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- ウムの項を新設しました。
【基礎情報】
国名:サモア独立国、Independent State of Samoa、首都:アピア、ISO3166-1国コード:WS/WSM、独立国(1962年ニュージーランドより)、公用語:サモア語、英語、通貨:タラ。
【地図】
サモアは南半球の太平洋の島です。すぐ東に米領サモア、西にウォーリスフトゥナ、北にトケラウ、南にニウエやトンガがあります。
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◆伝統文化が今も根付く、ポリネシアの典型的な食文化
一番に知ってほしいサモアの言葉に「ファアサモア」(Fa’a Samoa)があります。直訳すると「サモア式」などになるのですが、私はそれを、サモア人がサモアの誇りを持ってサモアの伝統に依拠する心だと思っています。サモアの旅はいろいろな「ファアサモア」を見て体感しに行くところではないでしょうか。特に離島に行くと、ファレ(柱と床と屋根だけの壁のない伝統住居)の暮らしや、日曜日のウム(地中蒸し焼き料理)や、ココナッツミルクを絞る光景など、今も残る伝統的な暮らしに目が奪われっぱなしです。
サモアの普段のごはん風景。タロ、豚肉、七面鳥、ココサモア。(撮影地サトゥイアトゥア)
オセアニア(大洋州)は、東南アジアに近いミクロネシアとメラネシア、中~東方のポリネシアに大別され、サモアはポリネシアに属します。ポリネシア人は東南アジア方面からメラネシアを経由して舟で渡ってきた人という説が有力で、サモアにはおよそ3000年前に人が定住したと推測されています。このようにポリネシアはオセアニアの中でも新しい時期に形成された地域であることから、島が変わっても人や文化の隔たりが小さい(均一性が高い)のが特徴で、よって、サモア料理はトンガやクックや仏領ポリネシアなど、他のポリネシア諸国とよく似ている印象があります。
サモア料理を学ぶ前に、サモアと米領サモアが違う国であることを理解するために、両国に関連する歴史を簡単に把握していることが前提になります。西方から移動した人々は今から3000年前頃にはサモアの地に居住していたとされ、中世に欧米人が到来すると補給港として栄え、ドイツ、イギリス、アメリカの支配権争いののち、1899年にはその三国間の協定により西の島々をドイツが、東の島々をアメリカが領有することになります。それが現サモアと、現米領サモアです。ドイツの敗戦により現サモアはニュージーランドの委任統治領へと変わり、長い独立運動を経て1962年に太平洋で植民地支配から独立した最初の国となり、1970年に英連邦に加盟します。
サモア料理といえばイモとバナナとココナッツ、豚と鶏と魚。面白いことにカレーと春雨。そして鎮静ドリンク「アバ」。南の楽園サモアの食文化を、それでは見ていきましょう。
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主食 Staple
代表的な主食はタロ(大きなサトイモ)やファイ(甘くないバナナ)で、シンプルにゆでたり、ゆでてココナッツミルクを絡めて食べます。また、かつてタロイモに疫病が発生して減収したときに増産されたタアムー(インドクワズイモ(超巨大なサトイモ))もよく見かけます。
マニオッタ(キャッサバ)も食べられているものの頻度は落ちるようで、この点で、ゆでキャッサバが頻繁に食べられるトンガの違いを感じます。
ウル(パンの実)は巨木に生る実で、ハンドボールからバレーボールほどのサイズがあります。たき火の中で黒焦げになるまで放置するとホクホクになり、イモ感覚で食べられます。ただしウルは年中収穫できるものではなく、常時の主食にはなりません。
伝統的な主食ではありませんが、アライサ(米、ごはん)やサイミン(小麦粉の麺類、大抵はアジアから輸入のインスタントラーメン)もよく食べられるようになりました。アライサ(ごはん)はカレ(カレー)の友でもあります。
サモアらしいお米の食べ方はココアライサです。「カカオと米」という意味で、ココサモア(カカオ飲料)にごはんを入れた甘いお粥。味がかなりお汁粉に似ています。
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肉のおかず Meat
サモアの典型的なおかずはプアア(豚肉)です。祭事のときは豚が丸焼きにされます。家庭では豚のぶつ切りを炒め、大量に出てくる脂でやがて揚げ煮になったものも食べられていました。
モア(鶏肉)もよく食べられます。食堂や市場ではモア(フライドチキン)を頻繁に見かけます。ピーピー(七面鳥)も食べられています。そしてみんなが大好きなソシシ(ソーセージ)もよく見かけます。
肉類はカレ(カレー)にもなります。中華風のダシの味わいがする肉野菜の不思議な汁物ですが、美味しいですし、サモア人にも人気です。
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パルサミ Palusami
パルサミは、サモアを最も代表する料理だと思います。タロイモの葉を何重にも重ねて、中にココナッツクリームを閉じ込めてホイル(伝統的手法ではバナナの葉)でくるんでウム(現代はオーブン焼きも)にしたものです。トンガでは更に肉や魚介類がわんさか入りましたが、サモアではそのようなタンパク質源はなくてもOK。包みを開いて登場するのは、水分がほどよく抜けたまろやかでクリーミーなココナッツクリームで、これが実に旨いのです。
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ウム Umu
ウムはオセアニア各国共通の伝統調理法で、英語では「earth oven」(アースオーブン)と訳されます。日本語ではさしずめ「地中蒸し焼き料理」などでしょうか。たき火をして焼け石を大量に作り、バナナの葉やアルミホイルに具を包み、タロ、タアムー、マニオッタ、ファイ、ウルなどの主食も用意します。あればパルサミも作ります。そして焼け石と主食とおかずを地面の穴に封じ込めて厚い覆いをすると、おかずやイモは焼け石の温度でじっくりと蒸されるように加熱されます。ウムの利点は、外が焦げずに中まで火が通ること、ココナッツミルクと共に具を包めること、仕込んだあとは数時間手があくことなど。ウム調理は基本的には男性の仕事です。
ウムはトオナイ(日曜日の家庭の昼食)または冠婚葬祭の料理で、レストランの料理ではありません。
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宗教に関連して Food & Religion
サモア人の97%がキリスト教徒です。日曜日には教会でミサがあり、大人も子供もお洒落をして参列します。日曜日は男性陣が早朝にウムを仕込みます。そして午前中は教会に参列し、帰宅したらウムを開けて蒸し焼き料理を取り出して昼食をお腹いっぱい食べ、午後は昼寝をして過ごします(労働が禁止されているので洗濯も掃除もしません)。これらの点は概ねトンガと共通しています。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
【主食類】
- アライサ(Araisa)・・・米、ごはん
- ココアライサ(Koko araisa)・・・カカオ風味の甘いお粥
- ウル(’Ulu)・・・パンの実
- サイミン(Saimin)・・・小麦粉の麺類、インスタントラーメン
- タアムー(Ta’amū)・・・インドクワズイモ(超巨大なサトイモ)
- タロ(Talo)・・・大きなサトイモ
- ファイ(Fa’i)・・・甘くないバナナ
- マニオッタ(Maniota)・・・キャッサバ
【肉のおかず】
- カレ(Kale)・・・カレー
- ソシシ(Sosisi)・・・ソーセージ
- ピーピー(Pīpī)・・・七面鳥
- プアア(Pua’a)・・・豚肉
- モア(Moa)・・・鶏肉、フライドチキン
【その他おかず】
- パルサミ(Palusami)・・・タロイモの葉でココナッツクリームを包み焼き
【飲み物】
- アバ(’Ava)・・・鎮静ドリンク
- ココサモア(Koko Samoa)・・・カカオドリンク
【調理法】
- ウム(’Umu)・・・地中蒸し焼き料理
【その他】
- トオナイ(To’ona’i)・・・日曜日の昼食