グレナダ料理

基礎情報グレナダGrenada、首都セントジョーンズ、ISO3166-1国コードGD/GRD、独立国(1974年、英国より)、公用語英語。通貨東カリブドル

◆香辛料と魚の楽園へようこそ。

グレナダはカリブ海の南部。近隣国はバルバドスやトリニダードトバゴです。

グレナダは、セントビンセント・グレナディーンとトリニダード・トバゴに挟まれた位置にあるカリブ海南部の島国です。長年にわたってフランスやイギリスの植民地であったこと、国民の大多数が奴隷として運ばれてきたアフリカ人の子孫であること、島国ゆえフルーツや魚に恵まれていることなど、食文化の基礎的背景は他のカリブ海諸国と多数共通します。よってグレナダ料理といえば、基本的にはカリブ海の典型的料理ですが、もうひとつ、ここが「香辛料アイランド」であることがグレナダ料理を特徴づけています。

グレナダは、今も文化、建築、場所名などにかつての宗主国である英国やフランスの痕跡を残しており、国民の大多数はアフリカ人奴隷の子孫です。これは18世紀にサトウキビプランテーションが設営され、労働力としてアフリカから奴隷が移送されたことに端を発します。しかし18世紀後半の自然災害でプランテーションは破壊され、他の換金作物を得るために、カカオ、綿、香辛料(ナツメグなど)が持ち込まれました。これが契機となり、やがてグレナダは「Spice Islands」(香辛料の島)と呼ばれるようになります。


香辛料の国ですもの。お土産物売り場は香りに満ちています。(撮影地セントジョージ)

グレナダ料理の食材といえば、他のカリブ海の島国と同じく、魚です。グレナダで食べられる魚介類の料理は実にたくさん。お店に入れば、普通のサンドイッチやラップやサラダやクレープなどがあるのですが、よくメニューを見ると、それらはフィッシュサンドイッチ(魚介類のサンドイッチ)、シーフードラップ(魚介類のラップ)、ランビーサラダ(コンク貝のサラダ)、ロブスタークレープ(大型エビのクレープ)といったラインナップが続々と並んでいます。その他、フィッシュナゲット(すりみ揚げ)、グリルドフィッシュ(魚の切り身のグリル)、グリルドランビー(コンク貝のグリル)、カリードランビー(コンク貝のカレー)、ツナステイク(マグロ肉のステーキ)などなど、魚介類を使って様々な料理を作っています。

グレナダ本島の北西部セントジョン郡には、ゴーブ(Gouyave)という、300年以上にわたり漁業を生業としてきたグレナダ最大の漁業町があります。ゴーブでは毎週金曜日に、「フィッシュフライデー」というダンスや屋台料理を楽しむお祭りが開かれます。イエスキリストは、金曜日に張り付けになり日曜日に復活したことから、キリスト受難の曜日である金曜日には肉食を避ける意味もあって、クリスチャンが圧倒的に多いグレナダ人は、金曜日の夜は皆で魚料理で盛り上がるのです。なお、バルバドスやセントルシアなどの近隣国でも同じくフィッシュフライデーが開かれていますので、これはカリブ海南部の共通文化とみなすことができます。もし観光でフィッシュフライデーに訪れたならば、魚介類の豊かさやカリプソの透き通った音色や黒人の機敏なダンスに気持ちが盛り上がります。

家庭料理では、特にソルトフィッシュ(戻した塩漬けタラと野菜の炒め物)が重要な位置づけにあります。これもカリブ海南部の定番のおかずですね。パンと合わせて食べることが多く、日本人がカレーとごはんをセットで「カレーライス」と呼ぶように、グレナダでは「ソルトフィッシュアンドベイクス」というセット名で呼ぶ定番コンビが人気です。

肉類も食べられています。ヤギやヒツジは日常的に食べられる肉ですが、豚肉、鶏肉、牛肉なども流通しています。グレナダの国民食であるイルダンは、伝統的には豚のしっぽを様々な具材と煮込む料理で、ブレッドフルーツ(パンの木の実)、ココナッツミルク、サフラン(サフランと呼ばれるが実はターメリック)、ダシーン(タロイモ)、ダンプリン(小麦粉を固く練ってゆでたもの)、カラルー(青菜)、肉、魚、玉ねぎ、にんじん、セロリなどなどがどっさり入ったごった煮です。イルダンの綴りは「Oil down」(オイルダウン)ですが、現地の発音はイルダンに近いので、イルダンと呼ぶとよいですね。また、ジャークチキン(ジャマイカ発祥のスパイスマリネチキングリル)のようにカリブ海じゅうに広まっている料理は、もちろんグレナダでも人気のおかずです。

グレナダでは、近隣のカリブ海諸国と同様に、イモ類がよく消費されています。主食の代表はダシーン(タロイモ)です。準イモ的存在(イモではないけれどもの食感と炭水化物源であることからイモ的扱いである)のブレッドフルーツ(パンの木の実)やプランテン(食用バナナ)などが、重要な炭水化物源です。そして、プロビション(又はグランドプロビション)は、それら炭水化物源をミックスしたという盛り合わせです。また、タニアポリッジ(シナモンの香りをつけたイモ類のおかゆ)もあります。米類は炊き込みが多く、お隣トリニダードトバゴでも名物のペラウ(焦がし砂糖と肉の炊き込みごはん)は、グレナダでも国民食です。

隣国トリニダードトバゴはインド系住民の多く、グレナダにも、彼らが得意とするインド系の軽食がもたらされました。ダボー(ふわふわ揚げバンズに豆カレーを挟む)、ダルプリ(豆マッシュを挟みこんで焼く薄パン)、そしてロティ(薄パンに、カレー風味のおかずを乗せて包む)などが代表的な軽食です。ロティの具は様々で、チキンやフィッシュのみならず、ランビー(コンク貝)やシュリンプ(エビ)などの豪華版もあります。

ホテルでは、グレナダ独特のアフタヌーンティーが楽しめます。アフタヌーンティーとは、昼下がりに時間をかけて紅茶と軽食を楽しむ習慣で、かつての英国支配の影響でホテル経営も英国嗜好で設けられたのだと思います。そこのパンケーキがまた、グレナダの特産のナツメグを入れたシロップを使うなど、観光客を喜ばすグレナダらしさを含める趣向が凝らされています。

お酒を飲む人におすすめは、ラム(サトウキビの蒸留酒)です。グレナダの歴史を語るにはかつて存在したサトウキビプランテーションを欠かすことができず、その名残であるサトウキビから昔ながらの製法で作られるラム酒は、この国で一度は飲んでみたいものです。伝統的なラムの他、レモン入りラム、ソレル(エジプトでカルカデと呼ばれるハイビスカスの一種)入りラムなどのバリエーションもあって、空港のお土産物屋にはいろいろと試飲用ラムが並んでいて搭乗待ち時間にとても楽しめます。また、ビールが好きならば、カリブ海南部に広まる「カリブ」が一押しです。

以上、グレナダ料理についていろいろと書いてきました。
日本語ではグレナダでも、あちらに行けば「グリニーダ」。ソカやカリプソやレゲエの音と共に、黒い人々が白い歯と目をニカっとさせて陽気に踊ってる感じ。ああこれがカリブ海だ~。

沖を見れば、キングフィッシュ(ブリのような魚)、イエローフィントゥナ(キハダマグロ)、スナッパー(フエダイ)、グルーパー(ハタ)などを捕獲する船がいっぱい。島を見れば、パパイヤ、マンゴー、パンの木、バナナ、ココナッツ、アボカド。道端にはカラルー(タロイモの葉)。

首都セントジョージのサタデーモーニングマーケットに行けば色とりどりのスパイスが買えます。疲れたら路上でナツメグパンケーキ(ナツメグ風味パンケーキ)やナツメグアイスクリーム(ナツメグ風味アイスクリーム)のテイクアウェイをどうぞ。ココアのプランテーションはグレナダの歴史上も重要ですよね。よって良質のチョコレートもお土産品に人気です。

あ!最後に言い忘れてはいけないことを書いておきます。グレナダや周辺国で「サフラン」と呼ばれる香辛料はターメリック(ウコン)です。「日本では超高価なサフランがこんなに安い!」と思って買ったら単にウコンだったってこともあるんです。それはそれでグレナディアン(グレナダ人)の文化なのですね。それでは是非グレナダの旅を楽しんできてください。

◆グレナダに行ったら、これ食べよ♪

【魚料理】
・カリードランビー(Curried Lambie)・・・コンク貝のカレー。
・グリルドフィッシュ(Grilled fish)・・・魚の切り身のグリル。
・グリルドランビー(Grilled Lambie)・・・コンク貝のグリル。
・シーフードラップ(Seafood Wrap)・・・魚介類のラップ。
・ソルトフィッシュ(Salt fish)・・・戻した塩漬けタラと野菜の炒め物。
┗ソルトフィッシュアンドベイクス(Salt fish and bakes)
・ツナステイク(Tuna steak)・・・マグロ肉のステーキ。
・フィッシュサンドイッチ(Fish Sandwich)・・・魚介類のサンドイッチ。
・フィッシュナゲット(Fish nugget)・・・すりみ揚げ。
・ランビーサラダ(Lambie Salad)・・・コンク貝のサラダ。
・ロブスタークレープ(Lobster Crepe)・・・大型エビのクレープ。

【イモ類に似た炭水化物源】
・グランドプロビション(Ground provision)・・・イモや食用バナナなどの盛り合わせ。
・ダシーン・・・タロイモ。
・タニアポリッジ(Tannia porridge)シナモンの香りをつけたイモ類のおかゆ。
・ダンプリン(Dumplings)・・・小麦粉を固く練ってゆでたもの。
・プランテン(Plantain)・・・食用バナナ。
・ブレッドフルーツ(Breadfruit)・・・パンの木の実。
・プロビション(Provision)・・・グランドプロビションと同じ。

【米料理】
・ペラウ(Pelau)・・・焦がし砂糖と肉の炊き込みごはん。

【肉料理】
・イルダン(Oil Down)・・・豚のしっぽ、肉、パンの木の実、タロイモ、魚、玉ねぎなどなどのココナッツミルクごった煮。
・オイルダウン(Oil Down)・・・イルダンと同じ。
・ジャークチキン(Jerk chicken)・・・スパイスマリネチキングリル。

【軽食】
・ダブルズ(Doubles)・・・ふわふわ揚げバンズに豆カレーを挟む。
・ダボー(Doubles)・・・ダブルズと同じ。
・ダルプリ(Dal puri)・・・豆マッシュを挟みこんで焼く薄パン。
・ロティ(Roti)・・・薄パンに、カレー風味のおかずを乗せて包む。

【スウィーツ】
・ナツメグパンケーキ(Nutmeg pancake)・・・ナツメグ風味パンケーキ。
・ナツメグアイスクリーム(Nutmeg ice cream)・・・ナツメグ風味アイスクリーム。

【お酒】
・カリブ(Carib)・・・カリブ海の有名なビール。
・ラム(Rum)・・・サトウキビの蒸留酒。


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