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- 「食習慣」の項を新設しました。
【基礎情報】
国名:フィリピン共和国、Republic of the Philippines、首都:マニラ、ISO3166-1国コード:PHL/PH、独立国(1946年米国より)、公用語:フィリピン語(タガログ語)/英語、通貨ペソ。
【地図】
フィリピンは比較的日本に近い島国です。近くには、台湾、マレーシア、インドネシアがあります。
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◆少ない調味料でも多くの料理。ごはんに合うおかずがいっぱい!
フィリピンは、北は台湾、西はマレーシアやインドネシア、東はパラオ、グアム、北マリアナという南国のロケーションです。よってフィリピン料理の基本は、気候の似たそれらの国々と共通点のある南国の料理と、東南アジア各国に共通する醤油と、古来より続く稲作による米食です。
血で内臓を煮るディヌグアン。フィリピン人は豚のあらゆる部位を料理に使う。(撮影地ダバオ)
私が初めてフィリピンに渡航したとき、マニラ、バダンガス、サバンという近圏2島で1週間の旅をしました。フィリピン料理の代表的なものを幾つも学んだにもかかわらず、帰国後も、ずっとずっと、「このままではフィリピン料理を語れない」と思い続けていました。フィリピンは7000を超える数の島がある国です。「1日1島を旅しても20年かかる」と言われると、その島の多さに途方に暮れてしまいそうです。そうして再度フィリピンを訪問する機会を得て、そのときは、最南端ミンダナオ島からフィリピン最北端まで、飛行機を使わずに陸路と海路で島と島をつなぎ、30日間かけて旅をしました。そのときの感想としては、多数の島があって文化的隔たりが多いかと思いきや、文化的にはそれほど差異はなく、「フィリピン料理」として知られるものは、フィリピンのどこに行っても割と見かけることができるという印象でした。そしてその中に、地域の食習慣の差異や地域特産料理が垣間見れるという感じです。
歴史の中で、支配者の料理が流入することは普通のことで、フィリピンの場合は特にスペインとアメリカの影響が強く、料理名にはスペイン語と英語の名が多くついています。あとは、海を挟んだお隣の国である中国や台湾と同じ料理もあります。日本との関連を言えば、フィリピンは沖縄と気候が近く、さらにフィリピンは琉球王国と交易があったためか、沖縄の料理と錯覚するようなフィリピン料理も存在します。
フィリピン料理の主要なフレーバーは、スーカ(酢)、トゥヨ(醤油)、にんにく、生姜、玉ねぎ、パティス(魚醤)やバゴオン(発酵エビ)など。ハーブや香辛料の使い方は、他の東南アジアの国と似ている要素もあるのですが、台湾や日本に近いものもたくさん感じます。比較的少ない調味料で料理を作るので、素材の味が生きていますし、日本人にも作りやすい、そして日本人が美味しいと思う料理だと思います。
米と豚肉と魚をとにかくよく食べる食文化。人の顔も日本人と近くて、料理にも日本と近いものがあって、親日家も多い国で、嬉しいですね。
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主食 Staple
フィリピン人の主食は米です。英語でライスといえばたいがい通じますし、タガログ語でカニンと呼ぶほうが通じやすいこともあります。赤米や茶色い米も売られていますが、普通は白くてパサパサしたお米(インディカ米)です。米の炊き方は、ゆでてから湯を捨てる方法で、粘り気がありません。最近は自動炊飯器が普及してローカル食堂では、平皿に型抜きごはんを乗せ、おかずを小皿に添えてサーブする光景がよく見られます。フィリピンの年間米生産量は日本を上回っています。そして米輸入量もまたとてつもなく多いです。ともあれ朝も昼も夜も、主食は米が基本なので、お給料だけでなくお米現物を支給する会社もあると聞きます。
お米を使った料理には、アロースカルド(鶏肉入りのお粥)があります。
インドネシアもバングラデシュも日本もそうですが、米をよく食べる国は、人口が多くて人口密度が高いですよね。米は、人を育てるのです。ここフィリピンも同じです(フィリピンの人口密度は307人/km2と日本(336)に匹敵する(2009年))。
フィリピンではパン屋(パナデリア(Panaderia)やベイクショップ(Bake shop))もにぎわっています。フィリピンではパンの事をブレッド(英語)ではなくパン(スペイン語)と呼ぶことからも、パンを食べる習慣がおそらくスペイン統治の時代から始まっていたと思われます。イベリア半島(スペインやポルトガルがある半島)ではよく見る甘いパンも多数売られていて、パンの種類は多いと思います。典型的なフィリピンのパンは、パンデサル(直訳して塩のパン)という、ポルトガル伝来のシンプルパンです。
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肉のおかず Meat
肉類としては、バボイ(豚)≫マノック(鶏)≒バカ(牛)>カンビン(ヤギ)、の順で食べられている印象があります。
フィリピンでは、基本的にはどの島に行っても豚肉料理を見ることができます。豚の顔部分の料理、腸の料理、皮の料理、レバーの料理、血の料理と、豚肉料理のラインナップは多く、「豚肉を知り尽くしている民族だな」とひしひしと感じます。自宅で豚を飼い、自宅でさばくという家も多いです。お祝い事などの祭事にはレチョンバボイ(豚の丸焼き)が食卓の中央に置かれます。また、旅行者でも通常見かけることのできるレチョン(丸焼き又はかたまり肉焼き)なら、レチョンマノック(鶏の丸焼き)があります。
アドボは、フィリピン中~北部では、肉類の酢醤油仕立ての炒め煮です。中~南部ではギサド(炒め煮の総称)と変わらなくなり、酢が入らない醤油中心のアドボや、ココナッツミルク煮のアドボも多くなります。通常アドボといえば肉類の料理です。使う肉の名前をつけ、アドボンバボイ(豚肉のアドボ)やアドボンマノック(鶏肉のアドボ)と呼ばれます。興味深いことに南部ミンダナオ島のイスラム教徒居住区ではマグロでアドボを作っており、「アドボは肉にこだわらなくてよいのだ」と思えたことは大発見でした。
ギサドは炒め煮(あるいは煮込み)の総称で、アタイ(レバー)を使ったギサドンアタイはよく見かける一品です。ギサドは生姜や玉ねぎで風味をつけた醤油ベースが多いかな。
その他、ホンバ(甘酢仕立てあるいは醤油がしっかりきいた、豚の角煮)、シシグ(豚の顔の部位を細かく刻んで炒めたもの)、カルデレータ(コクのある煮物で、レバーペーストを調味料にすることが多い)、メヌード(トマト仕立ての肉じゃがシチュー)、ハランハラン(唐辛子を入れた辛い炒め煮)などがあります。
朝食に、ごはんと合わせてよく食べられるのが、ロンガニーサ(ソーセージ)、チョリソー(ソーセージ)、トシーノ(調味料をたっぷりまぶした焼肉)です。
豚をさばいたときに得る血液も無駄にされていません。内臓を刻んで血液で煮る料理は、フィリピンでは昔むかしから作られてきた料理で、地域によってディヌグアン(タガログ語)やドゥゴドゥゴ(セブアノ語)等の呼び方があります。
夜に賑わう屋台では、バーベキューをどうぞ。事前に串に刺して並べてある具はアツエテ(ベニノキの色素)で真っ赤に仕立てられています。ビサヤ語でアラカルテという名称のほうがイメージにぴったりで、好きなものをお客が選び、お店が炭火焼きにします。1串数円から食べられます。
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スープ類 Soup
フィリピンの代表的スープには、シニガンがあります。肉のシニガン、魚のシニガンなど種類も豊富。共通点はタマリンドや柑橘果汁などで酸味をつけていることです。暑い国なのでシニガンは疲れを取るにも美味しく感じます。
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挑戦する? We dare you
ちょっと受け付けないからと日本人が遠慮しがちな料理と言えば、上述のディヌグアン(内臓を血で煮る料理)があるでしょうか。
そのほかには、チチャワーム(細長いイモムシのサクサクスナック)も、ちょっとひるむ外観です。
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食習慣 Habits & Customs
「フィリピン人はとにかくよく食べる」と言われます。でも1皿の料理は少ないんです。フィリピンの食事は1日に4~5回が普通。3食のほか、朝食と昼食の間の「モーニングメリエンダ(Merienda)」と、昼食と夕食の間の「アフタヌーンメリエンダ」があります。これは300年以上も統治されていたスペインの習慣です。スペインの夕食は遅いけれどフィリピンの夕食は夜7時ごろ。だから1日5食にする必要もないのではとも思いますが。また、アフタヌーンメリエンダの時刻が遅れて夕食間際になったとき、「メリエンダ・セーナ(cena)」と呼び本来の夕食を外すこともあります。メリエンダでは、甘いものを食べることも、スナックだけのことも、そしてちゃんと食事をとることもあります。
食事の回数が多い国なので、1回の食事の量は少なめです。このことを知らなかったので、1日3食ペースで旅をしていたとき、しょっちゅう「量が少ないなあ」と感じていました。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
【主食】
- アロースカルド(Arroz caldo)・・・鶏肉入りのお粥
- カニン(Kanin)・・・ごはん
- パン(Pan)・・・パン
- パンデサル(Pan de sal)・・・シンプルパン。
- ライス(Rice)・・・ごはん
【肉の種類】
- アタイ(atay)・・・レバー
- カンビン(kanbing)・・・ヤギ
- バカ(baka)・・・牛
- バボイ(baboi)・・・豚
- マノック(manok)・・・鶏
【肉のおかず】
- アドボ(adobo)・・・肉類の酢醤油仕立ての炒め煮
- アドボンバボイ(adobon baboi)・・・豚肉のアドボ
- アドボンマノック(adobon manok)・・・鶏肉のアドボ
- アラカルテ(alacarte)・・・肉類の串焼き
- カルデレータ(kaldereta)・・・コクのある煮物
- ギサド(gisado)・・・炒め煮の総称
- ギサドンアタイ(gisadon atay)・・・レバーの炒め煮
- チョリソー(chorizo)・・・ソーセージ
- ディヌグアン(dinuguan)・・・内臓を刻んで血液で煮る料理
- ドゥゴドゥゴ(dugo dugo)・・・内臓を刻んで血液で煮る料理
- トシーノ(tosino)・・・調味料をたっぷりまぶした焼肉
- バーベキュー(BBQ)・・・肉類の串焼き
- ハランハラン(halang halang)・・・唐辛子を入れた辛い炒め煮
- ホンバ(humba)・・・豚の角煮
- メヌード(menudo)・・・トマト仕立ての肉じゃがシチュー
- ロンガニーサ(longganisa)・・・ソーセージ
- レチョン(lechon)・・・丸焼き(又はかたまり肉焼き)
- レチョンバボイ(lechon baboi)・・・豚の丸焼き
- レチョンマノック(lechon manok)・・・鶏の丸焼き
【スープ類】
- シニガン(Sinigang)・・・酸味のあるスープ
【挑戦する?】
- チチャワーム(chichaworm)・・・細長いイモムシのサクサクスナック
【調味料等】
- アツエテ(atsuete)・・・ベニノキの色素
- スーカ(suka)・・・酢
- トゥヨ(tuyo)・・・醤油
- バゴオン(bagoong)・・・発酵エビ調味料
- パティス(patis)・・・魚醤