台湾料理

+++新着+++


【基礎情報】

国名:中華民国Republic of China、首都:台北、ISO3166-1国コード:TW/TWN、非独立国(中華人民共和国が実効支配、台湾を独立国として承認する国もある)、公用語:中国普通話、通貨:ニュー台湾ドル

▲目次に戻る


【地図】

台湾は、日本、中国、フィリピンの間にある比較的大きな島国です。中国の福建省ととても近い位置にあります。

▲目次に戻る


◆日本人が美味しいと思う料理が沢山あるのには訳がある

もともとミクロネシア系の原住民が住む熱帯の島に、17世紀頃より中国大陸の南方(福建省や広東省など)から今の本省人(ほんしょうじん)の由来となる中国系の人々が入ってきました。その後、中国の毛沢東共産党に敗れた蒋介石国民党が大陸から台湾に入ってきて、今の外省人(がいしょうじん)の由来となりました。現在、台湾は、本省人が人口の8割以上、外省人は1割、原住民は2%程度を占めます。多くの人は中国本土と同じ言葉を話す現在でも、台湾独自の土着の料理は失わずに受け継がれ、中国本土と同じ料理も多数浸透して食文化の豊かさは増し、台湾は現在(ある程度の面積がある国々の中では)日本の2倍かつバングラデシュに次いで世界第2位という極めて高い人口密度をもつ人口密集国家へと発展しました。その背景には食の豊かさが大きく関与していることでしょう。

台湾
本省系の台湾人家族の団欒に招かれて。なんと路上も食卓になる!(撮影地台南)

台湾を旅すると食が楽しいです。それは外食文化が強くて家庭料理の比重が少ないことが理由に挙げられます。それにより旅行者でも台湾人の普段の食べ物と同じものを食べて楽しめる。これは台湾旅行の偉大な楽しさです。

アジアの中で外食文化が強い地域といえば東南アジアで、このように台湾には東南アジアとよく似た食文化が多数見受けられます。まず台湾に行って感動するのが暑い気候で、ここはもともとミクロネシア人が住んでいた島だということに体感で納得がいくものです。ミクロネシア文化を感じる食材は、芋頭(ユータオ、タロイモ)やキャッサバイモです。芋頭(ユータオ)は台湾の名産の1つで、芋頭蓋飯(ユータオカイファン、芋と肉の煮物をごはんにかけたもの)などのほか、デザート類の材料にもなります。

キャッサバの主要用途はデンプン(タピオカ粉として日本人にも有名)で、水分と共に加熱すると大変にもちもちします。台湾ではもちもちした食感が好まれ、文章の中で「もちもち」を「QQ」(キュキュ)や「QQ的」(キュキュダ)と表現します。漢字が連なる文章の中に突然Qが現れるので最初はビックリします。中国の広東省や香港の飲茶の点心と似たようなもちもちした餃子の皮を作ったり、台湾のスウィーツとして著名な珍珠奶茶(チェンツーナイチャー、タピオカミルクティー)のもちもちした粒を作るのに使われます。

本来ミクロネシア人の島だった台湾に、17世紀頃より中国大陸の南方(福建省や広東省など)から今の本省人(ほんしょうじん)の由来となる中国系の人々が入ってきました。そして本省人は3世紀以上にわたって台湾で福建や広東由来の食文化を受け継いだ結果、台湾でも「小吃」(シャオチー、軽食)の要素が強く存在します。これは、まさしく福建省で顕著な小吃文化との共通点です。台湾に行くと茶(チャー)や果物のおもてなしを受けることもありますが、台湾ではお茶だって福建式に淹れられ、小さなおちょこで飲むのです。

外省人(近年中国大陸から移住してきた人々)の料理には本格的な中国料理があり、彼らは四川料理や北京料理などの本格的中国料理のお店を展開しています。本省人の長年の台湾料理は油も塩分も控えめですが、外省人がもたらす中国大陸の食文化は今では台湾料理の重要な要素になりました。

太平洋戦争で日本が敗戦するまでの近世は日本領で多くの日本文化と同化した時期があり、そのためか、台湾料理は味付けが甘い。日本でも中四国や九州の醤油はそれ以東よりも甘めですが、台湾の調味料は輪をかけていろいろと甘くて、醤油でさえ甘草(カンゾウ)が入っています。また、日本と似て、だしを取る文化があるので、だしの風味を味わう分味付けは薄味で、薄味だからこそ、薬味で香りをつける。乾物や塩蔵の食材をよく使うので、生野菜には出ない深い味わいがある。このあたりの料理のコンセプトは日本料理も同じです。特に、地理的に近い沖縄とは、気候や食材が似ているということ以上に、料理が似ています。中国の記録には沖縄が大琉球、台湾が小琉球と記されており、古くから両者は交易の関係にありました。ゴーヤを繁用すること、肉類は豚肉が中心であること、だしで旨味をつけること、島国なのに意外に魚を食べないこと、など。日本はだしを重んじる薄味文化で、辛味は自分でかけますね(七味唐辛子のように)。台湾も辛い調味料は主に卓上に置いてあり「辛味は自分で足してね」というスタンスなので、土着の本省人系統の料理は辛くありません。この点で外省人の四川料理とは根本が違う。

以上のように、台湾料理を語る4本の柱を紹介しました。

  1. 古い時代からある暑い気候に育まれたミクロネシア人料理
  2. 17世紀以降の本省人料理(福建や広東をルーツとする)
  3. 20世紀以降の外省人料理(本格的中華料理)
  4. 日本の料理の影響

料理の基盤にすでに4つの柱があり、それだけでも台湾料理の幅の広さがうかがえます。那覇よりも南に位置する台湾の気候は暑くいろいろな作物が豊かに育ち、一方で富士山よりも高い山があるくらいなので涼しい土地も多く、つまり台湾は気候帯が幅広く、多様な山海の幸に恵まれます。そこに農耕に長ける民族性と、四季がある台湾は、想像以上に料理の種類が多いです。

冒頭に、『日本人が美味しいと思う料理が沢山あるのには訳がある』と書きました。その理由は、まさに台湾人が日本を好きでいてくれるから。私たちは、台湾を旅すればするほど、心が温まり、嬉しくなり、台湾人の心に感動して台湾料理を食べるから、どんどん台湾料理が美味しく味わえてしまうのです。
▲目次に戻る