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- 「魚介のおかず」にモッセレンを追記しました。
【基礎情報】
国名:ベルギー王国、Kingdom of Belgium、首都:ブリュッセル、ISO3166-1国コード:BE/BEL、独立国(1830年オランダより)、公用語:オランダ語、フランス語、ドイツ語、通貨:ユーロ。
【地図】
地図をよく見るとベルギーは国内に境界線があり、南北中央の3つの領域があります。北部は主にオランダと接し、南部は主にフランスと接しています。
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◆童話の中の素朴な料理から、国際最先端の食事まで。
ベルギーは日本の四国と同サイズのとても小さな国です。小さな国なのに国は三分割されています。上の地図をよく見ると国内が上下に分断する破線が見えるかと思います。この国内の境界線により、首都付近のごく狭い「ブリュッセル首都圏」、北部「フランドル地方」と、南部「ワロン地方」に分かれているのです。北部のフランドル地方はその北にあるオランダと同様にオランダ語系住民(ゲルマン語系)が住み、南部のワロン地方はその南にあるフランスと同様にフランス語系住民(ラテン系)が主に住みます。そのため、ベルギー料理の基礎は、オランダとフランス北部の料理の基礎のいずれとも重なります。国内最大標高も600mと低く、農耕や牧畜に適し、豊かな作物に恵まれ、海岸線をもつことから新鮮な魚介類も食べられています。
おかずが違っても、フリットは定番の付け合わせ兼主食。(撮影地ブリュッセル)
「連邦国家」という国家概念は日本にいると実感できないものですが、かつての日本は、播磨の国や出雲の国などが集まる国の連合でした。このように、「国の中に国がある」といった行政形態を連邦国家と言います。ナイジェリアやマレーシアやロシアなど、世界には多くの連邦国家があります。ベルギーは、首都地域と北部フランドル地域と南部地域の連邦体です。
・・・ここはかつて伯領や司教領などの小国群(ネーデルラント)であり、大国に圧倒され続けた戦乱の地。小さな国々が連なるところ、時代は宗教改革という火種を抱え、結果的には、歴史的に親スペインないしカトリックが強い地域としてプロテスタントが強いオランダから独立した部分が今のベルギーに相当します。ここからが大事なのですが、「同じ言語の人々で独立した訳ではない」。ここがベルギーの最たる基礎となるのではないでしょうか。だから今も国内にフラマン(蘭語)とワロン(仏語)の言語境界線があるのです。そしてその言語の差異があることから、国の完全統制は困難であり、今もベルギーは国分断の火種を抱えています。
しかし、そのような民族の境界を越えて共有される伝統料理も多くあります。ベルギー人は美食家であると言われ、外食率も高く、肉類や魚介類の消費量が多いと言われています。
各論の前に、ベルギーを構成する3連邦の料理の特徴を述べておきます。
【ブリュッセル首都圏】
ベルギーの首都ブリュッセルは、1957年に発足した欧州経済共同体の首都を継承し、現在もEUの首都です。それだけに、世界各国から要人が訪れ、またベルギー人の外食好きも重なり、世界各国の料理が食べられるインターナショナルシティーとなっています。メインの観光地のグランプラスの周辺には特に観光客向けのレストランが連なり、美味しいベルギービール、名物ムール貝のワイン蒸し、ハイクオリティーのチョコレート菓子など、ベルギーが世界に誇るあらゆるものを食べることができます。ブリュッセルは中東系を中心とした移民が多く、またアフリカ人コミュニティーも発達し、食文化のインターナショナリゼーションに輪をかけています。
【フランドル地方】
ベルギー北部のオランダ語系住民の居住地区は、平地が広がっています。料理はオランダと同じ基礎を持っています。児童文学「フランダースの犬」にも「フランダースというところは見渡す限りどこまでも牧場や田畑がつらなっているだけで、変化に乏しい、あまり面白いとは言えない土地ですが、そこにはまた、この地方独特の景色もあるというものです。」という記述があります。フランドル地方の民謡には、じゃがいもや玉ねぎなどの素朴なスープが、しばしば登場します。フランドル地方は、農業や牧畜だけでなく、海岸線をもつことから漁業も行われ、ベルギーの豊かな食文化を作ってきました。
【ワロン地方】
ベルギー南部のフランス語系住民が居住地区は、平地や緩やかな丘陵地帯があります。料理はフランス北部と同じ基礎を持っています。
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主食 Staple
ベルギーは、国全体を通して、主食はじゃがいもとパンです(じゃがいもは事項参照)。
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じゃがいも Potatoes
じゃがいもは下に出てくるムールフリット(ムール貝のワイン蒸しとフライドポテトの定番セット)のように、付け合わせのようであって、主食でもあります。
ベルギー人は、フリット(フライドポテト)は自分たちの作りだした料理だと主張する、という説があります。どんな村にもフリトリー(フライドポテト屋台)やフリチュール(フライドポテトショップ)があり、2度揚げ絶品のフライドポテトがマヨネーズと共に出されます。タルティフレットという、じゃがいもベーコン炒めにチーズを乗せてオーブン焼きにしたワロン地方の料理は、フランスでも国民食です。
ワロン地方の主要都市の1つにリエージュがあります。その街の名を冠したサラダリエジョワーズ(別名サラダティエドゥ)は、じゃがいもやインゲンなどを使ったホットサラダです。リエージュがフランス語圏に属する都市なのでフランス語読みで紹介されることが多いものの、ベルギー全土で作られる家庭料理でもあり、オランダ語圏では(リエージュのオランダ語名がラークであるため)ラークスサラダと呼ばれます。
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肉のおかず Meat
お肉料理は、カルボナード(またはカルボナードフラマンド、塊肉の黒ビール煮)は特にフランドル地方の名菜で、そのほかフィレアメリケン(生肉のユッケ風タルタルステーキ、タルタルとも呼ばれる※)も有名です。
※アメリケンはアメリカ式という意味ではない。
魚介のおかず Seafood
ベルギーはシーフード料理が有名です。ベルギー料理の代表的イメージの強いムール(ムール貝、ムールマリニエールとも)はフランス語名で、オランダ語ではモッセレンと言います。
ムールフリットはムール貝の白ワイン蒸しとフライドポテトのセットメニューで、代表的なムール貝の食べ方です。
エビもよく食べられており、クロケットドゥクルベット(小エビの俵型クリームコロッケ)やトマトオークルベット(小エビをトマトカップに詰めたもの)が名物料理です。ニジマス料理も美味しいです。
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スープ類 Soup
スープ料理は古くからベルギーの記録や童話に見られ、ワーテルゾーイ(フランドル地方発祥の、卵黄入りクリームシチュー)やアンギーユオヴェール(刻み青菜入りの緑のウナギスープ)が人気です。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
ベルギーのサラダから、フランス語料理名におけるアクサン(éやè)が分かる。
【じゃがいも料理】
- サラダティエドゥ・・・じゃがいもやインゲンなどのホットサラダ
- サラダリエジョワーズ・・・じゃがいもやインゲンなどのホットサラダ
- タルティフレット(Tartiflette)・・・じゃがいもベーコン炒めにチーズを乗せてオーブン焼き
- フリット(Frites)・・・フライドポテト
- ムールフリット(Moules Frites)・・・ムール貝のワイン蒸しとフライドポテトのセット
- ラークスサラダ・・・じゃがいもやインゲンなどのホットサラダ
【スープやシチュー類】
- アンギーユオヴェール(Anguilles au Vert)・・・刻み青菜入りの緑のウナギスープ
- ワーテルゾーイ(Waterzooï)・・・ウサギ、鶏、魚介類などの卵黄入りクリームシチュー
【肉料理】
- カルボナード(Carbonnade)・・・塊肉の黒ビール煮
- タルタル(Tartare)・・・生肉のユッケ風タルタル
- フィレアメリケン(Filet americain)・・・生肉のユッケ風タルタル
【魚介類】
- クロケットドゥクルベット(Croquette de Crevettes)・・・小エビの俵型クリームコロッケ
- トマトオークルベット(Tomates aux Crevettes)・・・小エビをトマトカップに詰めたもの
- ムール(Moules)・・・ムール貝料理
- ムールマリニエール(Moules Marinière)・・・ムール貝料理
- ムールフリット(Moules Frites)・・・ムール貝のワイン蒸しとフライドポテトのセット
- モッセレン(Mosselen)・・・ムール貝料理