【基礎情報】
国名:ジャージー代官管轄区、Bailiwick of Jersey、首都:セントヘリア、ISO3166-1国コード:JE/JEY、非独立国(英王室属領)、公用語:英語、フランス語、通貨:ジャージーポンド、UKポンド。
【地図】
ジャージーは、フランス北西部海岸からわずか20km沖合いに浮かぶ島嶼群(チャネル諸島)の1つです。北には英国があります。
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◆乳製品とじゃがいもが特産の西欧の島国
チャネル諸島を構成する1つの島であるジャージーは、英領ではなく英王室属領の、独自の政府や高度な自治権をもつ非独立国家です。ここは小国によくある、俗にいうタックスヘイブン、オフショア、日本語では租税回避地(企業や個人への課税を極端に低くすることで誘致を図るもの)。こういった政策により、ジャージーでは特に金融業が盛んで、島の経済が潤っています。また旅行者にとってもVAT(付加価値税)がかからない免税天国でもあり、首都セントへリアのショッピング天国の様相はとてもきらびやかです。でも、もしそういう経済発展がなければ、ジャージーは、今もとてものどかな島だったに違いありません。
*ジャージーはイギリス王室領ですが、連合王国(UK)には加盟せず、独自の政府と自治権をもって「国」として機能しています。従来はチャネル諸島としてガンジーと同区分でしたが、2006年にそれぞれが分離した形で英王室領の非独立国となりISO3166でジャージーとガンジーと別々にコードが指定されました。よってこのサイトでは、連合王国、ジャージー、ガンジーをそれぞれ1か国とし、それぞれの食文化を記載していきます。
ジャージーロイヤルポテトサラダ。レモン風味ヨーグルトクリーム仕立て。(撮影地セントブレラード)
ジャージーは島の6割が農業用地です。農業・酪農は、乳牛のジャージー種と、じゃがいものジャージーロイヤル種の2つの育成によって支えられています。英国とのつながりから、ジャージーの農産物や乳製品は英国へも多く輸出されています。英国よりも南にある温暖な立地から、野菜や牧草が育ちやすいのです。
国民の多くは、ジャージーの立地からも分かるように、イギリス系統の人と、フランス北部の系統の人が多数を占めます。ただ公用語が英語なので、フランス系の住民も英語を話しています。また、ジャージー島で生まれ育った生粋のジャージー人は国民の半数とのことで、残り半分は他のヨーロッパ諸国で生まれた人が移住・駐在・出稼ぎで居住しています。
料理名にもフランス語が混ざり、フランス風の古城があり、海を見ればすぐむこうにフランスが見える。なのにパブがある、アフタヌーンティーもある。でも島のいたるところでのんびりと牛が草を食べている。ジャージーの食文化を見てゆくと、興味深いものが次々と登場しそうな予感すらするのです。
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魚介のおかず Seafood
魚介類は伝統的にジャージー料理にとって重要な位置を占めるものです。ムール(ムール貝、英語のマッセルではなく、フランス語と同様にムールと呼ぶ)、オイスター(牡蠣)、ロブスター(大きなエビ)、プラウンやスカンピ(小~中サイズのエビ)、クラブ(カニ)、ハドック(コダラ)、コッド(タラ)、プレイス(カレイ)、ヘイク(メルルーサ)など。特にスパイダークラブ(クモガニ)、オーマー(アワビ)、コンガー(あなご)は特産品です。コンガースープ(あなごスープ)というジャージー特有の料理もあります。
魚の料理には、グリルドフィッシュ(焼き魚)、クラムドフィッシュ(魚のカツ)、バタードフィッシュ(衣をつけて揚げる魚)があります。例えば「クラムドヘイク」のように調理法と魚の名前をセットにして呼ぶことも一般的です。
そのほか、フィッシュケイク(魚肉入りの団子状揚げ物)、クラブケイク(カニ肉入りの団子状揚げ物)、フィッシュバーガー、フィッシュサンドイッチなどの魚料理もあります。
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ロイヤルポテト Jersey Royal potatoes
ジャージーロイヤルポテト(ジャージー特産、王室のじゃがいも)はジャージーの特産品で、英国王室に献上されたことからロイヤルの名を冠しています。密に中が詰まった食感は、メークイン種に似ています。ジャージーの主たる輸出作物でもあります。12月から2月までが植え付け期で、4月から6月が収穫期です。海藻を漉き込んで土壌改良することにより上質のじゃがいもが出来るのだそうです。
ジャージーではまずは新じゃがを楽しみます。ジャージーロイヤルポテトは、皮ごとゆで、バターをつけて皮ごと食べるのが身上です。ゆでるときにローズマリーやミントを一緒にゆでるので、香りがとても良いのです。
このロイヤルポテトを使ったジャージーロイヤルポテトサラダは実に絶品です。レモン、ヨーグルト、マヨネーズ、小ねぎで和えたゆでじゃがです(他の味付けもあります)。英国だと、他の新じゃがの数倍の値段で売られるというのも納得の味でした。またチップス(フライドポテト)も極めてポピュラーなじゃがいも料理です。
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リンゴ Apples
アップルApple(リンゴ)は歴史的に重要な作物です。20世紀後半にはリンゴ栽培が減衰したものの、現在は生産が増加し、推進されています。伝統的なリンゴ料理はニエルブール(直訳:黒バター)というリンゴを大鍋に入れて丸一日昼夜絶えずかき混ぜて作る真っ黒のペーストです。
ジャージーのブラックバター「Nièr beurre」の発音が分かりました
ブルデローBourdélotsは丸ごとリンゴをパン生地に包んで焼いたものです。リンゴはまた、サイダー(※英国周辺国でサイダーと言えばお酒です)やアップルブランディ(ブランデー)にも加工されます。
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乳製品 Dairy Products
ジャージーは牛のジャージー種の原産地で、今も5000頭の牛が飼育されています。ジャージーでは種の保存のためジャージー牛しか飼育できないため、ホルスタインなどの他の種は見かけません。よって、もしジャージー郊外をお出かけする機会があれば、ジャージー牛にもれなくお目にかかれます。ちなみに日本の酪農ではホルスタイン種が最も多いのですが、そのホルスタイン種よりジャージー種のほうが濃厚な生乳を生み出します。一年中分娩が行われるように飼育管理され、生乳供給量は一年を通して安定しています。
ミルクはとにかくリッチでクリーミーな牛乳。スーパーでパックの牛乳を買って飲むと、これでシチューを作ったらどれだけ美味しいだろうかと、リッチな味わいに感動します。生乳はまた、バター(脂肪分80%以上の分画)、クリーム(脂肪分40%ほどの分画)、ヨーグルト(発酵乳)、チーズ(水分の少ない発酵乳)、アイスクリーム(ミルクから作る氷菓)などにも加工され、そのどれもが絶品の美味しさです。ジャージー料理はそれら乳製品を調理に使うことが多く、食文化の形成にも大きな役割を果たしています。
ジャージー人の由来は、フランス北西部ノルマンディー地方から移ってきた人が多いのですが、ジャージー人はチーズよりバターを好んだため、フランスの伝統的なチーズの製法はジャージーでは定着しなかったそうです(現在では、ジャージーのチーズは工業的に生産されています)。
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軽食 Quick Eats
魚の揚げ物とチップス(フライドポテト)を盛り合わせたフィッシュアンドチップス、エビフライとチップスを盛り合わせたスカンピアンドチップスはテイクアウェイ(日本語:テイクアウト)の定番です。
甘いものでは、美味しいジャージー牛のミルクを使って作られるものはどれも美味しく、アイスクリームのほか、ファッジ(またはジャージーファッジ)というミルクを煮詰めて作るキャラメルのようなお菓子が知られています。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
【じゃがいも】
- ジャージーロイヤルポテト(Jersey Royal Potato)・・・じゃがいも。あるいはゆでじゃが。
- ジャージーロイヤルポテトサラダ(Jersey Royal Potato Salad)・・・ゆでじゃがサラダ
- チップス(Chips)・・・フライドポテト
【魚介類】
- オーマー(Ormer)・・・アワビ
- オイスター(Oyster)・・・牡蠣
- クラブ(Crab)・・・カニ
- クラムドフィッシュ(Crumbed fish)・・・魚のカツ
- グリルドフィッシュ(Grilled fish)・・・焼き魚
- コッド(Cod)・・・タラ
- コンガー(Conger)・・・あなご
- コンガースープ(Conger soup)・・・あなごスープ
- スカンピ(Scampi)・・・小~中サイズのエビ
- スカンピアンドチップス(Scampi and chips)・・・エビフライとフライドポテトの盛り合わせ
- スパイダークラブ(Spider crab)・・・クモガニ
- バタードフィッシュ(Battered Fish)・・・衣をつけて揚げる魚
- ハドック(Haddoc)・・・コダラ
- フィッシュアンドチップス(Fish and chips)・・・衣をつけて揚げた魚とフライドポテトの盛り合わせ
- フィッシュケイク(Fish cake)・・・魚肉入りの団子状揚げ物
- フィッシュサンドイッチ(Fish sandwich)・・・魚肉の具を挟んだサンドイッチ
- フィッシュバーガー(Fish burger)・・・魚カツ入りハンバーガー
- プラウン(Prawn)・・・小~中サイズのエビ
- プレイス(Plaice)・・・カレイ
- ヘイク(Hake)・・・メルルーサ
- ムール(Moules)・・・ムール貝
- ロブスター(Lobster)・・・大きなエビ
【乳製品】
- アイスクリーム(Ice cream)・・・生乳から作る氷菓
- クリーム(Cream)・・・生乳の脂肪分40%ほどの分画
- ジャージーファッジ(Jersey fudge)・・・ミルクを煮詰めたキャラメルのようなお菓子
- チーズ(Cheese)・・・水分の少ない発酵乳
- バター(Butter)・・・生乳の脂肪分80%以上の分画
- ファッジ(Fudge)・・・ミルクを煮詰めたキャラメルのようなお菓子
- ミルク(Milk)・・・牛乳
- ヨーグルト(Yogurt)・・・発酵乳
【リンゴ】
- アップル(Apple)・・・リンゴ
- ニエルブール(Nièr beurre)・・・リンゴの黒いペースト
- ブルデロー(Bourdélots)・・・丸ごとリンゴをパン生地に包んで焼くもの
【お酒】
- アップルブランディ(Apple brandy)・・・リンゴの蒸留酒
- サイダー(Cider)・・・リンゴ果汁の発酵酒