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- 豆のおかずの項を新設しました(今後の投稿は、軽食、魚のおかずなどを予定しています)。
【基礎情報】
国名:ソマリア連邦共和国、Federal Republic of Somalia、首都:モガディシュ、ISO3166-1国コード:SO/SOM、独立国(1960年英国とイタリアより)、公用語:ソマリ語、アラビア語、通貨:シリング。
【地図】
ソマリアはアフリカの「角」に位置する国で国境線の多くをエチオピアと接しています。その他ジブチ、ケニアと接しており、紅海を渡ると対岸はイエメンです。
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◆ソマリアといえばラクダ。交易の影響を強く受けた料理。
アフリカ大陸の東北部に位置し「アフリカの角」と呼ばれるソマリアは、アフリカでは珍しいことに、単一民族・単一言語・単一宗教(ソマリ族・ソマリ語・イスラム教)の国です。ソマリ族の分布はソマリア国土より広く、ケニア、エチオピア、ジブチなど周辺国にも多数のソマリ族が居住しています。ソマリ族は国内で6つの氏族(クラン)に分かれており、1960年に独立国になるも、権力争いなどから内紛が絶えません。国連が平和維持に介入するも内部氏族の攻撃を受け、世界中の非難を浴び、国連が撤退して誰も救済しない国になって内戦と無政府状態が続きました。我が国は、2012年に再発足したソマリア政府を承認しましたが、今も危険な国であることに変わらず、国境なき医師団は2013年にソマリア撤退を決定。紛争と飢饉を知らないソマリア人はいないとさえ言われる昨今、国民の多くが食糧を十分に得られない悲惨な国の食事情を、ここで美味しそうに書くことは、心苦しいものがあります。
イリップゲル(ラクダ肉)やバスト(スパゲティー)などのソマリア料理(撮影地ハルゲイサ)
ソマリアは、イエメン方面から海を越えて渡ってきたソマリ族の国です。
(※先住民はユダヤ人であるという研究論文があります。紀元前にイスラエルからエジプトへ奴隷として連れてこられた人々の一部が離散して、現在のエチオピアのファラシャやソマリアのYibir氏族となり、地位が低い集団として扱われています。)
ソマリ族は、国土の大半が砂漠であるソマリアの土地で、遊牧民(ノマド)として、ラクダをひいて暮らしてきました。より正確に言うと、エチオピア南東部とジブチの一部もソマリ人の居住地で、ソマリ人は自分たちの望まない国境線によって分断された民族と言えます。
歴史の中で、ソマリ人の暮らしには海がありました。現在ソマリアの首都であるモガディシュ(モガディシオ)は、アラブやインド方面とアフリカ南部(現在のタンザニアやモザンビーク)をつなぐ海の交易路の主要中継地点の1つでした。14世紀にモガディシュを訪れたモロッコの大旅行者イブンバトゥータは、ソマリアの繁栄を、「良い服をまとい、人々は太っていた」と記録しています。ソマリアは極めて高価な「乳香」が採れる土地なので、きっと多数の取引と共に栄えたに違いありません。
また、その取引には香辛料も含まれており、その歴史の結果として、ソマリア料理は香辛料を使う、スパイシーなものが多くなっています。
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主食 Staple
私が「ソマリア料理の主食」と言われて思いつくものは主に3つあります。バリース(米)やバスト(スパゲティー)、そして穀物の粉と水から作る様々な形状のパン類です。料理名としてバリースと言えば、シンプルに炊いたごはんから、肉と肉汁を使って炊く豪華なごはんまでを指すこともあります。ソマリア料理の数々からはヨーロッパの支配下に置かれていた歴史をあまり感じないのですが、スパゲティーだけは別。スパゲティーを多用することはイタリアの影響とみられています。1960年の独立前は、北部がイギリスの植民地、南部がイタリアの植民地だったので、バスト(スパゲティー)はもともと南部(首都モガディシュも含めて)で多食されているものでしたが、北部にも随分と浸透しました。一方、北部ではバリース(米)が多食されています。ちなみにソマリアの食事は昼食がメインなので、バリースは朝や夜にはあまり出会えません。
ムッフォは麦やトウモロコシから作られる平たいパンです。アンジェロ(ラホーフとも呼ぶ)は、ソマリア、ジブチ、イエメンあたりに起源をもち、エチオピアやエリトリアのインジェラ、スーダンのキスラと類似する、発酵した生地で作る薄焼きのパンです。ソマリアでは、ムッフォやアンジェロは、おかずと一緒に主食として食べることもありますが、特に朝食ではムッフォやアンジェロに砂糖と紅茶と油(スバ(乳脂肪、インドのギイみたいな)やマクサロ(ごま油))をかけて食べたりもします。
また、ソマリア南部(首都モガディシュ周辺やラハンウェイン氏族の居住地)では、随分とソールすなわち穀物の練り物(トウモロコシの粉やソルガムの粉を湯で練ったもの、ケニアのウガリと同じ)が多くなります。
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肉のおかず Meat
ソマリア料理と言えば筆頭はイリップゲル(イリップ=肉、ゲル=ラクダ、つまりラクダ肉)です。肉を細く切って炒めた料理はスカールと総称され、ソマリアの国民食です。肉とジャガイモのソテーだったり、キャベツ、トマト、玉ねぎなどが入ることもあり、また、ごはん&スカールの組み合わせや、スパゲティーにスカールを混ぜて食べられています。ヤギ肉はイリップアリ、羊肉はイリップイドと言い、同様の調理法で食べられます。
少数派の肉としては牛肉や鶏肉も消費されます。しかし豚は遊牧に適さず、また7世紀からのイスラム教の浸透に伴い、ほとんどのソマリア人は豚肉を食べません。
ラクダなどの家畜が屠殺されればベール(肝臓)やケリヨ(腎臓)が生じます。レバーソテーやキドニーソテーは、その名ずばりベールやケリヨという料理名になります。これらの内臓類は保存がきかないので、屠殺した直後、すなわち朝食の定番です。
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豆のおかず Beans
豆類もソマリアで重要な食材です。首都モガディシュを調査したソマリア新聞記事によると、夕食にカンブーロ(またはアンブーロ)という、豆やトウモロコシ粒を炊いた料理(ケニアのギゼリと同じ)を食べる家庭は8割にのぼるのだとか(カンブーロはポップコーンのこともある)。ブンイヨカンブーロ(ブン=コーヒー、イヨ=and)はカンブーロにコーヒー豆の油煮をかけるもので、ソマリアの祝事の定番料理です。また、エジプト、スーダン、ジブチなどで見られるフール(トマトや玉ねぎと油で旨味をアップした豆の水煮)もソマリアでよく食べられています。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
【主食】
- アンジェロ(Canjeero)・・・穀物の粉の溶液を発酵させて薄焼きにしたもの
- ソール(Soor)・・・穀物の粉の練り物
- バスト(Baasto)・・・スパゲティー
- バリース(Bariis)・・・米(ごはん)。
- ムッフォ・・・麦やトウモロコシの粉から作られる平たいパン
- ラホーフ・・・アンジェロと同じ
【肉のおかず】
- イリップアリ・・・ヤギ肉
- イリップイド・・・羊肉
- イリップゲル・・・ラクダ肉
- ケリヨ・・・腎臓ソテー
- スカール・・・肉を小さく切って炒めた料理
- ベール・・・レバーソテー
【豆のおかず】
- アンブーロ・・・豆やトウモロコシ粒を炊いたもの
- カンブーロ・・・豆やトウモロコシ粒を炊いたもの
- ブンイヨカンブーロ・・・カンブーロにコーヒー豆の油煮をかける
- フール・・・トマトや玉ねぎと油で仕立てた豆の水煮