スリランカ料理

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  • 主食」の項にタンバプハールとキャクルハールを追記しました。

【基礎情報】

国名:スリランカ民主社会主義共和国Democratic Socialist Republic of Sri Lanka、首都:スリジャヤワルダナプラコッテ、ISO3166-1国コード:LK/LKA、独立国(1948年英国より)、公用語:シンハラ語、タミル語、通貨:ルピー

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【地図】

スリランカは、インドの南東にある島国であり、モルディブの近隣国でもあります。

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◆スリランカ料理が多分世界で一番辛いのには訳がある。

インドの南東沖にあるスリランカは、北海道よりも小さな島国です。スリランカ料理は香辛料(スパイス)を日常のおかずの調味料に使う国です。香辛料は天然物ですから、日本では醤油や味噌でさえ工場製品となってしまった今、スリランカの料理はなんてナチュラルなのだろうと、自然の物を食べる心地よさを実感します。「アーユルヴェーダ」はそういった天然の恵みを享受する伝統医学であり医食同源です。一方で、旅行者にはあまり料理が美味しいという評判が立たないスリランカ。しかしそれにも理由があるのです。

ライスアンドカリー
家庭料理のライスアンドカリー。おかずはごはんと混ぜて口に運びます。(撮影地コロンボ)

スリランカの主要民族であるシンハラ人は人口の75%を占め、中南部に多く分布し、多くの人が仏教を信仰します。タミル人は人口の15%で、主にヒンズー教やイスラム教やキリスト教を信仰します。タミル人は対岸のインド南部と同じ民族で古くから地元民(※)ですが、シンハラ人は遅れてインド北方から来た移住者です。両者は言語が違うため、彼らの料理は名称こそ違うものの、小さな島の中で培われた料理は似ていて、「スリランカ料理」たる同じ根っこを持っているように思います。

※先住民タミル人はスリランカタミルと呼ばれます。19世紀に茶園で働くためにインド本土からスリランカに移住したタミル人労働者の子孫もおり、インドタミル(またはヒルカントリータミル人)としてスリランカタミルと区別されることもあります。

スリランカ料理のその根っことは、

  1. 料理の味付けを塩と香辛料とココナッツに多く依存する。香辛料を多用するため「カレーの国」という印象になる。
  2. 辛い料理が多い(ただし外国人用には辛さを減ずることが多い)。
  3. 国内工業生産が乏しく、スリランカ料理はあまり工業生産品を使わず、自然の恵みを多く食べる。
  4. 菜食で完結する食事も多い。
  5. タンパク質源を摂るときは、鶏卵、魚、鶏肉が多い。
  6. 干し魚のダシ(モルディブフィッシュを含む)をとる料理が結構ある。
  7. 「一飯多菜」。主食を中心に、複数のおかずを盛り合わせ、味を混ぜて食べる。
  8. 米を炊くだけでなく、米粉を加工した主食も目立つ(米麺、米粉薄焼き、米を整粒したものなど)。
  9. 基本的に指(素手)で食べる。汁物も指で食べるからアツアツの料理が出てこない。
  10. 「アーユルヴェーダ」に代表されるような、食べ物で体調を調える学問が確立し、普及している。
  11. 国が小さいから、料理の地域差が少ない。シンハラ料理もタミル料理も差が大きくない。

など。

もう一つ、はじめに書いておくことがあります。スリランカと他のカレー圏の国の庶民的な料理を比較する話です。スリランカでは、庶民的な食堂では、おかずやごはんが作り置きにされています。それは文化なので尊敬の念を払うものの、温かいのを食べたいなと思うこともしばしば。国のサイズと宗教の違いも美味しさに影響する。インド料理の評価が高いのは、広い国ゆえ低地も山岳も砂漠も多雨もあって山海の幸も遊牧民文化もある。遊牧民文化があると、人が強烈に美味しいと感じるバターやクリームが潤沢に使える。工業化も進んだインドでは、美味しく完成された香辛料&旨味ブレンドも種類が豊富です。大国と小国の違いは「大陸の発展の有無」でもあり、料理においては「旨味の種類と量が明らかに違う」のです。あと、スリランカではムスリム(イスラム教徒)比率が極端に少ない。ムスリムが多い国や地域(パキスタンやインドのハイデラバードなど)では旨い肉カレーや肉ビリヤニをよく作りますが、殺生を好まない仏教徒と菜食主義者の多いヒンズー教徒が圧倒的多数を占めるスリランカでは、肉が旨さを作る飯にありつきにくい。

でもスリランカでは、「サライラサイ」(サライ=辛い、ラサイ=旨い)すなわち「辛さが旨さ」という言葉のように、辛味をきつくすることが美味しい料理が成立しています。ただし外国人用には気を利かせて辛さを減らすから要注意。そこを頑張って「あなたが食べるのと同じ辛さのものを頂戴」と言わないと、旅行者にはそれこそ美味しくなくなってしまうので要注意です。料理に関心の強い私ならどんなスリランカ料理も美味しく感じてやろうじゃないか(つまりスリランカを理解しようじゃないか!)とヤル気が出ますが、旅をする旅人ほどスリランカ料理に良い評判が立たないまま終わってしまうのも事実です。

でもね、スリランカにも美味しいカレーがありますよ。ひとつは家庭料理(ママが作った料理はホカホカ(^^♪

もう一つは・・・。

スリランカにはカースト制度(身分階級制度)があり、階級格差や所得格差が大きく、金持ちは超金持ちです。例えば安飯屋でカレーとライスが100ルピー(70円)、実質の首都コロンボでいいレストランに入って1000ルピー(700円)以上するとします。日本でなら、安カレー500円&高級カレー1500円で仮に価格3倍としても、スリランカでは普通に価格が10倍以上にもなるのです(※)。そういう上流社会階級のカレーは美味しい。でもそれは低~中所得層(つまり一般人)が食べられないカレーでもある。本サイトでは、地に足のついたローカルな料理の魅力を語りたいので、以降、高級店の高級カレーはさほど言及しないことにします。

※こういう現象は同じくカーストが残るインドとも共通しています。

長くなりましたが、スリランカ料理を理解する概要を書きました。タイトルの「スリランカ料理が世界で一番辛いのには訳がある。」が理解できれば、スリランカ料理に理解が深まったと思います。もちろん辛くない定番料理もあります。そのあたりは以下各論で個別に紹介します。
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ライスアンドカリー Rice & Curry

スリランカ料理の形式は、基本は「ライスアンドカリー」、つまり「ごはん&おかず」です。おかずはカリーカリヤウェンジャナ又はウヤラとも言います。和え物、サラダ、軽食、料理名に固有名称がついてしまったもの、タレの類を除外して、おかずを総称する言葉です。おかずは香辛料で調理されるため、日本人にとっては「スリランカのおかずは全部カリー(カレー)」という印象になります。店は皿に主食を盛りカリー各種や辛い薬味を乗せて提供します。客は右手の指を使って皿の上で混ぜ、おかずと米の味が混然一体に混ざった状態で口に運びます。
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主食 Staple

スリランカの主食は多くを米に依存しています。バット(ごはん)は白米や赤米で、タンバプハール(パーボイルドライス)であることが多く、パラパラして粘り気がありません。タンバプハール(パーボイルドライス)はもみ殻がついた状態で浸水し、蒸し、乾燥させた米で、栄養価が高く虫がつきにくい米です。なお日本の米のように生のまま脱穀した米はキャクルハールと呼びます。

米は、祝事などではカハバトカハ(ターメリック)を入れて炊く黄色いごはん)やキリバトキリ(ココナッツミルク)を入れて炊く白いごはん)が提供されます。

米を加工した主食には、イディアッーパ(別名ストリングホッパー、細い米麺)、ピットゥ(米粉を顆粒にして筒に入れて蒸したもの)、アーッパ(別名ホッパー、米粉とココナッツミルクを混ぜてお椀型の薄焼きにしたもの)などがあります。米粉液を焼き始めてすぐにビッタラ(卵)を落として作るとビッタラアーッパ(別名エッグホッパー)と呼ばれます。ちなみにアーッパは店先で焼き立てアツアツが食べられる有難い存在です。

小麦粉の主食には、ロティ(小麦粉の非発酵薄パン)やポルロティ(ココナッツ入りのロティ)があります。パン(スリランカのパンは食パン)も普及していて元英領であることを感じさせてくれます。
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肉のおかず Meat

日本語でなら、鶏肉のカレーはチキンカレーというように「材料名+カレー」で呼びますが、おかずのほとんどがカリーであるスリランカでは、わざわざカリーをつけません。ククルマス(鶏)、マール(魚)、バトゥ(なす)、ボーンチ(インゲン)と、具の名前だけで料理を呼びます。

なおククルマス(チキンカレー)は人気のおかずですが、肉は高くて毎日食べるものではありません。また、スリランカでは、豚肉や牛肉も食べられているものの、カリーの食材としては鶏肉が圧倒的に多いです。
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トゥナパハ Thuna paha

香辛料は家庭ごとにブレンドしてトゥナパハという自家製パウダーにします。「トゥナ」は3、「パハ」は5の意味で、基本3種類あるいは5種類の(でも本当は数字にはとらわれず、各家庭の配合で)香辛料をあわせてパウダーにしたものです。優しい香りのアムトゥナパハ(アム=生の)は野菜のカレーに、香りの強いバダプトゥナパハ(バダプ=ロースト)は魚や肉のカレーに基本的に適しているとされています。
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パリップ/パルップ Parippu, Paruppu

スリランカのライス&カリーにはパリップまたはパルップ(前者はシンハラ語、後者はタミル語、どちらも豆ポタージュ)がつきものです。レンズマメで作られることが多く、インド料理やブータン料理のダルと同じ文化でもあります。スリランカ版は南国らしくシンハラ料理でもタミル料理でもココナッツミルクをふんだんに使い、まろやかな風味と鮮やかな黄色に調理されます。
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軽食 Quick Eats

スリランカ、モルディブ、インドには「炭水化物を使った軽食作り置き」の共通文化があります。スリランカではショートイーツ、モルディブではヘディカ、南インドではティファン等呼びます。スリランカのショートイーツの代表は、エラワルロティ(小麦粉の皮で野菜炒めを三角に巻いて焼いたもの)、ロールズ(同様に春巻き型に巻いたもの)、バニス(ミニおかずパン)、カトゥレトゥ(丸ちびコロッケ)などです。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

シンハラ語、タミル語、英語が混交するスリランカ料理です。シンハラ文字とタミル文字は難解ですが、いずれ勉強をして併記したいと思っています。綴りが分かる単語は、順にシ:、タ:、英:を頭につけて併記しています。

【主食】
  • アーッパ:米粉とココナッツミルクのお椀型の薄焼き
    • ビッタラアーッパ:卵落としアーッパ
  • イディアーッパ:米粉の細い麺
  • キャクルハール:生のまま脱穀した米
  • ストリングホッパー:米粉の細い麺
  • タンバプハール:パーボイルドライス(脱穀前に一度加熱する米)
  • バット:ごはん
    • カハバト:ターメリック入りごはん
    • キリバト:ココナッツミルク入りごはん
  • パン:パンの総称。食パンが多い。
  • ピットゥ:米粉を筒状に蒸したもの
  • ホッパー:米粉とココナッツミルクのお椀型の薄焼き
    • エッグホッパー:卵落としホッパー
  • ライス(Rice):ごはん
  • ロティ(Roti):小麦粉の非発酵薄パン
    • ポルロティ:ココナッツ入りロティ
【カレー系のおかず】
  • ウェンジャナ:おかずの総称
  • ウヤラ:おかずの総称
  • カリー(英:Curry):おかずの総称
  • カリヤ:おかずの総称
  • ククルマス:チキンカレー
  • バトゥ:ナスのカレー
  • ボーンチ:インゲンのカレー
  • マール:魚のカレー
  • ライスアンドカリー(Rice and Curry):ごはんとおかず
【その他のおかず】
  • パリップ(シ:පරිප්පු):豆ポタージュ
  • パルップ(タ:பருப்பு):豆ポタージュ
【軽食】
  • エラワルロティ:小麦粉の皮で野菜炒めを三角に巻いて焼いたもの
  • カトゥレトゥ:丸ちびコロッケ
  • ショートイーツ(Short eats):軽食作り置き
  • バニス:ミニおかずパン
  • ロールズ:小麦粉の皮で野菜炒めを春巻きにして焼いたもの
【その他】
  • カハ:ターメリック
  • キリ:ココナッツミルク
  • トゥナパハ:香辛料ミックス
    • アムトゥナパハ:生トゥナパハ
    • バダプトゥナパハ:ローストトゥナパハ

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