フィジー料理

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  • 宗教に関連して」の項にクリスマスデーとボクシングデーを記載しました。

【基礎情報】

国名:フィジー共和国Republic of Fiji、首都:スバ、ISO3166-1国コード:FJ/FJI、独立国(1970年英国より)、公用語:英語、フィジー語、ヒンズー語、通貨:フィジードル

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【地図】

フィジーは南の島の中でもバヌアツやウォーリス&フトゥナに近い、メラネシア圏の国です。

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◆南の島の典型料理と、インド&中国の強烈なフュージョン

ブラ!(フィジーの挨拶) フィジーはメラネシア人とインド人が主要民族という、他に類を見ない民族構成の国です。「何故人口の半数がインド人なのか?」、その答えは主要産業のサトウキビにあります。欧州では甘いものがほとんど摂れませんでしたから、嗜好品としての砂糖を得るために、フィジーを支配していた英国はフィジーにサトウキビ農園を開き、労働力として多数のインド人を移住させました。「メラネシア人(狭義のフィジー人)とインド人」、これがフィジーを語る大事なキーワードです。

フィジー
停車中のバスの外からイヴィ(チェスナッツ)を売るメラネシア人女性。(撮影地ナウソリ北部)

「ポリネシア人とメラネシア人はどう違うの?」と聞かれたら、まず、「見た目が違う」というのが1つの回答になるでしょう。例えば、肌の色、髪の毛の質などが、ぱっと見ても違うとすぐに分かります。

フィジーの住民は、先住民であるメラネシア人が半数、イギリスが植民地時代に強制入植させたインド系住民が半数弱、残りは中国人やその他の国の人々です。フィジー人は「南の島の人」の典型基質で勤労意欲が概して低い傾向にあります。よく働くのはインド人や中国人で、フィジーを訪れても、目立つのはインド人や中国人経営のお店がずらり。食堂に入ったはいいがインド料理や中国料理の遭遇確率が高い、ということになり兼ねません。

ですから、南の島に来たならば、市場観光が絶対におすすめです。市場に行けば、豊かな南の島の食材を多数目にすることができます。そういった食材を使って、どんな日常フィジー料理があるのか、それでは見ていきましょう。
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主食 Staple

フィジーの主食はイモ類です。市場に行けば、ダロ(タロイモ)、タビオカ(木芋、キャッサバ)、クマラ(甘藷、さつまいも)、ヤムまたはウビ(ヤム芋、なお野生のヤムはtikau、rauva、tivoliなどの名称がある)などのイモ類のほか、ウト(パンの木の実)、ブンディ(イモ感覚で食べる調理用バナナ)など、トロピカルな主食がずらり並びます。

メラネシア人は、ポリネシア人と人種は違っても、イモやココナッツなどの常食や、カバ(後述)などの飲料の存在から、食文化はポリネシア人と共通するものがたくさんあるのだということが分かります。

ちなみに、フィジーではカレーを食べても中華を食べても、主食はタビオカ(キャッサバ、木芋)やダロ(タロイモ)などのイモ類を選びます。お米は主食としての頻度は高くありません。
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魚のおかずとココナッツ Fish & Coconuts

本来、ポリネシア人やミクロネシア人は太平洋を席巻した海洋移動民族で、イカ(魚)とロロ(ココナッツミルクまたはココナッツクリーム)は彼らのソウルフードにあたります。なお、ココナッツから「1番絞り」として水を入れずに圧搾したものがココナッツクリームで、水を足して再度圧搾する「2番絞り」がココナッツミルクです。

バカロロ(バカ=with、ロロ=ココナッツミルク)は、大きく2つのタイプの料理があり、1つはココナッツクリーム煮込み、もう1つはココナッツミルク入りの甘いプディング(団子)です。クイタ(タコ)をココナッツクリームで煮たものは、クイタバカロロイカ(魚)ならイカバカロロ、カイ(貝)ならカイバカロロと呼びます。

ミティは、ココナッツクリームにレモン果汁、玉ねぎ、チリ(唐辛子)をミックスした美味しいもので、ゆでたイモや調理した具材にふんだんにかけて食べられます。イカ(魚)をミティで食べる料理はイカバカミティというように、素材名とミティをセットで呼びます。ミティをゆでたイモ類にかけるだけでもめちゃくちゃ美味しい。フィジー料理はミティ様様なのです。

バカソソは、“something added”(何かを詰めたもの)という意味をもつ料理です。単にバカソソと呼ぶ場合、ブンディ(調理用バナナ)に切れ目を入れてココナッツファイン(ココナッツの白い固形分を削ったもの)を詰めてロロ(ココナッツクリーム)で煮るような料理を指します(これをブンディバカソソとも呼ぶこともあります)。カイバカソソは、カイ(貝)に同様に詰め物をして調理したもの、ライロバカソソは、パラオのウカイブと同じ料理で、ライロ(カニ)の身や玉ねぎをココナッツクリームで和えてカニの殻に再び詰めたものです。

ココンド又はココンダは、お刺身のミティマリネで、マヒマヒ(シーラ)などのフレッシュな身が使われます。この南国風のお刺身マリネは、仏領ポリネシアのポワソンクリュ、トンガのオタイカなどと同じもので、太平洋各国でポピュラーな料理です。魚を生で食べる文化は、日本人には嬉しいものがあります。

ここまで書いてきて、フィジー料理は魚介類とココナッツを組み合わせたものが多いことがよく分かります。
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肉のおかず Meat

島国フィジーでは魚料理は歴史的に重要ですが、肉類もよく食べられています。狭義のフィジー人(メラネシア人)はほとんどがキリスト教徒で、中国系の住民同様、食べ物に禁忌はなく、豚肉、鶏肉、牛肉などを食べます。インド系住民にも、インド南部方面に由来する人はキリスト教徒もヒンズー教徒もいます。後者のヒンズー教徒は豚肉や牛肉を避け、鶏肉をよく消費します。

近年目立つのはティニブルマカウ(コンビーフ缶)です。様々な肉料理に手軽に使われ、コンビーフのパルサミはもはや国民食です。
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野菜や豆のおかず Vegetables & Beans

野菜類には、ロウロウ(タロイモの葉)、バセイセイ(タロイモの茎)、カベティ(チンゲンサイのような青菜)、にんじん、なす、インゲン、オクラ、生姜、唐辛子。珍しいところだとジャックフルーツ(甘くなく、ほぐしてカレーの具に使う)があります。ドゥルカは4~5月に採れるフィジーのアスパラガスをココナッツクリーム煮にしたものです。ゆでるとふにゃふにゃになる食感がホワイトアスパラガスに似ています。

野菜を使ったおかずは、基本的には、野菜の名前がそのまま料理名になります。
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果物 Fruits

それから豊かなフルーツも必見です。モリ(柑橘の総称。レモンやライム)、マンゴー、グアバ、バナナ、パイナップル、ポポ(パパイヤ)、ニウ(ココナッツ)。そして伝統的なデザートの定番である、イビ(チェスナッツ、栗の味に似ている)など。
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インドフィジアン料理 Indo-Fijian cuisine

さて、住民の半数弱を占めるインド系住民の影響は、「インドフィジアン料理」(Indo-Fijian cuisine)という言葉の定着にも表れています。フィジーで採れる食材にインドの香辛料を使い、カレー味のおかずを作ります。首都スバには本格的なインド料理店が多数ありますし、家庭料理でもカレー粉が多用される点で、インドの影響が少ない他の南の島国とは異なる食文化を形成しています。ホームステイしていた家では、インスタントラーメンにカレー粉を入れたり、鶏肉をカレー粉で煮たり、カレー粉率が高いと思いました。なお、フィジー語で、カレーはカリと言います。
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中国料理 Chinese cuisine

街の外食の定番は中国料理で、庶民的なお店では、チャウミン又はチョウミン(焼きそば)、チョプシー(肉野菜炒め)、チリーチキン(鶏肉と野菜のチリパウダーたっぷり炒め)などが定番です。もちろん本格的な中国料理店もあります。フィジーは小さな島なのに、フィジーで食べることができる中国料理は多数にのぼり、フィジー人の食事に浸透しています。
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地中蒸し焼き Underground oven “Lobo”

ロボとは、大地と石の灼熱の温度を利用して調理する技法、あるいはその技法によって調理された料理を指します。地面を掘って石を敷いて焚き火をし、バナナの葉やタロの葉で包んだ肉やイモを熱い焼石に乗せ、覆って待つこと数時間。出てきたおかずは、ココナッツミルクや塩で味付けされた、ふっくらふかふかに調理された絶品です。ニュージーランドのハンギ、パプアニューギニアのムームー、トンガのウム、バヌアツのラップラップなどと同じ、どれも自然の力を利用したオーブンです。冠婚葬祭に欠かせないものですが、結構な労力が要るので、一般家庭で普段食べるものではありませんが、高級リゾートホテルでは観光客向けにロボを披露してくれるところもたくさんあります。

パルサミは、ロボで作られる代表的な料理で、ロウロウ(タロイモの葉)を受け皿にしてロロ(ココナッツクリームやココナッツミルク)やコンビーフなどの具を乗せてから、包んで蒸し焼きにして作られます。サモアや米領サモアにも同名の料理があります。
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お茶と砂糖 Tea & Sugar

飲み物は、ドラウニモリ(レモンリーフティー)がおすすめです。柑橘の若い葉をカップに入れてお湯を注ぐもので、フィジーでは伝統的に「心臓の薬」としても飲まれてきましたが、今はハーブティーのように楽しまれています。スカという少し茶色味がかった砂糖をたっぷり入れていただきます。砂糖の製造はフィジーの主要産業で、フィジーの農地の半分はサトウキビ畑。スカ(砂糖)抜きにはフィジーを語ることはできません。
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カバ Kava

カバ又はヤンゴンナは、コショウ科植物(Piper methysticum)の乾燥した根を粉砕し(昔は処女の女子が咀嚼して吐き出したものを使った)、水で抽出したもので、嗜好品として、主に男性にたしなまれています。メラネシア、ミクロネシア、ポリネシアと、太平洋諸国で広く飲まれている、向精神薬的作用を持つ伝統飲料で、文字でその効果を伝えるのなら、「思考が穏やかになる」、「気持ちいい」みたいな感じでしょうか。味はやや苦く、舌が少々しびれ、泥の風味がするのですが、口の中がしびれる感覚も心地よく、飲むほどに美味しいと思ってしまいます。3人以上で飲むときは「ブラ」と言ってお椀を受け取り、手と手または手と足を3回鳴らしてから一気飲みします。旅行者でも、市場に行けば広いカババー(カバを飲ませる場所)があり、昼間からカバを体験できます。鎮静作用により飲めば飲むほど気分が落着き、同時に多幸感も得られます。焼酎やワインは飲みすぎると暴れたり泣き出したりするでしょうけれど、カバは飲むほどに気持ちが落ち着き幸せになりますから、大人同士があつまって会話を楽しむ場で飲まれます。カバを1人で飲むことはその目的からしてもありません。会議でも、喧々諤々せず、言い争いをせず、落ち着いて幸せに物事を決めていくために、みんなでカバを飲んで会議に臨んだりもします。
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食習慣 Habits & Customs

もしフィジーの家庭に招いてもらうことができたら、料理は必ず家人より先に食べ始めて下さい。ゲストの食べ始めを待つのがフィジーの慣習です。

そして、たとえローカル料理を求めているとしても、決して勝手に村に入ってはいけません。土着的体質が強く残るフィジーでは、外から来る人も「村の決まり」に強く従わなければなりません。村の酋長が良しと言わない限り、勝手なことはできない、フィジーはそんなところです。
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宗教に関連して Food & Religion

多くのフィジー人はキリスト教徒です。どの村にも教会があり、日曜日は教会に参列します。日曜日は労働が禁止され、炊事や洗濯も労働にみなされるため、炊事も、自分の着た服を洗うことすらも、しません。だから、フィジーの日曜日は、食事は早朝にまとめて作り、朝も昼も夜も同じものを食べます。昼は教会には参列し、参列が終わった午後は昼寝をする。とにかく動かないのが習わしです。

<クリスマス>12月25日はChristmas day(クリスマスデー)で祝日です。お肉や魚、チキン、イモ類などで豪華な料理を作り、踊り、食べ、イエスキリストの生誕をお祝いします。

<ボクシングデー>12月26日はBoxing day(ボクシングデー)で祝日です。クリスマスの二次会のように盛り上がったり、休息したりします。名前の由来は一説では教会がクリスマスに集まった施しが入った箱(これが名前の由来のボックス)を開けて貧しい人に施したから。
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最後に Acknowledgments

以上、フィジー料理について、概観いたしました。

フィジーといえば離島のリゾートホテルが人気で、昔から新婚旅行の定番のイメージがありましたが、それも今は昔。エアパシフィック航空のフィジー直行便が2009年に撤退し、行きにくい国になってしまいました。2018年に再度フィジー直行便が就航したものの、その間日本から旅行で訪れる人が激減してしまいました(なおかつ2020年からの世界的なCOVID-19感染)。でもだからこそフィジーは観光客相手の嫌な商売っ気が少なくて、しかも今も強烈な土着文化を残しており、旅人にとって大変に魅力的な国だと言えるのではないでしょうか。フィジー人は友好的でフレンドリーなので、ブラ!って言えばきっと喜んで友達になってくれますよ。世界に無二のインド-メラネシアンフュージョンも魅力です。是非是非訪れてみてください。

なお、南の島の国々はスーパーの買い物レベルでさえ物価が高いのが泣き所ですが、フィジーは違います。フィジーは人口規模も商業規模も大きく、産業があるがゆえに、現地に行ってしまえば物価が安いという嬉しい要素も、最後に付け加えておきます。

フィジー料理に出会えたことと学べたことに感謝すると共に、本稿が、フィジーを旅して、フィジーの料理を知りたい人の一助になれれば、嬉しく思います。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食】
  • ウト(Uto):パンの木の実
  • ウビ(Uvi):ヤム芋
  • クマラ(Kumala):スウィートポテト
  • タビオカ(Tavioka):木芋、キャッサバ
  • ダロ(Dalo):タロイモ
  • ブンディ(Vudi):調理用バナナ
  • ヤム(Yam):ヤム芋
【肉類】
  • ティニブルマカウ(Tini bulumakau):コンビーフ缶
【野菜類】
  • カベティ(kaveti):チンゲンサイのような青菜
  • ドゥルカ(Duruka):フィジーアスパラガスまたはそのココナッツクリーム煮
  • バセイセイ(Baseisei):タロイモの茎
  • ロウロウ(RouRou):タロイモの葉
【ココナッツミルク系と主に魚介類のおかず】
  • ココンド又はココンダ(Kokodo、Kokoda):お刺身のミティマリネ
  • バカソソ(Vakasoso):何かを詰めたものの総称またはブンディバカソソを指すことも
    • ブンディバカソソ(Vakasoso):調理用バナナにココナッツファインを詰めて調理したもの
    • カイバカソソ(Kai vakasoso):貝にココナッツファインなどを詰めて調理したもの
    • ライロバカソソ(Lairo vakasoso):カニの身をココナッツクリームで和えてカニの殻に詰めたもの
  • バカロロ(Vakalolo):ココナッツクリーム煮込みまたはココナッツミルク入りの甘いプディング
    • クイタバカロロ(Kuita vakalolo):タコのココナッツクリーム煮込み
    • イカバカロロ(Ika vakalolo):魚のココナッツクリーム煮込み
    • カイバカロロ(Kai vakalolo):貝のココナッツクリーム煮込み
  • ミティ(Miti):ココナッツクリームにレモン果汁、玉ねぎ、チリ(唐辛子)をミックスしたもの
  • ロロ(lolo):ココナッツミルクまたはココナッツクリーム
【インドの影響】
  • カリ(Kari):カレー
【中国の影響】
  • チャウミンまたはチョウミン(Chow mein):焼きそば
  • チョプシー(Chop suey):肉野菜炒め
  • チリーチキン(Chilly Chicken):鶏肉と野菜の炒め物
【飲み物】
  • カバ(Kava):コショウ科の木の根のパウダーを水に溶いて作る飲料
  • ドラウニモリ(Draunimoli):レモンの葉のお茶
  • ヤンゴンナ(Yaqona):コショウ科の木の根のパウダーを水に溶いて作る飲料
【果物類】
  • イビ(Ivi):チェスナッツ
  • チャイナ(Jaina):バナナ
  • ニウ(Niu):ココナッツ
  • バラワ(Balawa):パイナップル
  • ポポ:パパイヤ
  • マンゴー(Mago):マンゴー
  • モリ(Moli):柑橘の総称
【その他】
  • スカ(Suka):サトウキビから作る砂糖
  • ロボ(Lovo):大地と焼石を利用して調理すること、あるいは調理されたもの
  • パルサミ(Palusami):タロイモの葉でココナッツミルクやコンビーフを包んで蒸し焼き

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