エルサルバドル料理

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【基礎情報】

国名:エルサルバドル共和国Republic of El Salvador、首都:サンサルバドル、ISO3166-1国コード:SV/SLV、独立国(1821年スペインより)、公用語:スペイン語、通貨:USドル

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【地図】

エルサルバドルは中米の大陸のくびれに位置する国です。南が太平洋に面し、西にグアテマラ、北にホンジュラスと接し、東にはニカラグアがあります。

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◆中米で唯一カリブ海をもたない国、という食文化。

中米とは南北アメリカ大陸を結ぶくびれの地。この中米地峡のグアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの7か国の面積を合わせても42万km2(日本は37万)しかなく、小さな国どうし地理的にも歴史的経緯にも類似点が多くあります。しかしエルサルバドルは「中米で唯一カリブ海に面しない国」。中米各国のカリブ海側沿岸地帯にはジャングルが多くアフリカ黒人に由来するガリフナ族の文化があるのですが、その要素を抜きにして語れるエルサルバドルは、「中米で最も食文化がシンプルな国」と言えます。

路上コメドール
路上コメドール。右に無料取り放題のクルティド、少女の手にトルティージャ(撮影地サンミゲル)

内戦、独裁、クーデター・・・・エルサルバドルと聞くとそういうイメージを思い出しますか? エルサルバドルという国名は「ザ・救世主」であるというのに・・・。エルサルバドルは有史以来、スペインによる植民地支配、独立後の内戦や虐殺により、伝統的な食文化が随分と失われました。中世にスペインが来て、先住民の文化が壊された上にスペイン人が入植した(なおかつスペインから独立した後も先住民の虐殺があった)という歴史から、エルサルバドルの食文化はスペインの影響が強く表れる、比較的歴史の浅いものです。

私が中米諸国を旅したとき、エルサルバドルへはグアテマラから入国しました。当時の旅メモには「エルサルバドルに入ってぐっとおかずの味が贅沢になった。」と書いてあります。グアテマラでは民族の多様性を見ようと山岳地域を旅した後だから(ついでに言うとグアテマラの首都は治安が強烈に悪いので滞在しなかったため)、余計にエルサルバドル料理が都会的な味に感じられました。

上述のように、中米で唯一カリブ海側の沿岸地域を持たない国なので、エルサルバドルには黒人文化がほぼ皆無です。先住民の人口比率も今やわずか0.2%です(2007年)(参考:隣国のグアテマラは41%、2010年)。エルサルバドル料理を味わうということは、伝統文化を感じるということよりも、近世の支配者層のもとで作られた現在の典型的な中米料理の数々を味わうことになります。
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主食 Staple

中米諸国はそもそも狭い地域であり、似たような料理が多い。それでも差異はあり、中米北部すなわちメキシコ、グアテマラ、エルサルバドルあたりはとうもろこしの粉が主役で、トルティージャがよく食べられています。そして中米南部すなわちコスタリカやパナマ方面にいくと、米食が多くなります。今回ここで語るのは、とうもろこし圏としてのエルサルバドル、ということになります。

エルサルバドルの主食はトルティージャです。とうもろこしを粉にして(これをマイスと呼ぶ)、湿った生地をパンパンと両手でたたいて平らにして、鉄板で焼きます。これが他のおかずと一緒に皿に乗せられ、1人何枚も食べるのです。また、トルティージャを焼くときに中にチーズなどを入れたものはププサと呼ばれます。グアテマラでもププサを見かけますがオリジンはエルサルバドル。アツアツのトルティージャの中からとろーんとチーズが出てくるこの美味しさはたまりません。エルサルバドル筆頭の国民食と言えます。

その他の炭水化物源には、アロース(米、ごはん)やプラタノ(甘くない調理用バナナ)もあります。バナナは素揚げにして、米は湯で炊いて、主食というよりも料理の付け合わせないしおかずの一種という感覚で皿に乗ります。
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肉のおかず Meat

ブロイラーの発展した近年の傾向だと思うのですが、中米の人々はことに鶏肉が好きですね。ポジョと言います(スペイン語)。焼いたらポジョアサード、フライドチキンならポジョフリット又はポジョドラードです(フリットは揚げる、ドラードは黄金色の意味)。都市部ではチキンを売りとするファストフード店(ポジョカンペーロなど)もあって、とにかくチキンは大人気です。

その他の肉類のおかずには、中米あちこちで見かけるチチャロン(豚の皮をカリカリに素揚げにしたもの)やアルボンディガス(肉団子の煮込み)があります。
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野菜や豆のおかず Vegetables & Beans

ププセリア(ププサ屋)やコメドール(食堂)でよく見かけるものに、クルティドがあります。発酵キャベツまたはキャベツ千切りの酢漬けで、付け合せとして無料でついてくることが多いです。真っ赤に染まっていたり、チレ(唐辛子)が入っていたりして、これがとても美味しいのです。様々なエルサルバドル料理にはクルティドが実によく合います。

そして豆もよく食べます。フリホーレスと言います。色が黒くて・・・そうだ、油と塩、にんにくやスパイスで作った「旨いあんこ」と表現しましょう。豆を甘く煮つける日本と違って中米やキューバなどのフリホーレスは本当に美味しいんです。また、粒あんとこしあんの如く、粒が残ったフリホーレスと粒の見えないフリホーレスがあって、まるで豆が主食かと思ってしまうくらい皆さん他のおかずやトルティージャと合わせてこの「旨い煮豆」をよく食べています。

炭酸飲料が好きで、油の多い食事が好きで、野菜をあまり食べなくて。エルサルバドルだけでなく、中米で、典型料理を求め続けると、日本人としてはどうも野菜不足から体調が優れなくなったりします。そんなときはエンサラダをどうぞ。エンサラダはいわゆる「サラダ」という意味なのですが、エルサルバドルでエンサラダというと、野菜のサラダのほか、時にフルーツの角切りがたっぷり入ったジュースを指したりもします(後者を限定するときはレフレスコエンサラダとも呼びます)。ビタミンたっぷりで美味しいです。
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乳製品 Dairy Products

ケソは塩漬け白チーズ。隠れた中米名物料理!
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軽食 Quick Eats

マイス(とうもろこしの粉)を例えば豚肉などの具と共にバナナの葉にくるんで蒸したものは、タマル(タマレス)と呼びます。これも中米から南米まで広く根付いている料理です。豚の皮の油っ気がにじみでるタマルは素晴らしく美味しくて、味わいの共通点が中国の粽(ちまき)に似ているように感じます。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食類】
  • アロース(Arroz)・・・米、ごはん
  • トルティージャ(Tortilla)・・・とうもろこし粉の生地を薄焼きにしたもの
  • ププサ(Pupusa)・・・トルティージャの生地にチーズなどの具を入れたもの
  • プラタノ(Platano)・・・調理用バナナ
  • マイス・・・とうもろこしを粉にしたもの
【肉のおかず】
  • アルボンディガス・・・肉団子の煮込み
  • チチャロン・・・豚皮のカリカリ揚げ
  • ポジョ(Pollo)・・・鶏肉
    • ポジョアサード(Pollo asado)・・・チキングリル
    • ポジョドラード(Pollo dorado)・・・フライドチキン
    • ポジョフリット(Pollo frito)・・・フライドチキン
【野菜や豆】
  • エンサラダ(Ensalada)・・・サラダまたはフルーツカクテル
  • クルティド(Crutido)・・・発酵キャベツまたはキャベツの酢漬け
  • フリホーレス(Frijoles)・・・甘くない煮豆
  • レフレスコエンサラダ(Refresco ensalada)・・・フルーツカクテル
【その他】
  • ケソ(Queso)・・・塩漬け白チーズ
  • タマル・・・とうもろこし粉と具をバナナの葉で巻くちまき風。
  • チレ(Chile)・・・唐辛子

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