理を食べてみたいなら、このソベの文化を活用すれば、クロアチアはその夢は簡単に叶います。クロアチアに行くことがあれば、是非絶品シーフードレストランから家庭料理まで、いろいろなものを楽しんできてください。

◆クロアチアに行ったらこれ食べよ♪

【主に魚介類の料理】
・サラータオドホボトゥニツェ(Salata od hobotnice )・・・タコのサラダ。
・シュカンピナジャル(Škampi na žaru)・・・焼き手長エビ。
・ツルニリゾート(Crni rižot)・・・イカスミリゾット。
・ブザラ(Buzara)・・・白ワイン、ニンニク、オリーブオイル、ハーブ煮込み。
 ┗ムシュレナブザル(Mušule na buzaru)・・・ムール貝のブザラ。
 ┗シュカンピナブザル(Škampi na buzaru)・・・手長エビのブザラ。
・プニェネリグニェ(Punjene Lignje)・・・イカメシ。
・ブロデット(Brodet)・・・)・・・魚介類と野菜のトマト煮。
 ┗バカラルナブロデット(Bakalar na brodet)タラのブロデット。
・ポパラ(Popara)・・・白身魚とじゃがいものにんにくレモン煮。
・モルシュカプラタ(Morska Plata)・・・シーフードプレート。
・リブリャユハ(Riblja Juha)・・・魚スープ。

【主に肉類の料理】
・アスピック(Aspik)・・・煮凝り。
・オドレザック(Odrezak)・・・シュニッツェル、薄いカツ。
 ┗ザグレバチュキオドレザク(Zagrebacki odrezak)・・・ハムとチーズの豚肉巻き揚げ。
・オドヤク(Odojak)・・・子豚の丸焼き。
・グラシュ(Gulaš)・・・肉とパプリカ粉の煮込み。
・コットロビナ(Kotlovina)・・・へこんだ鉄板を炭火に乗せて肉を炒め煮にする。
・サルマ(Sarma)・・・醗酵キャベツで米入り肉団子を巻いたロールキャベツ。
・ジュベチ(Đuveđ)・・・野菜各種と肉を角切りにしてトマト味で煮込む。
・ゼレナメネストラ(Zelena menestra)・・・直訳は緑のミネストローネ。燻製肉野菜たっぷりの煮込み。
・チェバピ(Ćevapi)・・・ひき肉とスパイスを混ぜて小さな棒状に成形して焼く。
・チェバプチチ(Ćevapčići)・・・チェバピの愛称。
・パシュティツァダ(Pašticada)・・・ニンニクや酢でマリネした牛肉煮込み。
・パチェ(Pače)・・・煮凝り。
・フラデティナ(Hladetina)・・・煮凝り。
・プニェニャパプリカ(Punjena paprika)・・・パプリカの肉詰め。
・プルシュト(Pršut)・・・プロシュート、生ハム。
・ペカ(Peka)・・・フタのできる鉄鍋に素材を入れて、炭火の中に埋めて蒸し焼き。

【その他】
・アイバル(Ajvar)・・・赤ピーマンとなすのペースト。
・カイマク(Kajmak)・・・乳脂肪分。
キセリクプス(Kiseli kupus)・・・発酵キャベツ。
・タルトゥフィTartufi(トリュフ)
 ┗Bijeli Tartufiビエリタルフティ(白トリュフ)
 ┗ツルニタルフティCrni Tartufi(黒トリュフ)
・パシュキシール(Paški sir)・・・パグ島の羊のチーズ。
・リゾート(Rižot)・・・リゾット。お米を水分多く具やトマトの味と共に煮る。

【主食】
・クルホゥ(Kruh)・・・パン。
・ジュガンツィ(Žganci)・・・穀物の粉(トウモロコシ粉やソバ粉)を湯で練ったもの。
・シュパゲティ(Špageti)・・・スパゲティー。
・ニョキ(Njoki)・・・ニョッキ。小麦粉とじゃがいも等を練ってゆでる。
・パレンタ(Palenta)・・・穀物の粉(トウモロコシ粉が多い)を湯で練ったもの。

【軽食、デザート】
・シュトゥルクリ(Štruklji)・・・薄く延ばした小麦粉の皮で白チーズや卵をまいて、焼くかゆでたあとに、ミルクやクリーム系のソースをかけてオーブン焼き。
 ┗ペチェニシュトゥルクリ(Pečeni štruklji)・・・途中焼くシュトゥルクリ。
 ┗クハニシュトゥルクリ(Kuhani štruklji)・・・途中ゆでるシュトゥルクリ。
・パラチンケ(Palačinke)・・・クレープ。
・ピッツァ(Pizza)・・・ピザ。
・ブレック(Burek)・・・小麦粉の薄い生地に具を乗せてくるくる巻いてオーブン焼き。

【調味料】
・ベゲタ(Vegeta)・・・野菜パウダー顆粒コンソメのような工業生産品の調味料。

【飲み物】
・ピーボ(Pivo)・・・ビール。
・ビノ(Vino)・・・ワイン。
 ┗スホビノ(Suho vino)・・・ドライな味のワイン。
 ┗スラトゥコビノ(Slatko vino)・・・スウィートタイプのワイン。
・メドヴィナ(Medovina)・・・はちみつを水で薄めて発酵させて作る酒。
・ラキヤ(Rakija)・・・果物やはちみつを醗酵させて作る蒸留酒。


[kuwakuwa]

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